エピローグ
慎一とは今でも月に一度は飲んでいた。開催場所は、僕の家。
母親は華さんと一緒に慎一の家で飲んでいるだろう。
「仕事慣れてきた?」
僕がおつまみになる料理を作り、いくつか机に並べてから早速切り出す。
「まあ、なんとか。お、これ美味そう! 夜勤とかあるから生活リズム崩れてるけど頑張らないといけないしな。そっちは? どうなんだよ。念願の先生の担当やっとなれたんだろ?」
慎一は僕が作ったサラダをつついている。
「その話なんですが」
玉ねぎのフライを慎一の前に出し、「どうぞ食べてください」と言うと、訝しげな視線を向けられた。
「今日先生と話してて、次の小説で主人公が新人医師の話を書こうということになりまして。もしよければ慎一先生を取材したいと考えているのですが」
今日、その先生に頼まれていたことだった。
慎一は、「できる担当かよ」と言いながらフライをサクサクと口に放り込んでいく。
僕はあの後すぐにバイトを辞めさせてもらった。編集者になるため、大学進学を決心したからだ。葵さんにはわけを話していたから「受かったら顔出してよ。奢ってあげる」と笑って送り出してくれた。
手伝うという約束。その約束は、まだ続いていた。
編集者になってからも希望が通らず、日織の担当になるのに二年半もかかってしまった。未来がどうなるかなんて分からない。約束なんて、理不尽に崩れるかもしれない。
それでも僕たちは、その未来への約束を胸に歩いて行くことを決めたから。




