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君と明日の約束を  作者: 檜垣梁
21/25

21. まどろみ

***


 徐々に目の中に光が入り込んでくる感覚がある。喘息のような息苦しさはないけれど、呼吸しにくい。なんだか、浅いプールで寝転んで、水面から口だけを出しているみたいな。


 小さい頃から何度も見ている天井。この天井を見るのはいつも辛い思いをする時なのに、視界に入ると落ち着いていく自分を感じられた。


「ん……」

「日織!」


 お母さんの声が頭に響く。そんな大きな声を出さなくても。その声に続いて、椅子を動かした振動と足音が感じられた。


「おかあ……さん?」


 口を動かしたつもりなのに、その声は私の耳に入ってこない。


 視界の端に両親の顔が映る。と思ったら、その隣にミツ君と慎一君の朗らかな表情が覗く。みんな身を乗り出して私のことを見ている。


 日織、日織、と口々に出される声に返そうとするが喉の奥がつっかえて声にならない。精一杯力を込めて口角を上げようとしてもうまく力が入らず崩れてしまった感覚だけが残る。それでも、私の反応にみんなの顔が明るくなるのがわかった。


 その表情を見た途端。

 手術がおわったんだ、という自覚が、遅れてやってきた。


「よかった……」


 ミツ君の声だろうか。安心したようなその声を聞くと、私の心にも安堵が広がった。


「大丈夫。ありがとう」


 その言葉も、みんなに届いているかはわからないけど、安心して体の力を抜く。するとまた頭がぼやけてくる。

 その響きを頭の中に残しながら、私はまどろみのような感覚に包まれていた。


***

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