第95話 くさい、くさいぞッ!?
カッ、カッ、カッ、カッ
「ねぇ、ユウちゃん?」
テク、テク、テク、テク
「はい、なんですか?」
「あと4人はいるのよね?」
僕達はあれから違う光を目指して歩き始めていた。
残る光は4つ。今も動いているみたい。
その4つの光は多分おかしくなっちゃった人達なんだ。
多分僕なら治す事が出来る。
だから向かっているんだ。
「その4人の中の誰かが今回の事件に関係あるのかしら?
私達は事件の解決に向かってるのよね?」
「え?」
レイモンドさんの質問を聞いて僕は足が止まった。
僕は苦しんでる人を助けたい気持ちだったんだけど、
目的がいつのまにか変わっていたみたい。
多分やろうとしている事自体は同じなんだけど、さ?
目の前の事しか見てなかった。
そうだった、苦しむ人をいなくするために来たんだった。
大事な事、忘れてたよ。
ルナ先生?僕は、
どうしたらいいんでしょうか?
どこに行ったらいいんでしょうか?
〈...間違えてたら...教えてあげる...〉
僕が間違えたら教えてくれる?
〈...ユウの好きにしたらいいよ...〉
僕のやりたいように?
ルナ先生はそれで答えに辿り着くって言ってるのかな?
だったら気にしなくていいのかな?
「ユウちゃん?」
気付いたらレイモンドさんの顔が目の前にあった。
ホントに目の前。
チューしちゃうかと思った。
「ぅわぁっ!?」(ポテッ)
ビックリした拍子に、のけ反りすぎて尻もち着いちゃった。
それにいろんな意味でドキドキしてきた。
驚いたからか、恥ずかしいからか分かんない。
「イテテ」
「ご、ごめんね?急にポカーンってしてたから」
レイモンドさんは僕に手を伸ばして謝ってきた。
綺麗な顔を心配そうにさせながら。
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
僕はレイモンドさんの手を握って立ち上がった。
その手は細くて柔らかくて、やっぱり女性の手。
さっきの事を思い出したらまたドキドキしてくる。
……あの3人の中の誰かじゃなくてよかった。
バケモノじゃなくて良かった。ホントに……
「何か臭いわね」
「ええ、嫌な感じだわ?」
「気分を害しますね」
それはバケモノセンサーなのかな?
僕の考えに反応したのかな?
……違うよ?違うからね?
「ぼ、僕じゃないですよぉ?」
一応断っとく。
ウソだけど、否定しとく。
いろいろ、あとあと怖いし。
変なコト考えてなんかいないですからねー?
「ホントね?臭いわ」
……え?レイモンドさんも?
僕の考えが伝わってしまったの?
ど、どうしたらいいんだろう?
「え、えっとぉ、レイモンドさんは綺麗だから、
その、僕、大丈夫でしたよ?」
ちゃんと言っといた方がいいよね?
その後の言葉は言えないけど。
……ぼ、僕が考えた事はもうないぞっ!
だから、もう、く、臭くないよね?
「えっ!?あ、ユウちゃん?ありがとう。
そんな事言われたら私、勘違いしちゃうわよ?」
「ほぇ?」
勘違い、ですか?
僕は素直に話しただけなんだけどなぁ?
「ほんっと、匂いが強烈になってきたわ?」
「下水のせいかしら?」
「この先にありそうですね?匂いの素が」
あ、あれ?
僕の考えに感付いたわけじゃなかったんだ?
僕の勘違い?
あは、はは、はははぁ?
……く、くっさぁぁぁッ!?
ホントに臭いんですけどッ!?
「く、臭いですね!めっちゃ臭いッ‼
あ、近いですよッ!?
光はあの扉の向こう側っぽいです!」
僕は鼻を押さえて指を差した。
僕達が歩いている薄暗い通路の先に大きな扉が見えてるんだ。
その先に緑の光も見える。
きっといるんだ、苦しんでる人が。
「で、ユウちゃん?さっきの質問なんだけど?」
「はい、事件は僕が解決します!」
もちろんルナ先生の力は借りるけどね?
〈...フフフ...いいよ?...ユウの為なら...〉
なによりも頼りになる僕の親友。
ルナ先生がいればなんだって出来そうだ。
「じゃあ、行くわよ?
私達の力で悪夢を終わらせましょうっ!」
僕達は大きな扉を開き、
次の光へと向かって歩き出した。




