第91話 出来る大人に憧れちゃう
「本当に誰かいるの?
ここは普段、人が立ち入る様な場所ではないのだけれど?」
僕達は目的地の入り口まで辿り着いていた。
だから目の前には大き目な扉がある。
仲間?の1人の様子は何故か変わったみたいだけどね?
僕はレイモンドさんに言われてもう一度確認してみた。
「スキル【月の瞳】ッ」
うん、たしかに光が見える。
どれも違う色でハッキリと見える。
でも、そこまで光ってない。
もしかしたら怪我をしているのかもしれない。
でも……動いてる?
「あの、レイモンドさん?
多分5人いる、と思う。
でも変なんだ。全員ずっと動いてる」
「それは……スキルで分かったの?
でも助かるわ。5人、ね?
なにが変かは分からないけど、行けば分かるわ」
そうだよね。
行けば分かるんだ。
もしケガしてるなら僕の魔法で治せばいいし。
「大丈夫よぉ?」
「私達なら楽勝だしっ!」
「案内だけで問題ありません」(キリッ)
「あ、はい」
それにしても気になる。
ハゲの人に何があったんだろう?
さっきまでの感じと真逆どころじゃないんだけど?
いや、いいんだけどね?
「一応警戒はしときましょう。
アンタ達は前、ユウちゃんは真ん中ね?私が後ろを守るから。
……私がユウちゃんの後ろを守るからね?」(ニコッ)
「は、はい?お願いしますね?」
なんで2回言ったんだろ?
まぁいっか。
バケ……3人が扉を開けて、
僕達は中へと入っていった。
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ザァァァァァァァァッッッ
「わっ、凄い音ッ!?」
建物の中に入って、少し歩いた先に浄化設備があった。
そこはかなり開けた所で歩廊は水の振動のせいか少し揺れてる。
ちなみに大量の水は横から滝の様に下へと流れてる。
きっと下の方で綺麗にするんだろうね?
海には繋がってないのかな?
「くっさいわねぇ?」
「イヤぁんもう、匂い移っちゃうじゃない」
「どちらに向かえばよろしいので?」(キリッ)
う、う~ん、浮いてるね?ハゲの人。
でも今は一番頼れそう。
「あっちです。そこに一番近い人がいます」
僕は水が流れて来てる反対方向を指さした。
ちょうど扉があるし間違いないと思う。
「そう、分かったわ。
アンタ達もし相手が武器を持っていた場合は出番よ?
だけど違った場合は私達に任せなさい」
「はいっ姐さん!」
「了解ッ副長ッ!」
「お任せを」
凄い団結力だ。
大人ってしっかりするときはするんだね?
さっきまでの空気感が一瞬で無くなったよ。
「行くわよ?」
それにレイモンドさんの言葉はなんだか強い意志を感じる。
命令なんだけど全然不快感を感じないんだ。
これが出来る人って事なんだろうね?
僕もこんな大人になりたいなぁ。
だってカッコイイじゃん。憧れる。
「いい?さっきの手筈通りよ?
むやみに襲わない。私達の信念は?」
「「「平等がモットー!(であります)」」」
「よろしい、行きなさいッ!」
な、なんか軍隊みたい。
ギィィィィィ
「あ、姐さんっ!?」
「あの様子は……」
「ヤラれてますね?」
僕にも見えた。
薄暗い通路に1人、男の人が立っている。
フラフラと身体を揺らして歩いてる。
明らかに様子がおかしい。
「武器は持つな!
善良な民だっ!身柄を押さえればいい!行けッ‼」
レイモンドさんは言った。
善良な民だと。
でも……
「ぐるるるッ!ぅグォオおおおおおッッ‼」
「ひ、ヒィッ!?」
どうみてもおかしいじゃんッ!?
本当に人なのぉッ!?
僕には善良な民に見えなかった。




