第84話 彼の名はレイモンド
いかがわしい?お店に入ったカインとユウだったが...
「いらっしゃいませ~ぇん♡
エリザベートへようこそぉ?」
は、はわわわっ!?
ぼ、僕、本当に入っちゃったよ!?
どうしよう!?
カインさん僕の腕離してくれないし。
逃げれないんだけどぉっ!?
「...おいおい、マジかよ?」
え?
カインさん?
なんでお店のお姉さん見て後退りしてるの?
ほら、あのお姉さんニコニコ、
ニコニコ...
あれ...?
アゴ、ガ、...アオ、イ...ネ?
「んもう、なんで固まってるのよぅ?
固めるのは、ソ、ッ、チ、でしょう?」
「ざけんなッ‼誰がッ!?
ちょっ!?お前、凝視すんじゃねぇよっ!?」
受付?の、オネェサン?が、えっと、
カインさんの下半身を指さして微笑んでる。
あの、ねぇ?
オネェさんの事なんだけど...
多分『男』、の、
「あらぁ?お嬢ちぁゃん?
今、イケない事、考えたかしらぁん?」
カッ(目を見開く音)
「い、いえぇっ!?」
ブンブンブンブンッ(頭を全力で振る音)
オネェさん、おそるべし。
今、目の威圧感凄かったんだけど?
殺されるかと思ったよ。
「ところでぇ?子連れで何の用?
ここは大人のお店よぉ?」
「え?あ、その、カインさん?」
「あ?あー、俺しかいねぇのか。
情報屋、レイモンドだったか?に会えるか?」
ん?情報屋?
もしかして門にいた兵士さんから聞いてたやつ?
レイモンドって人から何の情報貰うつもりなんだろ?
「...そう?【海上の女神は?】」
「【人々に幸福の歌、悪鬼に降福の唄】、だろ?」
なにそれ。
秘密の合言葉?
それ、僕が言いたかったなぁ。
なんかカッコイイじゃん。
意味はよく分かんないけど...
「この合言葉を知ってるって意味、
貴方にわかるのかしら?まぁいいわ、
先に言っておくけど彼、今は喋れないからね?」
「ハッ、いいねぇ、好都合だ。」
えっと、なんで?
喋れないって言ってるのに、
なんで好都合なんだろ?
「じゃあ、こっちよん?
分かってると思うけど、秘密は、」
「厳守、だろ?大丈夫だ。
むしろお前らが厳守しろよ?」
「一体何が言いたいのかしらぁん?
ねぇ、お嬢ちゃん?」
「ヒョエッ!?そ、ソーダネー?」
び、ビックリした...
ウインクされたとき心臓止まったかと思った。
ホント冗談は顔だけにして、
「うふん♡」
ピッ、ピョエェェェェェェェェェッッッ!?
~地下、ロウソクの灯る暗く狭い部屋~
「じゃ、ア・ソ・コ・、の席に座って。
お嬢ちゃんは悪いけどそこに立っててもらえるかしら?」
「...はぁ。分かった。
ユウ、俺が話をするが、出番がきたら頼むぞ?」
「は、はい。
...はい?」
出番って?
いや、さっきから説明何もないんですけど?
「ちょっとぉ?
変な事しないでしょうね?」
「大丈夫、だ。
むしろ感謝されるくらいだろ?
いいから連れて来いよ。
奇跡を見せてやるからよぉ?」
「なにその自信?
分かったわ、連れてきてあげる。
奇跡でも臀部でもなんでもいいから見せなさい?」
で、デンブって何ぃ?
奇跡と関係ある事なの?
それから数分後に、オネェさんは人を連れてきた。
部屋が暗いのと、
フードを深く被ってるせいでどんな人か分からない。
でも彼って言ってたし、きっと男の人なんだろうね?
その人はどうやら足を怪我しているようで、
足を引き擦りながら席へと着いた。
喋れないし、足を怪我してるって事は...
魔物か何かとの戦いで?
生まれつきかもしれないけどね?
「あー、お前がレイモンド、でいいのか?」
カインさんの質問を聞いて、
レイモンドさんは紙とペンを取り出し、
何かを書きだした。
僕はこの世界の字がよく分かんないから答えが分かんない。
でも、普通は返事を書くよね?
レイモンドさんは書き終わり、
カインさんに紙を見せた。
「ん?まぁ、そうだよな。
ところで、今は喋れないっつったか?
昔は喋れたんだよな?
元に戻りたいとか思ってるか?」
「ちょっとアンタッ‼
彼は知る人ぞ知る歌ひ、」
バンッ‼
「も、申し訳ありません、レイモンド様っ」
ビックリ、したぁ~。
レイモンドさんが机を叩いただけなんだけど、ね?
というか、オネエさんより偉い人なんだ?
それに歌ひ?...続きは「め」かな?
だったら声、出したいんじゃないかな?
僕がカインさんを見たらちょうど目が合った。
多分出番ってそう言う事なんだろうね?
「ユウ、奇跡の光、見せてやれよ」
「そうだね。僕もこの人の歌が聞いてみたくなった」
僕はレイモンドさんの顔へと両手を差し伸べた。
その僕の両手を見てレイモンドさんは
「...め゛だ...め゛ろ゛...」
と、かすれ声で言ったけど、
大丈夫。
僕には先生もいるしね?
(ルナ先生、どれくらいでしょうか?)
〈...そうだねぇ?...中くらい、かな?...〉
了解です、先生!
「レイモンドさん、僕は今から貴方の声を戻します。
心配しないで下さい。
僕には【治す力】がありますから」
僕の言葉にレイモンドさんは震えていた。
怒っているのか、泣いているのか、
僕には分からない。
でも、僕は僕の出来る事をするだけなんだ。
だから、やるよ?
「治れッ‼」
それは、いつも通りの僕の魔法。
ただ、目を閉じて光を思い浮かべるだけ。
「な、光!?ま、まさか!?」
オネェさんの声が聞こえる。
まだ、魔法は効いてないみたい。
「だから言ったろ?奇跡の光ってよ?」
カインさんの声が聞こえる。
う~ん?まだみたいだね?
「...あ、あ?あー?...ウソ...」
?もしかしてこの女の人の声?
んー?女の人なんていたっけ?
オネェさん?いや、もっとおと、とっとぉ!?
危ない気がしたッ!?
で、えっとぉ?
カインさんじゃないよね?
レイモンドさんは男だって言ってたでしょう?
え?誰?
「可愛いお嬢さん、もういいよ?目を開けて?」
誰なの、この綺麗な声の人?
僕は言われるままに目を開けてみた。
目の前にいたのは、青い髪の綺麗な女の人だった。
フードを被ったままの状態なんだけど、
僕に顔を近付けて見てるから分かったんだ。
どうやら?レイモンドさんは女の人、らしい?
うん、とびっきりの美人さんだ。
それに、声が透き通ってて、癒される。
「私、アナタの事気に入ったわ!」
レイモンドさんは僕に抱き着いてきた。
「ふぇえッ!?あ、や、あぅぅ」
美人さんが抱き着いてきたんだよ?
平気でいられるわけがない、でしょ?
というか、なんか、くるしぃ?
レイモンドさんの抱擁は、思ったより強かった...
うん、頑張る。
それしか言えねー!




