第81話 汚ロチを生み出す者、水の都に到着する
船に乗り込んだユウ達、どうにもアビゲイルの様子が...
≪ボォォォォォォォゥ≫
うわっ、すっごい音っ!
僕達を乗せた船がもうすぐ目的地に着くみたい。
僕は今アビゲイルさんと一緒に船内の客室にいるから分からないんだよね。
「ユ、ユウゥ?見てきて、うぅっぷ、いいんだぞ?」
気にはなるんだけどね?
青紫色の顔したアビゲイルさんを1人に出来ないよ。
「いいんだ。見ようと思えばいつでも見れるし。
今はアビーを放っておけないから」
「ユ、ユウぅぅうぇぇっ」
シュパッ(僕のダイビングバケツフォロー音)
オロロロロロロロロ(汚ロチ降臨音)
ふぅ。セーフ。
だってこの客室、超スィートな部屋だからね?
侯爵さんの厚意?らしいけど、汚せないよ。
迷惑はかけられない。
だから僕は行かない。
外に行かない。行けないんだ。
「ユウぅ、悪いなぁ、悪いなぁぁっつっぷぉぇぇッ」
いや、アビゲイルさん?
どんだけ吐くんですか?
胃液、大丈夫なんですか?
僕は大丈夫そうなタイミングを見計らって、
手洗い場の流しとの往復を繰り返していた。
(はぁ、早く着かないかなぁ?)
アビゲイルさんとの海の旅はもうしない方がよさそう。
カインさんは手伝ってくれないし、人手が足りないから。
え?カインさんは何してんのかって?
船の乗客に都の情報を聞いて回ってるみたいだよ?
なんでも、『情報は何かと役に立つ』、とかなんとか。
僕には出来ない事だから仕方ないんだよね。
やる事ないし、結局僕が介抱してあげるしかないんだ。
「うぉぇぇぇッ、スマンなぁ、スマンなぁぁ」
なんかアビゲイルさんどんどん歳を取っていってる気がする。
それに見てる僕まで気持ち悪くなってきた...
早く陸に上がりたいよぉぉぉぉっ‼
~水の都・船着き場~
「...ふぇはっ、ふぁっぷぁっ、
...着いた、着いたぞぉぉっ‼おぅぇぇぇぇっ」
僕達はやっとの思いで陸に上がった。
着いたんだ、僕達の目的地水の都へ。
...いや、船で都に着いたってだけなんだけどね?
「はぁ、とりあえず宿取るぞ?
そこのゲロ汚オカミは置いといて、
...大変だったろ、ユウ?」
「...うん」
ごめん、アビゲイルさん。
僕はもうゲロ担当はしたくない。
正直言って、疲れたよ...
「オロロロロロロッ」
あ、聞かれてなかった?
じゃあ、気にしないでいっか。
(アビゲイルさんの事は今は放っておこう。
陸に上がれたし、いずれ良くなるでしょ)
それより、ここが水の都、かぁ。
僕は辺りを見回して、目を輝かせた。
僕達が着いた港はもちろん海に面した所にあるよ?
だけど、海に近いというか、
町の中にも海は通っているみたいなんだ。
場所によっては地面に波を感じる所があるし、
なにより大きな水路が海に繋がってるっぽいからね。
あと、その大きな水路は何ヶ所かあって、噴水やら小船やら、
まさしく水の都って感じの雰囲気があったんだ。
僕の知らないファンタジーが目の前にあったから感動したんだ。
そんな僕に気付いたカインさんは色々教えてくれた。
「ここはただ海に面しているだけの町じゃねぇぞぉ?
町の半分以上が海の上に建っている。
分かるか?ここは、海の上、海上都市だ。
世界で唯一の『水』上の『都』市、なんだぞ。
つっても陸に繋がるトコは海上じゃねぇけどな!」
カインさんの説明に僕は嫌な予感がよぎった。
そ、そうなんだぁ~?
全部じゃないけど海の上、なんだぁ~?
あはは、カインさんって、物知りぃ~☆
「うぁぇうぃぇうぇぇーッ?陸じゃ、ないの、ぐうぇぇっ!?」
あれれぇー?おかしいなぁっ?揺れてるよねっ♪
船と同じように揺れてるんだよね~ぇ?
これって、何も変わってないって事だよね~ぇ?
うん、もしかしたら...困ったぞっ‼
「オロロロロロロッ」
「嘘だぁぁぁああぁぁっっ‼」
僕は頭を押さえてうずくまった。
多分僕の声は港中に響き渡った、と思う。
あ、そういえば前にもこんな事...?
「ユウ、俺もまさかここまでダメオオカミだとは思わなかった。
とりあえず宿に荷物とコイツを置いて目的地へ行こう」
今は、出来る事を、しなくちゃ、だよね?
僕は海に汚ロチを降臨させてるアビゲイルさんを見て、
ただただ溜息が出た。
水の都は世界のどっかにあるあの、アレみたいなトコです。
ごめんなさい、国名忘れました。




