第80話 出港、仲間との旅立ち
船で水の都へ行く事を決めたユウ達。ようやく前へ進む事になる...
「侯爵さん、
あのっ、色々とありがとうございました」
「いえいえ、私共の方こそ救われました。
貴女方がいなければ、今の私共はいなかったでしょう。
こちらの方こそありがとうございます。
これからの道中お気を付けて。
聖女様のご活躍、楽しみにしておりますので」
僕達はアレから旅支度をし、
昼頃になってから大きな客船で港町を旅立とうとしていた。
今は出港前のお別れの挨拶をしているトコ。
ゴルディさんや使用人の人達が出迎えてくれてるんだ。
なんか、短い間だったんだけど、
お世話になった人達とのお別れって慣れないモノだね?
涙が出てきちゃう。
「じゃあな、お前ら。魔族には気を付けろよ?」
カインさんは慣れてるみたい。
いいなぁ、男らしくて。
僕もあんな感じに「じゃあな」って言ってみたい。
今は女の子なんだけど、ね?
元男の子的には憧れるよ。
かたや、なんだけど......
「ユ、ユウぅ~?
あ、あのデカい船に乗らなければならないのかぁっ?
あんなので海を渡れるのかぁっ!?」
僕にしがみついて尻尾を内巻きにしてるアビゲイルさん。
あの凛々しかったお義姉ちゃんはどこに?
というか、乗った事ないの?
「ホラ、ユウ行くぞ?
そこの変態オオカミは船に乗らないみたいだ。
ここでサヨナラみたいだな?
じゃあな?ユウのお義姉さま?」
「ば、馬鹿にするなよッ!?
私だってこんな船ごとき乗りこなしてミセルッ‼」
言いながら1人で走って乗り込んでしまった。
この客船は乗りこなす必要ないと思うんだけどなぁ?
山のオオカミだから海慣れしてないのかもね?
「えっと、皆さん、僕達行きますね?
あの、お身体には気を付けて?
また、いつか戻ってくるからね!
...えっと、ばいばい!」
「はい。
使用人共々身体には気を付けますとも。
いつでも歓迎いたします。
良い旅路でありますように」
僕は笑顔で手を振ってお別れした。
侯爵さん達も手を振ってくれてる。
お別れって言ってもまたいつか会うつもりなんだけどね?
それでも、やっぱ辛いなぁ。
でも、前、見なきゃね!
妹の為にも、出来る事しなくちゃ‼
そう思いながらカインさんと客船へと乗り込んだ。
これから海を越えて、人の大陸ミッズガルズだ。
そこにいるらしいんだ、僕の妹がっ‼
~~~~~~~~~~~~
って、思ったのは数分前だった気がする。
「う、うおぇぇぇっ」
「大丈夫?また掛けようか?」
えっとね?
僕達船に乗って航海中なんだけど...
「だ、だのむぅぅ」
「治れッ」
案の定って言うのかな?
アビゲイルさん、ダメみたい。
「・・・あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛・・・うぇっぷ」
僕の魔法でも効果が無いかも。
いや、えっとね?
効果はあるんだけど、すぐ気持ち悪くなっちゃうみたい。
そんなに揺れてないんだけどなぁ?
「おい、まだ今なら泳いで帰れるぞ?」
「誰がぁ、うっぷ、がえるがぁ゛ッ‼うおぇぇっ」
あぁ、ホラ、大声出すからぁ。
海にキラキラ流れてくよ?
あ、でも魚の餌に?
いやいや、今は関係ないか。
「カインさん、イジメちゃダメだよ!
大丈夫?アビー?」
僕はアビゲイルさんの背中をさすってあげるしか出来ない。
だけどこんなに船酔いするなんて、
...まだまだ先は長いんだけど?
「ユ、ユウ、私はもう死んだも同然だ。
大人しく船内で死んでおく。
私の事は、ぅおぇぇっ」
アビゲイルさんはそう言いながら、
海にキラキラまき散らしながら離れてく。
「ア、アビーッ!?」
「大丈夫だろ、アイツは。
本当に死ぬわけじゃないんだ。
下手に構う方がダメージでかいぞ?」
た、たしかに?
あんだけ人前で吐き散らしたから今更だとは思うけど。
介抱される事に申し訳なさを感じたのかも?
「なぁ、ユウ?そういえば、なんだが」
「はい?なんですか?」
あれ?そういえば僕の事、
嬢ちゃんって呼んでなかったっけ?
ん?そういえば今日呼ばれたっけ?
「ユウは記憶、無いんだよな?」
「えっ?あ、は、はい。
気付いたら森の中にいました」
「...そうか」
え、えぇぇ?
急になんなの?
納得してくれたならいいけどさぁ?
ちょうどいいか、呼び方の事聞いてみよっ。
「あの、カインさん?
なんで僕の事ユウって呼んでくれるんですか?」
「あー、今日からユウの事、
1人の人間として見てみようかな、ってな?
ホラ、仲間、だろ?
嬢ちゃんって呼び方じゃなんかよそよそしいしな?」
そんな事考えてたんだ?
僕的には認めてくれたみたいで嬉しいけどね。
「じゃあ、これからもよろしくね?カインさん!」
「おぅ!頼りにしてるからな?ユウッ!」
僕達は船の上でヨロシクの握手をした。
今、初めてカインさんと仲間になれた気がする。
このまま皆仲良く出来たらいいな。
僕達を乗せた客船は今、
新たな冒険へと進みだした。
さて、新章頑張りますかッ‼
ここまで読んでいただき、
ブックマークしていただき、
ありがとうございますぅッ‼
書きながら小説を勉強してるので、不備があったら教えてくださいぃ。




