第8話 ルナの魔法レクチャー
僕の、魔法だって? ……魔法ってゲームによく出てくるアレだよね? 本当に僕が使えるって言うの?
〈……使えるから……早くしないと……死んじゃうよ? ……〉
そ、そうだった。使えるんなら早くしないとッ‼ ル、ルナさん? どうしたらいいですか?
〈……じゃあ、まずは……目を閉じる……〉
僕はルナに言われるがままに傷だらけの赤い女の人の目の前で魔法のレクチャーを受けた。いきなり魔法なんて使える気がしないんだけど、ゴブリンやオークがいたから本当は少し期待している。
というか確信はないけど、多分この世界は僕の知っている世界じゃないと思っている。だって目の前のこの--
〈……雑念は邪魔……両手を前に出して……〉
「ご、ごめん? こう?」
ルナに注意されたので素直に両手を前に出す。だけど僕に魔法が使えたとしてもこの女の人のケガを治すことが出来るの?
〈……雑念……分からないの? ……〉
「すみません。ちゃんと集中します」
なんか怖い。おっと、集中、集中。
〈……強い光をイメージして……〉
強い光? 太陽をイメージしたらいいのかな?
〈……そう。それで……治れと叫ぶ……以上……〉
治れと叫ぶ、以上……以上?
「はい?」
魔法ってもっとこう、なんていうかさ、魔力を……とかあるんじゃないの? そんなんでいいの!? この人自分でケガ治せたんじゃないの!?
〈……うるさい……早くやって……〉
なんでそんなに短気なの!? 僕が悪いのっ!? 分かりましたよ! やればいいんでしょ!?
「えぇと、光をイメージして……」
『治れッ‼』
目を閉じているから今どうなっているか僕には分からない。え? なにコレ? 凄く、力が入らない……? あれ? ……だめかも。
魔法が成功したからか身体の中の何かが抜けて力が入らない。立っていることも出来ずに前のめりに倒れていく。今にも意識が飛びそうだ。せめて魔法が成功したか確認したか、った、な……
〈……大丈夫だから……今は……おやすみ……〉
ルナが何か言ってる気がするけど僕には聞こえなかった。




