表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/108

第77話 幕間 ゴルディ侯爵

少し長い話です。

必要あるかと言われれば、無いかもしれません...



 私の名は、ゴルディ・ウェザー。

 侯爵貴族の当主として長い年月生きてきた。


 そんな私が何故人の地、ミッズガルズにいないのか?

 それは数十年程前の人亜戦争が原因だ。

 その人亜戦争終結を機に、

 和平協定なるモノが設けられたのだ。

 互いに有益なる者を相手国へ置く、という約定だ。


 言い方は悪いが、

 もしものための人質と言えば分かるだろうか?

 なのでミッズガルズには私の様に獣人の重役がいる。



 私の場合は国王からの直々の勅命であった。

 その時は喜ばしくもあり、

 逆に気も落とした。


 国王の信頼を得た喜びは計り知れなかったが、

 他国へ人質になれと言われたのだ。

 失意、失念してしまったよ。


 だが、予想していた内容ではなかった。

 『他国の親善大使』として居を構えろ、

 という話だったからだ。

 待遇も国賓扱い。

 ただ、そこに住むだけで構わないとの事だ。

 その言葉に耳を疑ったが、現実は実現した。



 私は我が家となる屋敷を拝見して腰を抜かした。



 見渡す物全てが私有地。

 案内役の町長も驚きながら説明をして下さった。

 どうやら、国王の別荘なのだそうだ。

 海の見えるかなりの良地。最高の立地。

 そのうえで、広大な敷地なのだ。

 それを無償で私に譲渡する、と。


 文句の付けようがない。

 付けようものならどうなるか...

 その時私は思ったよ。



(はぁ、恐ろしい仕事を受け持ったかもしれんな)


 

 とな?


 仕事といえば、なのだが...


 親善大使としての仕事は楽なようで楽ではなかった。

 人間と亜人の仲を取り持つ架け橋になるだけ。

 要は偏見を持たずに接する様にさせるだけなんだが...


 お互い過去の争いに少しながらでも遺恨がある。

 人を殺し、殺された、恨みや憎悪があるのだ。

 何年、何十年経とうと、そう消せるモノではない。



 もちろん戦争など既に終わっている。

 それでも家族を殺された人々は、

 心の中で血の涙を流しているだろう。

 『何故手を取り合わないといけない?』と。


 どうやら大変な仕事を受け持ったらしい。

 見事なまでのアメとムチ、だ。

(死ぬまで...いや、この地に骨を埋めねばならなそうだな)


 私はゴルディ家当主として決意を決めた。




  ~~~~~~~~~~~~



 それから何十年経っただろうか?

 私の努力が形になったのか、

 昔に比べて波風が立たなくなってきた。


 内心よくやったものだと思う。

 だが、まだまだやらなければならない事がある。

 私の今の目標は、


 『奴隷制度の撤廃』だ。


 人々は皆平等でなくてはならない。

 私の故郷、ミッズガルズ最高の王都の様に。



 その為に私は他村を巡り、調査を行っていた。

 その調査終わりに港町へ着くと、

 門前で見慣れぬ美しい姿の真っ白な少女を見た。

(あんな少女が何故1人で?どうしたのだ?)


 見る限り門番と話をして困っている様だ。

 記憶が正しければあの少女はこの港町の子ではない。

 私は使用人を先に帰らせ、近くに護衛を潜ませ少女へ近付いた。


「ふぇッ!?」


 私の声に少女を驚かせてしまった。

 申し訳ないと優しく謝り、私は事情を聞いてみた。

 どうにも保護者が何かの間違えで捕まったとか。

 他人事だが、...災難だったな。


 しかしこの少女、見た目が良すぎる。

 それに加えて無垢で素直過ぎる。

(この子は保護してやらないと身が危険だな)


 私は少女の為、屋敷に入れる事を決めた。

 騙されて奴隷にされかねない純粋さだったからな。



 そして私は客人として迎え入れた。

 少女は声には出さないが、表情で驚きを表していた。

 その姿に初めてここに来た自分を思い出したよ。

 あぁ、やはりそれが普通なんだよな?と。


 それから私は調査結果をまとめる等執務を行った。

 ついでに見回りに任せていたこの町の調査も。


 そんな仕事の最中にバタバタと走り回る音が聞こえ、

 遅れて使用人がノックもせずに入室してきた。

 私はその時にやっと、

 “何か”が起こったという事に気付いた。

 私の使用人は優秀だからな?

 常識のない奴はいない。雇っていないんだ。


「どうした?まさか、

 強盗が入ってきた訳ではあるまい?」


「い、いえ、そのまさか、ですっ‼

 きゃ、客人のお嬢様が、攫われましたッ‼」


「なんだとッ!?」


 私は思わず立ち上がって驚愕した。

 まだ1時間と経っていないのだぞ?

 何故あの少女が攫われる!?


 

 それからいろいろ調べたり大変だった。

 何より客人を攫われたのが痛い。

 門番が口を滑らさなければいいだけなのだが、

 親善大使が客人を攫われるというのがマズい。

 平等を訴える者が子供一人守れないのだ。

 言葉が軽いモノになってしまう。

 何としてでも助けなければならない。


 その時の私は、少女を二の次に...

 私の保身を第一に考えていた。




 翌日になっても情報は入ってこなかった。

 正直あの方がいなければ最悪の結末になっていたかもしれない。



「ゴルディ様、カインと名乗る者が会わせろ、と。

 これを預かったのですが、ご存じでしょうか?」


 使用人が出したものはナイフ。

 一見するとただのナイフだが、

 一般人では持てない物だった。


「ッ!?こ、これは...

 早急にお連れしろッ‼」


「は、はいっ‼」


 そのナイフには柄にレリーフが彫られてあった。

 そのレリーフは私の知る限りではあの方しかいない。


 私は緊張したよ。

 まさかこんなトコで会うとは思わなかったから。


「お連れしましたっ!」


「よォ?息災か?むしろ災難、か?ははっ」


 60過ぎの私でも流石に緊張した。

 まさしく本物だったから。

 あの髪、あの顔、あの喋り方...

 昔とあまり変わらないお姿でいらっしゃる。


「いやぁー、俺の方が災難か。

 俺のツレが暴れてしまってなぁ?

 それに聖女、攫われたんだろ?災難だよなぁ?」


 どうやら既にこちらの事情は把握されてる様だ。

 それより気になる言葉が出てきた。


「せ、聖女とおっしゃられましたか?エリック様?

 聖女様はミッズガルズ、水の都にいるのでは?」


「ん?あぁ、アレが聖女ならあの嬢ちゃんは女神になるぞ?

 違う違う、嬢ちゃんが聖女...

 いや、本物の聖女だという証拠はある。俺が証明してやる。」


 本物の聖女...?

 本物とは、一体?


「証明とは?」


「第7魔法、あの少女は光を宿してる。俺が見た」


「なっ!?あのッ!?」


 それは伝説...いや、空想の魔法では?

 しかしこの方が見たのなら、真実...なのか?


「あの嬢ちゃんは『白の聖女』だ。

 絶対に守らなければならない。

 この世界、人々のために、だ。」


 な、なんという...

 私は、私の失態はこの首1つではッ‼


「焦んなよ?

 まだ終わったわけじゃねぇ。

 俺の全てを使って探し出してやる。

 だからお前も協力しろ、全力でな?」


「ハッ‼」




 私達はそれから町を封鎖し、

 持てる全ての力を用いて探し出した。

 その答えがあの町長だったのだ。

 今でも信じられないが、どうやら洗脳されていたらしい。

 その洗脳もあの聖女様によって癒された。

 

 それより、この身体...

 いや、命であろうか?

 私達は全てを癒されたのだ。 



 魔族の出現、凶悪な魔物の召喚により死したこの身体を...

 白の聖女様は癒して下さった。


 私は肩から切り裂かれ、死んだ記憶がある。

 本当に真っ白、意識の無い世界を漂っていた筈だった。

 そこに光が照らし出され、

 気付けばそこに倒れていた。

 血の跡もなく、服も破れておらず。

 使用人たちも同じく。


 言葉にする事が出来ない。

 言えるなら、それは『奇跡』だった。

 人の傷以外治っていなかったから分かった。


 瓦礫が、魔物の爪痕が、死ぬ直前の記憶が、

 残されたままだったから理解できたのだ。


 あぁ、私達人間だけ元の状態に戻ったんだ、と。

 それが奇跡でないのなら何と言えばいい?



 そんな私達の近くで白い少女は倒れていた。

 傷はない様だった。

 だが、うつ伏せのまま動かなかった。


 私は急いで屋敷に運んだ。

 使用人にはすぐ医者を連れてこさせた。

 私達の命の恩人、救世主様を死なせてなるものか、と。

 年甲斐もなく慌てたものだよ、全く。


 そして無事に回復したのか白い少女は起きてきた。

 内心ホッとした。


 だが、



「もう、2人とも、ヤメてッ!?

 こんな事になるなら、もう、僕出てくッ‼」



 どうしたものやら?

 綺麗な心の持ち主様だからなのか喧嘩は嫌いらしい。

 その姿は子供本来の姿ではあるのだけどな?

 聖女様は自身のお立場をもう少しお考えになられては?


「エイミー。護衛に行け。

 絶対に守り抜け」


「はいっ!聖女様は私が責任もって守りますともっ!」


 使用人の中では影として一番頼れる実力者だ。

 

「おいっ!責任っつーもんはなぁっ」


「うるさいッ‼また、貴様のせいでぇッ‼

 ぐぅぅぅぅッ‼ユウッ!

 待ってくれ、私が悪かった‼待ってくれぇぇ...」 



 慌ただしい仲間だ事で。

 


 私はなんだか温かい気持ちになって微笑んでいた...



や、やっと土曜日か...

今日はいっぱい寝るぞー‼

今から14時くらいまで寝るぞー‼


夜に童女のせいで...と双月...あげ、ますぅ~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ