第72話 屋敷で迷子の聖女様
目覚めたユウはアビゲイルを恐れた。そのおかげでスキルを手に入れたが...
「アビゲイルさんがいるって事は、
ここは港町って事だよね?」
僕は部屋に差し込む光が漏れる窓から外を見た。
あー、...ここ侯爵さんの屋敷?
「あのめっちゃ広い庭園、見た記憶があるよ...」
どこかのいい宿なのかと思ってた。
でも、思ってた何倍も凄いトコだった。
どうりで静かなワケだね?
町中だったらいろんな人達の声が聞こえるもんね?
「町長の家からここに運んでもらったのかな?
意識失っちゃったし、分かんないや。」
本当に分かんない。
もともと僕はカインさんとアビゲイルさんの解放を手伝ってもらうだけの予定だったのに。
いきなり獣人の人に眠らされたし。
気付いたら、地下で...その...アレが...あうぅぅ。
そ、それでッ!侯爵さんが迎えに来てっ!
町長さんとエル?エロ?なんだっけ?
ナントカさんが口喧嘩して?
仲裁にいったらカインさんがいて?
カインさんのお願いで僕の魔法を使って?
でもルナが光は強くないとダメって言って?
ここ数日ハチャメチャだ、なんでこうなったの?
...まぁいっか。
みんな無事だし、問題なしッ‼
(そういえば町長さん、怪我はちゃんと治ったのかな?)
途中で意識を失ったからどうなったか気になるんだよね。
もともと息はしてたし、大丈夫だとは思うんだけど。
あの場にいたカインさんなら知ってるんじゃないかな?
僕は呑気に部屋を出て、広い廊下を1人歩いた。
ガチャッ
「失礼しま~す、はい、ハズレ~。次ッ‼」
僕は扉を全て開いて人を探していた。
今のところ13部屋ハズレ。
「誰かいないのぉ~?広すぎて迷子なんだけどぉ?」
明るいとはいえ、広すぎる廊下に静かすぎる屋敷。
少しだけ不安になる。
「誰でもいいから出て来てよぉ...」
誰でも、にアビゲイルさんは入ってない。
でも、このまま誰にも会えないならアビゲイルさんでもいい。
それくらい不安になってた。
でもついに、18部屋目にしてやっと出会えた。
「失礼しま~す。あッ!?」
「お、おまちくだッ...せ、聖女様ッ!?」
ヤバ...ここ、女子更衣室だ。
僕の目の前で女性が下着姿のまま立ちすくんでいた。
その豊満なボディに釘付けになり、時が止まった。
お互いに、ね?
「せ、聖女、さま、と、扉を、締めて貰っても?」
「あ、ご、ごめんなさい。」
思わず扉を閉めながら中に入ってしまう僕。
(なんで僕も入っちゃったんだッ!?僕のバカぁッ‼)
今更開けたら何て言われるんだろう?
見てみたい気持ちは子供ながらにあった。
でも、イケない気がして扉の方を向いた。
「白の聖女様、この度は命を救って頂き、
ありがとうございました。」
着替える素振りもなく、
使用人?の女性は僕に話しかけてきた。
うぅぅ、出るタイミング失ったよ?
それにしても、
白の聖女様?って僕の事?
ってか、僕この人知らないんだけど?
僕は扉のドアノブを見ながらも疑問に思っていた。
いつ、僕が命を救ったか分からないから。
振り向いて聞きたかったけど、そのまま聞いてみた。
「あの、僕はいつ助けたんでしょうか?」
思いのまま、言葉にして聞いてみたんだけど...
「白の聖女様はお優しい方、なんですね?
自身の功績に目を向けず、
ただありのままに手を差し伸べる...」
僕には言ってる意味が分からない。
いつ助けたの?って聞いただけなのに。
功績って僕何もしてないんですけど?
手を差し伸べるってのも、
町長さんくらいしか思い当らないよ?
「えと、無事なら良かったです?」
分かんないけど、とりあえず合わせとく。
なんか会話にならなそうだったし。
「今は感謝しか、返せるものがないですけど...
聖女様のおかげで助かった人は他にも大勢いますッ‼
貴女は紛れもなく聖女様。私達の救世主様ですッ‼
お困りな事があればお手伝いさせて下さいませっ‼」
この人凄ぉく熱い人だぁー。
喋りだしたら止まらないタイプっぽい。
「そ、そっか。僕、頑張るね?じゃッ‼」
僕は勢いに任せて廊下に出た。
あのままいたら、延々やった覚えのない事聞かされそうだった。
というか聞いたこと返してくれないんじゃ、ねぇ?
何が手伝えんだろう?...まぁ、忘れよう。
それにしても、助かった方々って事は何人も助けた?
それ、絶対僕じゃないよね?
だって、記憶にないもん。
僕は不思議に思いながらも、また次の部屋へと人を探した。
誰かカインさんの居場所教えてよーーーッ‼
この屋敷は無駄に広い。
僕の捜索はその後1時間程続いた。
ブックマークしていただきありがとうございます。
前半の方でご新規さんは離れていく様なのでいつか修正しようかと思います。
何かアドバイスがあれば教えて下さい。
出来る事をしながら完結したいです。




