第71話 目覚めた僕は新しいスキルを手に入れた
変態魔族を退けたルナ。しかし、エヴリンを連れていかれた。
視える未来の最善を実行し、意識を失ったが...
...凄く眠たい...
...意識が朦朧として...
...アレは...なんだろう?...
僕は、思うがままに見えるものに向かって集中した。
ここがドコで、
今どうなってるかなんて気にならなかったから。
...あれは...だれ?...
...なんであの人を蹴ってるの?...
...でも...あの人...悪い人?...
僕が見たのは変な格好の男の人?を蹴っている映像。
その人が僕に何かしようとしていたけど、未然に防いでいる。
すごい臨場感?まるで僕の見た映像みたい?
...だれか...出てきた?...
...後ろに...エヴリン?...うつむいてどうしたの?...
...必死に助けようとしてる?...でも...
陰から見た事ある様な人が出てきた。
その後ろに僕の友達エヴリンさんがいる。
映像は必死に手を伸ばそうとしているのに届かない。
...変な格好の人が...エヴリンさんとどこかに行った?...
...笑ってる男の人も...地面に消えてく?...
...なんだろう...なんか辛い...
僕の記憶じゃない筈なのに、心が辛くなる。
消えて行った人達の跡を見て、後悔してしまう。
なんで?僕の知らない映像なのに?
...両手を空に向けて...何かを唱えてる?...
...身体から無数の光が出て...どこかへ飛んでいく?...
...そのまま映像が...暗くなってく?...
僕にはよく分からない映像だった。
でも、どこか鮮明で、どこか現実だった風に感じる。
エヴリンさんは、どうなったの?
この映像は一体?
そういえば、ここはどこ?
また僕は一人ぼっちになってしまったの?
ここは何もない白い世界。
僕の身体はたしかにある。
でも、何もない真っ白な世界なんだ。
イヤな感じは全く無い。
それでも、僕は辛くなる。
(寂しいよ、辛いよ、みんなどこに行ったの!?
カインさん?アビゲイルさん?ルナ?)
心の声は誰からの返事がない。
僕の不安はやがて膨れ上がり...
「僕を置いて行かないでッ‼1人は、もう、嫌なんだッ‼」
はぁッ、はぁッ、はぁッ...ん?
気付けば見知らぬ天井が視界に映っていた。
どうやら僕はここで寝ていたみたいだ。
(今のは夢?でもハッキリと覚えてるけど?)
それにしても、身体が全く動かない。動かせない。
(まさか、また捕まったんじゃ)
とか思って見える範囲確認したけど違うみたい。
ただ、僕の身体が動かないだけみたい。
どうやら町長への魔法が思いのほか負担が大きかったのかも?
今回は意識を失う前の記憶もしっかり覚えていた。
筋肉痛なら僕の魔法で...
「治れッ」
次第に身体が楽になっていくのを感じる。
この魔法って便利だよね?
みんな使えないみたいだけど。
僕は目を開けて身体を起こした。
辺りを確認したけど、僕の知らない部屋みたい。
でも、窓から光が差し込んでいる。
(よかった、もう地下はコリゴリだよ)
僕は地下に幽閉されていた恥ずかしい記憶を思い出して、
思わず顔を火照らした。
しかし、誰かの走る足音によって我に返る。
(誰かが来るッ!?)
さっき寝起きで叫んだ言葉を誰かに聞かれたのかもしれない。
どうしよう?どうしよう!?
(あ、あそこならッ‼)
バァァァンッッッ‼
「ユウッ‼目覚めたのかッ!?」
どうやらアビゲイルさんみたいな声が聞こえる。
でも本物かどうか分からない。
だって、隠れてるから。
なんで隠れてるのかって?
出ればいいじゃないかって?
いやぁ、だってぇ、ねぇ?
「ユウが、いない?...だが、まだ匂いは、あるッ‼」
僕は隠れながら覗き込んだ...
うわッ!?あの顔...やばい、
アレはやっぱアビゲイルさんじゃないッ!?
アレは発情したオスみたいな危険な顔だッ‼
捕まったら、食べられるッ!?
「ユ~ゥ~?どこにいるんだぁ?
起きたんだろゥ?さぁ、おはようのハグをしようじゃないカ?
その後は、2人で楽しく...くく、くっ、お昼寝しようかぁ?」
違うッ‼絶対アビゲイルさんじゃないッ‼
アビゲイルさんは僕の身体を触って喜んだりしてるけど、
あの顔は偽物だッ‼あの人はエロゲイルだッ‼
僕は絶対に見つからない様に全神経を集中し、『無』になった。
「ッ!?ユウの気配が消えたッ!?」
「...」(全てを殺すんだッ‼見つかれば、それこそ死だッ‼)
「匂いはあるのに気配がない?ここにはいないのか?
...ユウッ‼私はここだぞぉぉぉッ!?」
エロゲイルは部屋中の匂いを嗅ぎまわり、
そして、暴走しながら出て行った。
はぁ、助かった?
ピンポーン
(ん?誰かインターホン押した?)
【シロツキ・ユウは特定の条件を満たしたため、ユニークスキルを会得しました】
え?スキル?ってか、僕はツキシロ、だけど?
...ん?アレ?なんか分かる?
僕は頭の中に浮かぶ言葉を読み始める。
【隠密・無想月】
・気配を完全に消す事が可能になる。
[気配は消せるが、姿を消せるわけではない]
・月の見える夜に使用時は視覚、嗅覚も無に出来る。
[聴覚・触覚・味覚は消せないので物音等には注意が必要]
あ~、なるほど?
僕の得意なかくれんぼがここにきてスキルとなった、と。
必死になってエロゲイルから隠れたから。
なんかごめんね、アビゲイルさん?
この町の入り口でカインさんが言ってた言葉...食べるって、
やっぱりオオカミかもって感じたから怖くなっちゃった。
いや、でもさすがにさっきのは怖かったよ?
でも僕なりの良いスキルを手に入れれた。
身の危険を感じたら使おう!
ナイス‼神様大好きッ‼
僕は目覚めて初めて自分の手でスキルを手に入れた。
ここがドコで、
なんでアビゲイルさんと同じトコに居るのか分からないけど。
僕は考えながら、開かれたドアの隙間から出た。
ちょっと余計なシーン入れちゃったかな。
エロゲイルは流石にキャラ崩壊かも?
いやいや、エロゲイルはエロゲイルですよ。
だってオオカミなんだから(笑)




