第70話 ルナとユウ、二つの意識、二つの人格
アビゲイルはカインと協力して魔物を倒した。
ルナの方は...
~ルナ~
(...アッチはもう片付いたみたい...)
ルナは燃え上がる炎の中で動かなかった。
目を閉じ、魔法障壁を形成しつつ、
カインとアビゲイルの戦いを視ていたから。
(...無事に倒せたみたいだね...分かってたけど...)
ルナは何でも知っている。
これからの事、これまでの事。
それはルナのユニークスキルの力、
【月の瞳】の能力。
ただ、ルナにも知らない事はある。
それは、ユウ自身の事。
今の身体は紛れもなく、ユウの身体。
でも動かしてるのは、ルナ。
意識はルナだけど、ユウの意識もある。
身体はルナだけど、ユウの身体でもある。
一つの身体に意識は常に2つある。
その答えはルナには分からない。
知ってるのは、あの人だけだろう。
もともとはルナだった。
ルナだけだった。
でもルナは数百年前に消えたハズの存在。
だけど、
気付いたら森の中にいた。
気付いたらユウの中にルナがいた。
気付いたらユウを大事に思ってた。
もう1人のルナ。
まるでルナの子供。
何を考えてるかは分かる。
分かるけど、なんでそう思うかが分からない。
ルナには感情が無かったから
だけど、ユウを通して感情が何か分かってきた気がする。
その感情がまだ予測できないから、
ユウの行動に未来が変えられてしまうのだけど。
良いのか、悪いのか、ルナには分からない。
だけど、もう一人のルナは可愛い子なんだ。
ルナはユウを守りたい。
身体ではなくて、心を...大事にしたい。
(...さて、ユウの為にも終わらせようかな?...)
ルナは視える未来の最善を選んだ。
深く、浅く、息を吐き、
ただ、そこにあるものを吸う。
「ッッッ!?」
炎の外で何か聞こえる。
その言葉はもう知ってるからルナは気にしない。
吸うのは炎と魔素と、光。
感じるのは、ルナの魔力とユウの意思。
目を開くと知ってる光景。
ルナの視た最善の答え。
「なッ!?何をしたのぉッ!?天使ちゃぁんッ!?
その髪色はぁッ!?私の魔法はぁッ!?」
その答えもその後の動きも知っている。
次は、懐からアレを出す、でしょ。
だからルナは、
「くぅ、なら、これでも、ッ!?ブバァッ!?」
知ってるから顎を蹴り飛ばす。
出来る事もルナは視たから。
でも、次の言葉の意味が良く分からないんだけど?
「グァハァッ‼...チ、チートじゃない?その力ぁ!?」
ちーとって何?
他にも気になる言葉を聞いた記憶があるんだけど?
この世界の言葉ではない気がするけど?
ルナの知らない世界がある?
でも、今のルナには必要なさそう。
だけど、ルナの中で異変が起きた。
「...ッ!?何?...何が起こるの?...」
ルナの頭にノイズが走った。
甲高い音、視えない未来...
これは、ユウの歩んだ未来変革?それとも...
「ローザ様ん?その血化粧はどうされたんでぇん?
あららん?お嬢ちゃん外に出たんですかぁ?あちゃ~ぁん」
変態男の陰からルナの知らない男が現れた。
これはルナが視えなかった未来...
「...何しに来たの?ドリトミーぃ?殺されてぇのかぁッ!?
これは全部アンタの失態じゃないのぉッ!?」
変態男は視た事ない口調で喋りだした。
ルナは知らない。視ていない。
何が起こるの?
「いえいぇん、死にたくはありますぇん。
失態は申し訳ないですがぁ、お困りなら、
この子を連れて一度出直しますぇんかぁん?」
知らない男の後ろには青緑色の髪の子が立っていた。
それも、虚ろな表情で。
(...目に光が無い?...何かされてる?...)
「あぁん?そんなガキ何になるってぇのよぉッ!?」
「この子はシロツキの友達、ですのでねぇん?」
知らない男はルナを見てニヤついている。
あの男、イレギュラーみたい。
こんな未来は最善じゃないッ‼
「今後の保険、いりませぇん?」
「...させな、...ッ!?...」
ルナは駆け、男の足を蹴ろうとしたが、
「いけませぇ~ん。
その綺麗な脚は大事、大事ですよぅん?」
逆に男に足を踏みつけられた。
(...この男...ただのイレギュラーじゃない?...)
「さぁさ、ローザ様ぁん。
一度ご帰還くださぁ~ぃん。
私が身をもってお守りしますのでぇん?」
「ふざけんじゃないわッ!目の前にシロツキが、」
「...また死ぬかぁ?...フォフォフォん。」
知らない男の口調が冷たくなった。
あれがあの男の素?
まるで悪魔の様な底冷えする声音...
「チッ、...天使ちゃぁん?今度のゲーム、絶対来てねぇ?
じゃないと、この子、分かってるわよねぇ?
今日は残念だけど、帰るわぁん?
天使ちゃんの鞭、痛くてお姉さん半ベソぉ~ッ。
あ、ゲームは6月6日ね?じゃぁねぇ~ん」
変態男は闇のゲートを作り出し、消えようとしている。
「...まっ...」
追いかけようとするルナの前に男が立ち塞がる。
「いけませんねぇ~ん?アレでも私ぃのお客様んなのでぇん?
帰るまで、は。」
ルナのせいでユウの友達が?
どうしよう、今何も視えない?
この男が邪魔で助けれない?
ルナが考えてる間に変態男は消え去ってしまった。
「では、私ぃも消えますねぇん?
そっちの方が視えるでしょうん?フォフォフォ...」
ルナの事、知ってる?
視える未来の能力も?
あの男...何者?
笑いながら地面に消えていった男。
そして、闇のゲートで消えた変態男とユウの友達。
次第にノイズが消え、未来が視えてくる。
今最善なのは貯めた魔素でこの町を治す事?
それがユウの求める結果に繋がる、みたい。
アイツらを追うのは最善じゃないんだ...
ごめんね?ユウ。
ルナは持てる全ての力を使って魔法を唱えた。
「...月光...『七彩』...【廻生】...」
少女を中心に光は散り、
町は眠りについた。
そしてルナも、その場に倒れた。
んー、二重人格。
時間があったら話数をちょっとまとめたいです。
長すぎっすからね。ただ、休日出勤やら残業やらで時間がなさそうです。
へ、へ、へプシッ‼あ、違う、ヘルプッ‼




