第67話 防戦一方
ルナは変態を圧倒していたが、灼熱の火柱に動きを封じられる。
一方、獣魔召喚により出現した魔物を相手にするカインは...
~カイン~
「グッッ!?」
俺が相手してるバケモン、
頭が2つある猫型の魔物、コイツ、クソ早ぇぞッ!?
つーかッ!侯爵の連中共だと足手まといにしかならねぇから、
戦えるのは俺だけ、かよッ!?
考えながらも、俺は魔物の爪撃を防ぐ。
早いとは言っても、防げない程ではないからな。
だが、防げるとは言っても、余裕がある訳ではない。
守りながらだと攻撃が一切出来ない状況なんだ。
あぁ、クソッ。
どうにかならねぇか!?
「おいッ‼ゴルディッ‼お前らどっか逃げれねぇのかッ!?
このままじゃジリ貧だぞッ!?」
「申し訳ありませんッ!数人が怪我をしておりますッ!
逃げようにも、介抱するものが...
どうか、我らの事は気にせずそこの魔獣を。
覚悟は出来て、」
「馬鹿野郎ッ‼命を簡単に放り投げんなッ‼
生き残る方法を考えろよッ‼」
感情的に怒鳴ってしまったが、
今を生きる希望なんてねぇぞ?
どうする?俺はどう答えを出すべきなんだ?
1対1ならまだどうにか出来そうだが...
このクソ猫後ろの奴らを狙ってやがるしな?
どうにか俺に意識を向けられないか?
俺が自身にどうヘイトを集めようかを考えていると、
嬢ちゃん達の方から灼熱の火柱が上がった。
「なッ!?なんだ、あの魔法!?」
どう考えてもアレはただの『火』魔法では無い。
嬢ちゃんの安否が気になり、その一瞬、気が逸れてしまった。
ふと我に返り、
魔物を見ると既に俺への攻撃モーションに入っていた。
や、ヤベぇッ‼
スキル【栄光の盾】ッ‼
スキル効果により、前方に3枚の盾が出てくる。
だが、盾を発現させたが間に合わず、
「グガッ!?」
魔物の爪撃により吹き飛ばされてしまった。
そのままの勢いで石の壁を突き破り、
どこかの家の中まで飛ばされた。
...クソッ、命賭けてんのになによそ見してんだッ‼
「グハッ‼ゴホッ、ゴホッ...っこらせぇっ、とッ‼」
俺は血を吐きながらも身体を起こした。
身体強化してなかったら死んでたかもな。
それでもアバラ数本持ってかれたみてぇだ。
痛てぇなクソッ‼
ここで死んだフリすりゃ生き残ることは出来るかもしれねぇが、俺はしない。
守らなきゃならないモノがあるからな。
「はぁ、俺の人生、ロクでもねぇよな?
受け入れちまったモンは仕方ない、ってか?ハハハ」
乾いた笑いしか出てこない。
現実は皆平等に厳しい世界なんだ。
(だから嬢ちゃんに惹かれてるのかもしれないな?)
...はぁ。
アイツらもう死んだか?
流石にあんなバケモン相手に出来ねぇよな?
俺の油断で数人の命が...チッ‼
後悔しても、もう遅いよな。
なら、チンタラ隠れてたって仕方ねぇ。
ここは町中だ。人間の住む町なんだ。
あんなバケモン野放しに出来るかよッ‼
少しでも多くの人を救わねぇといけねぇんだッ‼
俺の使命、魂に誓ってな
~とある住宅地通り~
「はぁっ、はぁっ、まだッ、まだッ、追ってくるッ!?」
少女は必死に逃げていた。
相手は豹。
小鳥だと相手が悪いのかもしれない。
「どこだぁー?俺様から逃げ切れると思ってるのかぁー?」
随分と余裕な声で追い詰めてくる。
私だけじゃ、逃げ切れないよッ!?
少女は路地裏の影に隠れて身を震わせていた。
(せっかくアビゲイルさんが助けてくれたのに、
私1人じゃ、何も、出来ないよッ‼)
次第に少女の不安が滴となり頬を伝う形となる。
「その綺麗な瞳ぃん。守らなければいけませぇん。」
(誰ッ!?)
少女の後ろ、路地裏のさらに暗い所からヌラリと、
小太りの男が現れた。
少女には胡散臭そうな男にしか見えない。
だけど、誰かに頼らなければ捕まってしまう。
「私を、私を、匿って貰えませんか?」
男は顔に笑顔を張り付けたまま、返事をしてこない。
数秒は静寂だった。
もしかしたら聞こえなかったのかと思い、
もう一度口を開こうとしたら、男は動き出した。
「わた」
「いいですねぇん。匿いましょぅん?
もうじき表が赤くなりますし、こちらからどうぞぅん?」
(何この人?何この人?ちょっとおかしい?
でも、逃げるにはこの人に手伝って貰わないと...)
少女は言われるがままに案内された。
暗い暗い、闇の中へ...
この章あと5話か6話くらいです。
もしかしたら眠たくて7,8話まで伸びるかも、ですけど。




