表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/108

第60話 勇敢なる者



「お前ら2人だけで俺を倒せるとでも思っているのか?」


 拳を前に出し、戦う気満々の町長が言った。どうやら武器を使わずに戦うみたいだ。だが、町長の身体から黒いオーラが(にじ)み出ている。俺は何度も見た事がある魔力のオーラだ。


「お前、まさか魔族なのか?」


 俺が見たのはこの前のパツール村と、()()()()。あの紫の魔族と同じモノを感じるし、あの()()()()()()の様な力の一端を感じる。威圧感は足りないが、同系統の質だ。第6魔法『闇』の魔力を感じるんだ。


「ギャハッ、ギャハハハハッ‼ 俺が、俺ごときがあの方と同じ種だと? 笑わせるなッ‼ あのお方こそが我らの救世主なのだッ‼ あのお方こそが神ッ‼ 唯一の種なのだッ‼ 人間風情が偉そうになるなッ‼」


 お前も亜人とはいえ人間だろう? 何を言ってるんだ? それよりこの町は既に魔族に乗っ取られているな。このやり口、似ているしな……あの町長の崇拝ぶり、アレは……


()()()、か?」


「ッ!? 何故その神名を知っているッ‼」


 どうやらここは俺にとってもアタリの様だ。あの女の息がかかっている。そして町長の口ぶりから洗脳されている事が分かった。どうにか洗脳を解いてやりたいが、どうすればいい? ぶん殴れば治るか?


 だが、町長だけとは限らない。どこのどいつが洗脳されてるかが分からねぇ。つい今町長の洗脳に気付いたんだ。普通に暮らしていたら分からねぇぞ?


「あのお方の神名を知っているとはただの大使ではないな? 同士か敵か……いや、どちらでも構わない。私の目的の為に死んでもらおうかッ‼」


 町長は俺めがけて突っ込み、大振りに腕を振り下ろしてきた。その動きは大きすぎて避けるには十分すぎる早さだった。

 

「なんだ? そんな大振りで、俺--」


 ズガァンッ‼


「ぅおっ!?」


 町長の拳は地面にめり込んで大きな地割れを起こしていた。その衝撃で地面が揺れた。その一瞬の油断を町長が見逃す筈がなかった。


海仙闘(かいせんとう) 体術スキル『深蒼(しんそう)』ッ‼」


 町長の叫びと共にスキルが発動し、拳が青く光る。その光はどんどん拳に収束されていく。避ける余裕は無いか? どんな攻撃か分からねぇしな


「盾技スキル『皇盾(エンペラー)』ッ‼」


 俺のスキル効果により眼前に大きな盾が発現する。俺の盾技の中でも最高の強度を持つシールドだ。欠点は正面以外は守れない事だが、防げるだろう。


「なかなか頑丈そうな板だなッ‼ だが()()俺には、通用せんぞぉぉッッ‼」


 それは一瞬、一閃だった。


 気付いた時には俺の盾は砕かれ、かろうじで避けた俺の脇を五指が抉った。傷は浅いモノの、どうやら見た目通りの強者らしい。俺も流石に本気を出さないとヤバそうな相手だ。


「だ、大丈夫ですかッ!? エリ、カイン殿ッ‼」


 おいおい、俺の名前間違えんなよ?誰だよエリなんとかさんって?それよりはこいつだろうが。


「か、カイン様ッ‼地下への入り口を見つけましたッ‼」


 なんつータイミングだよ。俺はカイン殿()だっての!だがいいタイミングかもな? もし俺の推測が正しければここにいるだろうよ。俺達の救世主様が、いや、俺達の聖女様が、な。


「フンッ‼ 見つけた所でお前らは全員俺様が消してやるッ‼ 出来るなら俺様から白いガキを救って見せろッ‼ 無理だろうがなッ‼ ギャハ、ギャハハハハッ‼」


 あー、ここにいる訳ね。力で救って見せろって? 馬鹿にすんなよ?

 

「おい、ゴルディ。お前も聖女様を急いでここに連れてこい。それだけで()()()()()()。それまでは俺が相手をしとくわ」


「ハッ‼ 早急にッ‼ 行くぞッ、お前達ッ‼」

「「「ハッ‼ こちらですッ‼」」」


 ゴルディ達に任せてどれくらいで帰ってくるか? 10分くらいか? 30分か? 倒すのは簡単だが、聖女の力を確かめておきたいしな。


「おい、貴様。俺とサシで相手になるとでも思ってるのか?」


「ハッ‼ 本気で言ってんのか? 間違えではないが、意味が違うぞ? ()()()()()()()()()()()()()思ってんのか?」


 俺の本気はそこらの有象無象とは違うぞ?


「第5魔法、『無』……【勇敢なる者】」


 俺の身体を薄く白い膜が覆う。この力を使う時がまた来るとは、な。()()()()()()()時が来たって事なんだよな?


 今度は、今度こそは守って見せるさ。



 俺は目の前の魚人を睨みつけた……




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ