第55話 尋問
「おい、お前ら。白い少女に見覚えがあるか?」
今私の目の前には7人の男どもが縄で縛られて座っている。男どもは全員下を向き、怯えていた。少々やりすぎたか? 顔面青あざだらけだからな。やったのは私なのだが。
エヴリンを救った後、私は縄で縛りながら数発顔面を殴ったんだ。容赦なくエヴリンを蹴っていた報いだ。そして男ども1人ずつエヴリンに謝らせて、今回の件はとりあえずは解決していた。
だが、私の目的の為に尋問しようとしていたんだが……男どもは私の一言一言に肩をビクつかせていた。賊の割にはあまりにもいろいろ雑魚すぎる。やり過ぎたとは思うものの、どうやらハズレみたいだ。
「喋らない口って要らないと思わないか?」
せめて裏の情報だけでも、と思い脅してみた。剣の柄に手を置きながら。
「ッ!?」
「ぇッ!?」
「お、オデ、見たゾゥ。じ、住宅地区で見たゾゥ」
全員顔を青ざめながら絶句していたが、獣人が1人口を開いた。住宅地区? いや、まだちゃんと探してない地区なのだが? どうなんだ? 本当なのか? 私は判断に迷っていたんだが、他の男どもも一斉に喋りだした。
「お、俺も見た!」
「あ、思い出した! 俺も見たわ」
次々に男どもは住宅地区で見たと言い出した。しかし数人がニヤニヤしているのを私は見逃さなかった。この期に及んで言い逃れ、か。
「真実でなければ、1人ずつ、遊んでやろうか?」
私はこんな所で遊んでいる暇はないんだぞ? 腕に着けているモノを見せながら私は剣を抜いた。
「この腕輪のおかげで私は悪を殲滅出来る。意味が分かるか?」
腕輪を見た男どもは明らかに顔色を変えていた。そして1人が口を開いた。
「そういう事かよ。チッ、俺達はその件とは無関係だ。アイツらはたしかに住宅地区、……町長の家にいるだろう」
無関係? それに町長の家だと?
「信じられないなら調べてみろ。聞きたい事は言ってやったぞ? さっさと俺達を開放しろ」
「出来ないな。知ってるなら全て答えろ」
「……言えるのは獣人が6人、奴隷商と繋がっている。それ以上は言えない。俺達が消される。俺達はこの裏通りのただのチンピラだ。アイツらと関わらせないでくれ」
口を開いた男は言いながら頭を下げてきた。それを見て他の6人も頭を下げた。どうやら情報を吐いたこの男がリーダー格みたいだ。獣人6人はたしかに害虫が侯爵から聞いた情報に入っていたな。本当ならこの情報はデカいが……それにしても町長か。この町には何か目に見えぬ闇でもあるのか?
「その情報が真実でなければ、私がお前達を粛正するがいいのか?」
「構わない」
リーダー格の男は私の目を見て言い切った。そのまっすぐの瞳に嘘はないようだ。
「分かった。お前達を開放してやろう」
私は男どもの縄を切ってやった。もし嘘なら騙した事を後悔させるだけだしな。
「もう私の前で悪さをするなよ?」
「チッ! 二度とここに来るんじゃねぇッ‼」
言いながら7人は裏通りの闇へと消えて行った。はぁ。まさしくザコの逃げっぷりだな。
「アビゲイルさん、アビゲイルさん、終わったのかな? 申し訳ないんだけど表通りまで連れて行って欲しいんだけどいいかな? いいかな?」
私の後ろでエヴリンが服を引っ張りながら聞いてきた。
目的地は東の商業地区から西の住宅地区に変わったところだ。急ぎたいところだが、エヴリンはユウの知り合いだしな。
少し遅れるが、エヴリンを行き道ついでに門まで送ってやる方がいいだろう。変な奴がもしエヴリンに何かしたら誰も助けてくれない可能性もあるしな。
「なぁ、エヴリン? 私は今から西の住宅地区に行くのだがついでに南門まで送ろう」
「なぁ、エヴリン? 私は今から西の住宅地区に行くのだがついでに南門まで送ろう。え?」
「大丈夫? 大丈夫? 急いでるんじゃないの? でも、良ければお願いします」
「あぁ、大丈夫だ。一緒に行こうか」
私とエヴリンは手を繋いで歩き出した。
運命の入り口へと向かって。
~南地区 リヴェールの門~
「はあぁん。相変わらずの汚いマ・チ・ねぇ」
男は門から入らずに町の中へと入ってきた。そして、おもむろに腰をクネクネと振りながら歩き出した。
「こぉんな汚い町にどぉんだけぇのモノがあるっていうのよぉん? 期待を外したら許さないわよぉ? ドリトミーくぅん?」
露出の多い奇抜な格好で南門の広場を練り歩く灰色髪の男に人々は唖然としていたのだった。何もない噴水の前に突如として現れたから……




