第46話 お偉いさん
「はは、は。コンニチワー。いい天気デスネー」
今僕がいるのは町の外。町への往来は少ないんだけど、通る人みんなが僕を見てくる。『なんで人間の女の子が1人で町の外にいるんだろう?』的な目で。僕は目が合った人に愛想笑いするしかないんだよねぇ。
だって2人が不審者扱いで捕まったからね。なぜか町の中に連れて行かれちゃったんだ。子供1人で何してんだろって思われるよね? 立ってる事しか出来ないからとりあえず挨拶だけは、ね。
「はぁ」
それに親友のルナもどっか行ってるみたいなんだよね。僕の周りに誰もいなくなっちゃった。なんでこうなっちゃったんだろう?
僕、どうしたらいいんだろう? 頼れる人が誰もいないんだよね。僕だけでどうにかしなきゃいけないんだよね。
とりあえず町に入って2人の事許してもらわなきゃ。今はそれしかないよね?
でも町の入り口には門番っぽい人が2人立ってる。10メートルはありそうな入り口の両脇に立ってるんだ。見る限りだと通る人みんなが何か出して通ってるみたいだけど? 僕何も持ってないんだけど入れるのかな? 入れなくても話だけでも聞いてもらおう。待ってても仕方ないしね。
そう思って僕は門番っぽい人がいる所に行ってみた。
言ったら事情を分かってもらえるかな? さっきの見てたハズだし。大丈夫だよね? 意を決して僕は門番っぽい牛? の人に近付いて話しかけてみた。
「あの、すいません? えと、さっき連れていかれた2人は僕の知り合いなんですけど」
「嬢ちゃん大変だよな。あんなのと一緒で」
「え? いや、そうでもないですよ?」
大変だとは思った事ないんだけどなぁ? アビゲイルさんはお姉ちゃんだし。
(その、最近ちょっと、アレだけどね……)
カインさんは頼れる感じがするし。
(たまに変な目で僕を見てくるんだよね、胸とか……)
「……そうでもないですよ?」
「大変なんだな嬢ちゃん。2回言うなんてよっぽどなんだな?」
「ふぇ?」
「まぁ、いいけどな。悪いけど今日1日は会えないぞ?」
「えっ? 会えないんですか?」
ホントにどうしよう。お金はアビゲイルさんが持ってるし。旅の荷物はカインさんが持ってるし。僕、何も持ってないよ?
「事情があるとは思うが、そもそも嬢ちゃん身分証とかあるのか?」
「え? 持ってないですよ?」
「悪いけど町に入れさせられないぞ? よく分からん奴を町に入れないのが俺の仕事だからな」
「う、そぉ? 入れないの?」
「いや、仮身分証はあるけど字は分かるのか?」
「字は大丈、……ばないかも?」
そういえばこの世界の文字はよく分かんなかった。アビゲイルさんの村で初めて見たけど知らない字だったし。今更だけど言葉が通じるだけでもよかったと思う。
「なんとかしてやりたいんだが、記入してもらわないといけないからなぁ? モゥ」
あ、溜息は牛っぽい。それどころじゃなかったか。2人が帰ってくるまでここで野宿するしかないかも。
「何かお困りですかな? 可愛いお嬢さん?」
「ふぇッ!?」
え? 誰? 僕が門番っぽい人と話していたら後ろから急に声を掛けられた。驚いて振り返ったらそこには優しそうな顔をしたおじさんがいた。見るからに金持ちって感じの60代くらいの人間のおじさんだった。
「モッ!? ゴルディ様ッ!?」
「このお嬢さんは私に任せてもらっていいかな?」
「はッ!」
この人もしかして偉い人だった? ど、どうしよう? 偉い人にどう話したらいいか分かんないよ!?
「ごめんよ? 驚かせたかい?」
「え? いや、大丈夫で、ございます、よ?」
「ふふっ何を困っているのかな?」
「えと、知り合いがカクホされちゃったんだけど、ですけど、僕町に入れなくて。それで、えと--」
「可哀想に。私が便宜を図ってあげましょう」
「ふぇ? 便宜ってなんです、なんでござい、ましょうか?」
「はははっ、素晴らしいほど可愛らしいお嬢さんだ。私がいろいろ手伝ってあげますよ、って事だよ?」
「えっ? ホントですかッ!?」
偉い人が手伝ってくれたら問題ないじゃん。やった、超ラッキーだ。今日の野宿は回避できたかもッ‼ アビゲイルさん達にも会えるかもだし、イイ事あるもんだねッ!
「すまないが、このお嬢さんは私の客人として屋敷に連れて行く。いいかな?」
「はッ! かしこまりました。ゴルディ様。」
「うむ。ありがとう」
わっ、凄いッ! ホントに偉い人だッ‼ みんなこの人にお辞儀してるッ! 一緒にいる僕も鼻が高くなった気がしてきちゃう。これが偉い人なんだぁ、初めて見た。
僕はその偉くなった気分のまま、ゴルディというおじさんに着いていったんだ。




