間話 ユウの戦闘訓練その1 ~青いボールは要注意~
ストーリーとは別に書きたかったサブストーリーです。
本編には直接関係ありません。今のところは。
僕達は港町リヴェールへと向かう道中、歩きながらとある問題を話していた。それは、カインさんの突拍子もない言葉から始まった。
「なぁ? 嬢ちゃんは異常に強ぇよな? レベルいくつなんだ?」
え? 僕? 戦った事一度も無いんだけど? なんで僕が強いって思ってるの?
「はぁ? ユウが戦うなんてありえないだろ? 何言ってるんだ貴様? 脳みそあるのか?」
「あぁ!? 嬢ちゃんが魔ぞ……いや、アレは……(ブツブツ)……」
んぅ? マゾ? カインさんどうしたんだろ? ブツブツ考えてるけど、何が言いたかったんだろう?
「流石に害虫の言葉は難しい。意味が分からん。なんでここに存在してるんだ?」
「ちょッ!? お前、さりげなく存在ごと消そうとすんなよッ!?」
「鬱陶しい……」
ア、アビゲイルさん? 心の声が……
「ゴホンっ。あー、嬢ちゃん?」
「え? あ、はい? なんですか?」
「ちょっと魔物と戦ってみないか?」
「ふぇッ!? ぼ、僕が!?」
突然なに言い出してんのカインさんッ!? 僕は戦えないよッ!? 戦った事ないんだよッ!?
「安心してくれ、戦うのはアレだ」
カインさんが指さして言ったのは、草原に落ちてる水っぽいボールだった。アレと戦うって? あのボールなんなの? 僕、ボールと戦うの?
「まぁ、スライム程度なら……ユウ大丈夫か? 無理せず、私の傍にいるだけでもいいんだぞ?」
「あぁ、別に無理強いはしないからな? ただ、戦えるのか……気になっただけだ」
う、う~ん?
アビゲイルさんに頼りっぱなしってのは今後困るかもしれないし……スライムってあのスライムだよね? HP3くらいのあのスライムだよね? 見た目が違うけど、同じ……だよね?
「多分、大丈夫、だと思うよ? えっと、やってみる!」
僕は出来る。出来る子なんだ! ルナに負けてられないからね!
〈……油断は……禁物だよ?……〉
分かってるって。
「ユウ、私のナイフを貸す。剣は重いからな、怪我しない様に気を付けてくれ」
アビゲイルさんは僕に腰のナイフを手渡してくれた。うん。軽くて便利。刺すってのには抵抗あるけど、スライムだからね? 人には向けれないけど慣れとかなきゃ。
「行ってきますっ!」
僕は意気揚々とスライムへと向かった。
~~~~
「はぁっ、はぁっ、くっ!?」
何分? 何十分経ったんだろ? 全然歯が立たない。
スライムの攻撃は痛くない。強いわけではないんだ。触手? 攻撃は大してダメージを感じないし、むしろヒンヤリとして気持ちいい。
一方、僕の攻撃は当たらない。刺さらないんだ。グネグネ動いて避けちゃうし、刺さったと思ったら無駄に柔らかい弾力に刃が滑る。
ザコと侮るなかれ。ぐぬぬぬぬ……っ
「嬢ちゃん、遊んでないで早くしないと溶かされるぞ?」
「なッ!? 貴様それが狙いでッ!? ……いや、アリか(ボソボソ)」
どうやら2人は見てるだけみたい。それにしてもアビゲイルさんの視線が気になる……どうにも、違う期待を感じてしまうんだけど? 危なくなったら助けてくれるよね、2人とも?
「おいっ! よそ見は禁物だぞっ‼」
「ふぇっ? あっ!?」
不審に思いながら振り向いてたら注意された。
気付いた時にはもう、スライムが何かを飛ばしていた。液体のような何かを。
「ひゃっ!? つべた~っ‼」
「おっ!? おおッ‼」
「害虫は見るなッ‼」
ブスッ
「ッ!? ぐわああああああああああッッッ!?」
カインさんの声が気になるけど、もうよそ見はしない。注意されたんだから集中しないとッ‼
「じ、嬢ちゃん、助けてくれッ‼ 目が、目がぁぁっ‼」
ぐぅぅっ!? カインさん、なんでそんなに僕によそ見をさせようとッ!? ……違う、これは試練なんだっ! きっとここで見たらダメな奴なんだっ!
「た、助けてくれぇっ! 目が、光が見えねぇんだぁっ‼」
「カインさん、その試練は乗り越えてみせますッ‼」
「ち、違うッ‼ 本当に目がッ‼」
「はぁ、はぁ……ユ、ユウ、気にせず戦えッ‼ そのまま、そのままでスライムを倒すんだッ‼」
「はいっ! 僕はこのまま戦いますッ‼」
なんだかスースーするけどさっきのスライムの液体、あれはメンソール的な液だったのかな? えらくスースーするから僕はスライムと対峙しながらも、気になってチラリと身体を確認した。
ん?
あれ?
僕の服……
溶けてない……?
よく見たら、僕の服、ほとんどが溶けてた。胸とか、お尻とか……見えてる。全部見えてる。無駄に肩紐とか残ってるから気になんなかった。なんかズボンは履いてるのにチャック全開、みたいなアレ。
「え? あの、見えて、る? 僕の事、見てる?」
流石に振り向いて2人を見た。
アビゲイルさんは腕を組んでガッツリ見て頷いている。
カインさんは両目を押さえて地面をのたうち回ってる。
あぁ、そう……
僕、裸、見られたわけだ。
戦ってて気付かないうちに見られてたんだ……
「嫌ぁぁぁぁぁッッッ‼」
僕は男だった筈なのに悲鳴がでた。だって、今は、今の身体は女の子だったから……
僕は初戦敗退。1戦0勝1負けというスタートを切った。テクニカル?なノックアウト負けだよ。
最終的にその場に縮こまり、「助けて」と言ったら、嬉々としてアビゲイルさんが助けてくれました。今の僕ではスライムを倒せない様です。だけど、いずれは倒して見せるっ‼ 僕の天敵、打倒スライムだっ!
ちなみに服は魔法で治りました。僕の魔法凄い便利。え? カインさん? もちろん治したよ? 1時間ぐらい後に。
だって、鼻血だしてたんだもん。
流石に僕でも気持ち悪くて引いた。
ホント言うと、スライムにイケナイ事される予定でしたが、主旨がズレるので考慮しました。
書いたらそれはただの規制モノなので。(笑)




