第42話 スキル【月の瞳】
「スキル【月の瞳】ッ」
僕は自身が持つスキルを初めて使ってみた。一応安全のためにアビゲイルさんには後ろに立ってもらって。だけど……
感想。……何も変化がないみたいです。
目からビームどころか、特に変化がないんだよね。目の前の木々は特に変わった所は無いみたいだし。今のところ特別に見えるものがあるわけでもないし。ルナ先生、一体どうすればいいんでしょうか? ガックリと肩を落として僕はアビゲイルさんの方へと振り返った。
……アレ? こんなのあったっけ?
アビゲイルさんの頭の横にゲームウィンドウみたいなのがあった。なにかが書かれている訳ではないみたい。ただの薄い透明な板? っぽいのが宙に浮いてる。
なんだコレ?
取れるかなーって思ってジャンプして取ろうとしたけど触れなかった。なんなんだろうコレ?
「んッ! んッ!」
「んむ? ユウどうしたんだ? 虫でも飛んでいるのか?」
アビゲイルさんは僕が何かを捕まえようとジャンプした様に見えたみたい。いや、間違えではないんだけど。
「なんかアビー、の横に変な透明な板? が浮いてるんだけど。なんだろう、コレ?」
「板? そんなもの見えないぞ? それがユウのスキル効果ではないか?」
「あー! そっかスキルか。それで僕しか見えないって事なのかな?」
「おそらくそうだろう。効果はよく分らんが」
そうだね。意味わかんない。薄い透明な板が出ただけで効果がよく分かんない。
んー? 僕はこの透明な板が何なのかよく見てみた。すると、集中して見てたからか文字が見えてきた。というか浮かび上がってきた?
【アビゲイル・ヴォルフス・ヴァーミリオン 19歳】
………………
………………
「ふむふむ。ヴォルフス・ヴァーミリオン?」
「ん? 私の家名、だが? なんでユウが知ってるんだ? スキルの効果なのか?」
へー、この名前アビゲイルさんの本名なんだ。じゃあ、これに書かれている事は本物って事かな?
「んー、多分? えーと、19歳で、えッ凄い! レベルとステータスも分かるよッ!? あと称号もあるッ‼」
なんかゲームみたいに数字にされてる! 僕にも分かりやすく書かれてあるから凄くありがたい。
「そこまで分かるのか? ステータスなどは神殿でしか分からないと思っていたのだが、そうかアレはスキルで見ただけなのか。そんなレアなスキルなら良かったではないか?」
え? そうなんだ? この世界ってゲームみたいにレベルとかステータスとか普通にあるんだ? ますますファンタジーッ‼ テンション上がるーッ‼ ヒャッホーッ‼ 僕も頑張れば強くなれるかも?
「アビー、レベルが43もあるよッ‼ 凄いねッ‼」
「あぁ、凄いだろう!」
「力よりはスピード型って感じなのかな?」
「んむ。そうだな。ステータスだけで分かるのか?」
「称号はシスコン? とむっつり……」
「ッ!? も、もういいんじゃないか? あまり人の事は見ない方がいいぞッ!?」
あれ? どうしたんだろう? アビゲイルさんが困ってる? そ、そっか。あまり人前で言うのは良くないよね。
「ごめんなさい。スキルがちゃんと使えて嬉しくて……」
「いや、いいんだ。良かったな。つ、使いようによってはかなり便利なスキルだぞ?」
やった。僕にもファンタジーがあったんだ。使い道はよく分かんないけどレアなスキルらしいし楽しみが増えた、かも。
「とりあえず、テントに戻ろうか? 日が暮れて暗くなってきたしな」
アビゲイルさんに言われて周りを見てみたら本当に暗くなってきてた。楽しい時って時間経つの早いよね。
「分かりました。付き合ってくれてあり……ん?」
アビゲイルさんにお礼を言おうとしたんだけど何か青緑っぽい光が見えた。森の奥の方で。少し弱々しいけどハッキリと1つだけ。
「アビー? あっちの方で何か青緑色の光が見えるよ? 帰り道ついでに見てみたいんだけどダメ?」
「んむー。まぁ、いいだろう。私から絶対離れるなよ?」
「ホントッ!? ありがとうアビー!大好き‼」
「あ、あぁ。わ、私に何でも頼ってくれ。私もユウがだ、大好きだぞ」
すっごく顔を赤くして僕のワガママを聞いてくれるお姉ちゃん。うん。大好き。可愛いし。
僕とアビゲイルさんはその青緑の光へ向かって歩き出したんだ。それが僕のスキルの本当の能力だと知らずに、ね。
アビゲイル・ヴォルフス・ヴァーミリオン 19歳
レベル 43
HP 3682 MP 149
力 126 速さ 288
守り 64 賢さ 86
運 35
称号 *********
スキル 剣技 魔法 第1魔法『火』
一応雰囲気だけの数値化。あくまで基準。
冒険者的にはAランクの世界基準です。




