第41話 何が出るかな?
「第3魔法『土』【バレット】ッ」
しーん……
「第4魔法『風』んーと、【ウインド】ッ」
しーん……
えーと、僕は今、太陽が沈みかけてる中、他の魔法が使えるか実験中です。自分の身を守る為に出来る事を探そうと思って。
ちなみに今いる場所は街道の途中にある森なんだ。そこで野宿をする事になって、休憩中なんだけどアビゲイルさんに頼んでいろいろ試してたんだ。
「第5魔法『無』え~と? 【身体強化】?」
しーん……
ぶっちゃけ第5魔法はイメージが湧かないから無理だと思ってたけど。
チキショー、ファンタジーの夢が1つ失われた。魔法を極めて究極な魔法が使いたかったのにぃ。颯爽と現れる偉大な魔法使いに憧れてたのにぃー!
チーン。
僕は四つん這いになって地面を叩いた。泣きながら。
「ユ、ユウ? そんなに落ち込むな? ホ、ホラ、お前の第7魔法は美しい光ではないか! それにユウしか使えない奇跡のような魔法なんだぞ!?」
そ、そうだったね! 僕には使える魔法が1つあるんだった。
「あ、ありがとう、アビー。僕しか使えない魔法なんだよね! 僕にしか出来ない事もあるよねッ‼ 落ち込んでなんかいられないよねッ‼」
僕は立て直した。そうだ、魔法だけじゃない。僕にも神から授かると言われる『スキル』があるかもしれないんだった!
「アビー? 『スキル』ってどうするの?」
「『スキル』は自身が得意とするモノがキッカケとなる。そしてふとした時に感じるんだ。それが頭にイメージとして結びつき、形と成す。」
「ッ!?」
な、なんだって!? 自身が得意とするモノッ!?
僕は倒れるように地に膝をつき、四つん這いの恰好になって地面を叩いた。そして絶望した。
「ど、どうしたんだユウ!? スキルが無くても生きてはいけるんだぞッ!?」
チキショー、またファンタジーの夢が1つ失われた。あのゲームみたいにスキルマスターになりたかったのにぃ。颯爽と現れる偉大な冒険者になろうと思ってたのにぃー。
チーン。
「ユ、ユウ? スキルは得意であれば、いずれ覚えられるかもしれないんだぞ?」
「……僕の得意なモノは、料理とお菓子作りです。あと洗濯」
そう、僕は家庭的なスキルしか覚えれない気がする。そんなんで誰を救えるんだ、ちくしょうめっ。
「う、む。そ、うか。いい嫁になれる、な」
「それ1番聞きたくなかったぁー! うぅ」
ファンタジーな世界に来てまで誰かの嫁とかなりたくないよッ‼ そもそも僕は男だから、その……嫌だ。考えたら何か恥ずかしくなってきた。
「そ、そうだな! ユウに釣り合う男なんていないからな!」
それは僕に魅力が無いという事? それはそれで、なんか悔しいな。あれ? そうでもないのかな?
「と、とりあえず諦めるな! 練習すれば得意になるかもしれんぞッ‼」
「は、はいッ‼ 頑張りますッ‼」
分かんないけどとりあえず頑張ろう。出来れば守るスキルがいいなぁ。攻撃のスキルは誰かを傷つけるから怖いし。魔物でも動物でも殺してしまうよりは守りたい、かなぁ。カインさんにでも聞いてみようかな。
〈……ユウは……スキル使えるよ?……〉
「えッ!? 本当ッ!?」
突然発した僕の声がアビゲイルさんを驚かせたみたい。
「ど、どうしたユウ? もしかして、ルナか?」
その質問に僕は首を縦に振ってルナに聞いてみた。
ルナ? 僕はスキルとか何も感じないんだけど?
〈……ユウは……寝てたから……分からないのかもね……〉
もしかして1週間寝てた時に覚えたって事なのかな?
〈……そう……レベルアップ? ……したよ? ……〉
れ、レベルアップだって? 現実なのにゲームみたいなのがあるんだ?
〈……だから……スキルが解放された……〉
解放? とりあえず覚えたって事?
〈……そう……スキル【月の瞳】……ってやつ……〉
なにそれーッ‼ 超かっこいいんですけどッ!?
〈……目に意識を集中して……スキルを言えば出来るから……〉
ホ、ホントッ!? やっても大丈夫!? 気を失ったりしない?
〈……大丈夫……ルナは出来る子だから……〉
ルナ先生、僕は先生と一緒で良かったです。うぅ。
〈……それはなにより……なんでこれくらいで……泣くの?……〉
だってこのままじゃ家庭的なスキルしか覚えれないかもって、思って。
あれ? 先生? ルナ先生!? 急にルナ先生の存在が感じなくなってしまった。どうしたんだろう? 僕が辺りを見回していたらアビゲイルさんと目が合った。
「どうしたんだ? なにかあったのか?」
アビゲイルさんは心配そうに聞いてくれた。さすがお姉ちゃん。とても優しい。
「えと、ルナ先生が僕には【月の瞳】というスキルがあるって言ってたんだけど急にいなくなって」
「そうか。とりあえずそのスキルを使ってみたらどうだ? 私はそのスキル名は聞いたこと無いから何とも言えん。どんな効果か分からなければ意味が無いしな」
「そうですね。ではやってみましょう!」
なんか、凄い楽しみ。大きな箱のプレゼントを貰ったみたい。それに中身が分からないドキドキ感がたまんない。
目からビーム、とか? フッフッフッ。答えはなんだッ!?
「スキル【月の瞳】ッ」
僕は目に意識を集中させてスキルを使ってみた。
結果、答えは僕向きの能力みたいでした。




