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第38話 幕間 黒髪の少女のゲーム

とある少年と少女の悪だくみのおはなし。

 


「クソがぁッ‼シロツキぃッ、シロツキィッッ‼」



 ドォォォォンッ



 ここは魔大陸、ヴァルヘイムにある深淵の森。その森で全身ボロボロの少年が荒れていた。木を殴り、地を殴り、辺り一面に少年の作った獣道が出来ていた。


「……クフッ……」


「誰だァッ‼」


 少年は声のした方へと魔法を無詠唱で放った。しかしそこには誰もおらず、木をなぎ倒すだけに終わる。


「……負けたんだぁ?……クフフッ……」


「お前はッ!?なんでここにいんだよッ‼」


 少年の目の前には黒髪の少女が笑みを浮かべながらも首を傾げて立っていた。

 

「……どうだったぁ?……可愛かったぁ?……」


「あぁ?テメェみてぇにウザかったよッ‼消えろッ‼」


 そう言い少年はまた魔法を放つが、黒髪の少女には当たらない。

 黒髪の少女は少年の背後に立っていた。


「……貴方じゃぁ……()()()だねぇ?……クフフッ……」


「その顔ッ‼その身体ッ‼見るだけでイラつくんだよォッッ‼」


 少年は目に見えぬ速さで回し蹴りを放つが、やはり当たらない。


「アァッッ‼クソがッ‼テメェは何しに来たんだよッ‼」


「……私のぉ大好きなお姉ちゃんはぁ……(けが)れないのぉ……」


「はぁッ!?何が言いてぇんだテメェはよッ‼」


 少年は未だに黒髪の少女がどこにいるか分からないでいる。


「……穢れを知らないぃ……綺麗な純白ぅ……」


「だからなんだよッ‼自慢するならアイツらに言えばいいだろッ!?」


「……クフッ……私しか触ったらダメなのぉ……」


「俺を消しに来たのか?テメェッ‼」


 少年はまだ姿を現さない黒髪の少女に身構える。


「……簡単だけどぉ……面白くないよねぇ?……クフッ……」


 黒髪の少女は笑みを浮かべながら木の陰から姿を現した。


「……面白ぉい()()()があるのぉ……ヤるぅ?……」


「なんだ?」


 少年は黒髪の少女から目線を外さず、答えを促した。


「……もうすぐ聖女()()()とぉ……遊ぶのぉ……」


「勝手に遊べばいいだろッ‼」


「……いーっぱいぃ……()()()()()ぉ?……クフッ……」


「だから?俺は花を愛でるクソみてぇな趣味はねぇぞッ‼」


 少年は言いながらも少し興味を持っていた。目の前の黒髪の少女が残虐な奴だと知っているからだ。

 

 今の少年は人殺しが楽しい。楽しくて仕方がない。だから、目の前の少女の言う花には興味があった。


「……時期が会えばぁ……お姉ちゃんも来るしぃ?……」


「ッ!?いつだ?そのゲームってのはぁッ‼俺も参加するぞッ‼」


「……クフッ……2か月先?かなぁ?……」


 少年は震えていた。2か月もあれば身体の傷は治る。それだけあれば、鍛えなおしてアイツを殺せる。そういう思いが武者震いとして少年の心を奮い立たせた。


「……残念だけどぉ……灰色もいるからねぇ?……」


「あぁ?なんでアイツもいんだよッ!?」


「……ルールぅ?……じゃなかったぁ?……」


「ちッ!そうかアノ野郎の領域なのか」


 少年は苦虫を嚙み潰したような顔をして思い出した。1番気持ち悪いと感じる男の事を。

 

「……私の考えたゲームだからぁ……一時解除してくれるんだってぇ……クフッ……」


「分かった。じゃあ2か月後に声を掛けろ」


「……いいよぉ?……楽しみだねぇ?……早く会いたいねぇ?……」


「さっさと消えろッ‼お前の顔は見たくねぇっつったろうがッ‼」


「……クフッ……ばいばぁいぃ……」


 黒髪の少女は薄っすらと森の陰へと消えて行った。

 少年は黒髪の少女が消えたのを最後まで見届ける。


「2か月か。くッくっ、待っていろシロツキぃッ‼必ず俺が殺すからなぁッ‼」



 少年の声は深淵の森に響き渡った。黒髪の少女がまだいるとは知らずに。



「……クフッ……()()()()ぅ……クフフフフッ……」



 黒髪の少女の口は月のように笑っていた。




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