第36話 世界の名はラシュドルグ
「さっきは巻き込んで悪かったな。あー、俺はコイツを認めてないんだが、嬢ちゃんはどうなんだ?」
「えッ? 僕?」
急に話を振られてビックリした。僕は別に認めるとかそんなんじゃないんだけど? アビゲイルさんも不安そうに僕を見ている。
「僕とアビーは友達で、義姉弟です。一緒にいたいですよ?」
アビゲイルさんは今にも泣きそうな顔をしていた。僕の言葉に安心したのかもしれない。
「嬢ちゃんがいいなら勝手に着いてきたらいい。俺はお前を認めないけどな」
「お前は嫌いだ。もう認めてもらう必要もない。私はユウと一緒にいる」
アビゲイルさんは僕に抱き着き、カインさんを睨んでいる。お気に入りの人形を取られないようにする女の子みたいに。アビゲイルさんってこんな人だったっけ?
「俺は嬢ちゃんが必要なだけだ。お前に何も求めていない」
「私もお前に興味ない。早く終わらせてどっか行け。消えろ。目障りだ」
「お、ま、え、なぁッ‼ やっぱり着いてくんな! おまえが消えろッ‼」
「断るッ‼ 私はユウの傍にいる!」
なんでこんなに仲が悪いんだろう? 2人とも僕より大人なのになんだか子供っぽい。この雰囲気がなんだか面白くて、
「ふ、フフッ、あははははっ!」
僕は初めてこの世界で笑った。
「ユウッ!? なんで笑ってるんだ?」
「嬢ちゃん笑うトコねぇだろッ!?」
僕はここにずっといたいと思った。この平和な場所に、楽しい場所に。僕を必要と言ってくれた2人の所に。
「平和だ、ねぇ。ププッ」
「ドコがッ!?」
「何がッ!?」
息ぴったりじゃん。2人とも。
あはははは。
~~~~
それから僕達は宿へと戻ってきた。
「はぁ!? 記憶喪失ぅ?」
僕はカインさんに簡単な事情を教えたんだ。この世界の事を知らなすぎる僕の事を不思議に思われない為に。それにスキルや、魔法の事を聞きたっかたし。
カインさんやアビゲイルさんに聞いた話をまとめてみる。
【スキル】とは
スキルはなんでも特異な能力らしい。この世界の神様からの授かりもの。生まれながらに授かった者や、戦いの中で授かる者。場合によっては日常生活の中で授かる者もいるらしい。
種類は数えきれない。どんなスキルがあるか誰にも分からないとか。もしかしたら、僕にもなにかスキルがあるかも。分かんないけど。
【魔法】とは
この世界にある魔法の素、魔素を使い、イメージを具現化する。ただ、誰にでも使える訳じゃない。そのイメージと適合、共調出来なければ具現化しない。逆に適合さえあれば複数の魔法を使えるみたい。その理由までは誰にも分からない。適合の条件さえ誰にも分からない。気付いたら使えていた、というのが現実みたい。ただ、セイレイが関係しているのでは? というのがこの世界の常識らしい。
そして、それが発現した順に属性が付けられた。
【第1魔法】 火
【第2魔法】 水
【第3魔法】 土
【第4魔法】 風
これが今でも一般的に使われる魔法。
【第5魔法】 無
これは属性の無い魔法。補助的な魔法らしい。カインさんが知っているのは身体強化効果の魔法だけらしいけど。
【第6魔法】 闇
これは主に魔族のみが使う魔法。ゲートという移動魔法や、影を操る魔法などがあるらしい。
【第7魔法】 光
それは伝説。使える者は数100年といない。ただ、癒しの光としてだけ伝わっているらしい。
僕が使える魔法。それは僕だけにしか使えない魔法みたい? 伝説なんて言われたら、テンション上がる。だって勇者みたいだし。だって主人公みたいだし。
やったね!
ついでにカインさんがこの世界の事を教えてくれた。
世界の名は【ラシュドルグ】というらしい。ラシュドルグには4つの大陸があり--
人族の地、ミッズガルズは西。
亜人の地、ニダヴェールは南。
魔族の地、ヴァルヘイムは東。
最期に、未開の地は北にある。
今僕達がいる地はニダヴェール。
これから僕達は仲間を増やしつつ、カインさんの故郷があるミッズガルズへと向かうらしい。そして魔族から人々を開放する。
僕は僕で、道中で妹を探すんだ。
それが今からの目的。
やるべき事なんだ。




