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第34話 アビゲイルさんの答え



 ~翌日~



 

 コン、コンッ


 ドアをノックする音が聞こえた。

 誰か来たみたい。


「はい、どうぞ~」


 扉を開けて入ってきたのはアビゲイルさんだ。


「おはようございます。アビゲイルさ、あっ、アビー?」


 昨日アビゲイルさんからアビーって呼んでくれって言われたの忘れてた。僕は慌てて言い直した。そんな僕に優しく微笑んでくれるお姉ちゃん。


「おはよう、ユウ。ちゃんと寝れたか?」


「はい。ちゃんと寝れましたよ?」


「寂しかったらいつでも一緒に寝てやるからな?」


「え、いや? 大丈夫、ですよ?」


 そう、大丈夫。そんなに子供じゃないから。もう10歳だから。それに、横に綺麗なお姉さんがいたら緊張して寝れないよ。この間は疲れてたからすぐ寝れたけど、ね?


「そうか? じゃあ、おはようのハグだな」


 え? ハグ? この世界ではおはようにハグするの? 昨日もこの間もしてないよ?


「ほら? ユウ?」


 アビゲイルさんが腕を広げて待っている。えー、恥ずかしいよっ。僕はそんな習慣ないから、こ、困る。


 モジモジしてる僕を見てアビゲイルさんが溜息を吐いてる。


「仕方ないな、ユウは」


 言いながらも僕にハグしてきた。えっ? いや、ちょっ、胸が、顔に!? ……あぅ。



 

 ガチャッ




「なに? お前らそんな()()な訳? あー、悪かったな。じゃ」


「おい、お前。勝手に女の部屋に入ってくるな。常識無いのか?」


「お、おにいふぁん、まっふぇ!」


 そんな関係というかただの友達? 義理の姉弟? なんだけど。なんか、カインさんの言い方が? なんか違う。なんだろ? とりあえずアビゲイルさん、もう離して? カインさんを注意する前に僕を離して?


 顔が、熱い。圧迫感と恥ずかしさでもう--


「あぅ~」



「ゆ、ユウッ!?」

「じ、嬢ちゃん!?」



 僕は首まで真っ赤になって目を回した。











「あー、ゴホンっ‼」


 カインさんが大きく咳払いした。


 僕は無事にアビゲイルさんの愛の抱擁という名のハグから解放された。嫌いじゃないけど、恥ずかしかった。


「お前らの関係はまぁ、うん。分かった」


 カインさんの言い方はなんか違和感があるけど、まぁ、そんな関係かな? 僕とアビゲイルさんは見た目が違うけど、心は姉弟だよ。隣のアビゲイルさんも腕を組んで頷いている。だから別に文句はないよ。


「否定しないんだな。ま、まぁ、そんな関係もあるよな?」


 カインさんはなんでそんなに顔を赤くしているんだろう?





「とりあえず、本題だ」





 その一言に僕達は顔を引き締めた。アビゲイルさんの答えにカインさんは納得してくれるのかな?



「お前は何でここにいる?」

「何の為に嬢ちゃんといる?」

「何をする為にそこに立ってる?」



 問題は簡単な様に聞こえる。

 

 何でここにいるか? それは記憶喪失と言った僕の面倒を見る為、かな?


 何のために僕といる? それは僕を行きたい街まで連れて行ってくれる為、かな?


 何をする為にそこに立っている? それは僕が困っている時に助けてくれる為、かな?


 

 答えはどれも僕を守る為になると思う。僕にとってはその答えだけで十分なんだけど。凄くありがたいし、守って貰える安心感だけでも嬉しい。


 でもカインさんの聞きたい事はそうじゃないみたい。カインさんが聞きたいのは--




『いざ、その時にお前はそれを()()()()()?』




 そういう視線をアビゲイルさんに向けて答えを待っている。


 ただ言ってるだけ、ではここにいる必要がないんだと思う。ちゃんと覚悟、行動で示さないと評価されないって事だと思う。


 だから何のために、

 何が出来て、

 何をするのか。


 それをする覚悟と責任を聞いているんだと思う。



「私はユウを家族だと、友だと思っている」



 アビゲイルさんが口を開いた。僕は何も言わずにただ、聞く事にする。



「思ってるだけか? 気のせいじゃないのか?」


「心から信頼できる存在だと感じている」


「だったらなんで守らなかった? なんで自分勝手に動いた?」


「それは、まだ、私が未熟だったから、復讐に、走ってしまった」


「そんな奴に何が守れる? 何を任せられる?」


「あぁ、自分でもそう思う。護衛なんて言っておきながら何も出来ていない」


「そうだ、お前は何もしていない。だから俺が代わりに守った」


「すまなかった。私は、自分の言葉に責任など考えていなかった」


「だろうな。分かってたら嬢ちゃんが1週間も寝てなかったんじゃないか?」


「あぁ、全て私が招いた結果だ。だから、私は考えた。答えを探した」


「なんだよ?」


「私はもう家族を、友を絶対に傷つけさせない」


「は? お前はただ言うだけじゃねぇか!」

「違うッ‼ 私は今度こそ必ずユウを守るッ‼ 何があろうと守るッ‼ 復讐なんかどうでもいいッ‼ たとえ義理の妹でも家族の為に、私が出来る全てを使って、私は守るッ‼」


「ハッ! 軽い言葉だな。守る、守るって何も心に響かねぇ」


「だから、……機会をくれ。この言葉がウソではないと証明出来る……機会を」


「まぁ、お前の決意、覚悟は分かったよ。悪くない。……なら、表に出ろ」


「それが、私を認めさせるならいいだろう」



 2人は僕を置いて外に出て行く。どうなるか分からないけど僕は見守る事しか出来ない。



 何もなければいいんだけど。




 

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