第22話 一緒にパツール村へ?
「なぁ、ここら辺って全然魔物いないよな? な? なぁッ?」
まいったなぁ。まだ着いてくるよ。
僕たちが助けてからこの黄色髪のお兄さんがずっと着いてきている。別に礼とかいいのに。なんで着いてくるんだろう?
「なぁ、お前いつまで着いてくる気だ?」
おぉ、アビゲイルさんが言ってくれた。僕と同じ事を考えてたのかな?
「いつまでって? そりゃ、助けてくれたからには礼するまでは……」
「イヤ、いい。気持ちだけ受け取っておこう。ありがとう。気を付けてな」
アビゲイルさんは簡潔に言い、僕の手を取りその場を離れようとしている。
んー、ちょっと可哀想かも? お兄さんなんか困ってる? かも。でも一緒に行く理由が僕たちには無いしなぁ? もしかしたら悪い人かもしれないし。
「あの、お兄さん? なんでそこまで礼がしたいの? 他に何か理由があるの?」
「ちょっ、ユウ!?」
「え? なんで? そりゃ……」
2人の声が重なった。アビゲイルは僕の顔を見て驚いていた。お兄さんは頭を掻いてヘラヘラしてるけど。
「礼というのはまぁ、本当だが。ん~、理由ねー。……ワケありって奴? 悪ぃが俺が教えることに責任が持てねぇ。とりあえずこの先のパツール村に行きたいから一緒にどう?」
ん? 僕たちの行こうとしてた村だ。でもワケありかぁ、凄く気になる。なんだろう?
〈……今は問題ない……それとこの人は大丈夫……〉
ホワッ!? ルナ急すぎてビックリするでしょっ!?
〈……問題ない……ユウなら……〉
なんでッ!? 問題アリアリだよっ‼
〈……フッ……〉
フッ……じゃないよ全くぅ!
僕が空に向かって心で会話していると声がかかる。
「おい? どうしたんだ? 一緒にどうなんだ? なぁ?」
「え? あぁ、いいんじゃないかな? 悪い人ではなさそうだし」
「ちょッ!? ユウ??? こいつはなんか怪し……」
(ルナが大丈夫って言うから多分大丈夫だと思うよ?)
コソコソ
僕はアビゲイルさんに小声で話した。アビゲイルさんはまだ訝しんでいるようだけど。
コソコソ……
(しかし、こいつ多分女好きなただの馬鹿だぞ? いや、もしかしたら野盗の可能性もある。ルナがセイレイだとしても……)
(ん~じゃあ、僕からのお願い。村に着くまででいいから)
(お願いか、では護衛の依頼だとして報酬は?)
報酬? 冒険者だから見返りがないとダメなの? う~ん……
コソコソ……
(じゃあ、僕がご飯作ってあげるとか? けっこう自信あるよ?)
(ユウのご飯か……期待できるのか?)
(これでも小さい時からお母さんと作ってたから腕に自信はあるんだ)
(小さい時からお母さんと? 記憶が戻ったのか?)
(あー、え~と、少し?)
(まぁいいだろう。契約成立だ)
(はい。お願いします)
「おいなんだよ? 2人でコソコソコソコソと! どうなんだ? どっちみち着いてくぞ俺は!」
何でそんなに着いてきたがるんだろう? まぁいっか。パツール村までだしね。
「お兄さん、パツール村までならいいですよ?」
「あぁ、パツール村まではいいだろう。それ以上はない。そして5メートル以内は私達には近づくな。話しかけるな。寂しそうな顔するな。こっちを見るな。前を歩け。フンッ」
アビゲイルさんなんでそこまで? もし僕がお兄さんだったら泣いてるよ? ほら凄い落ち込んでるじゃん。ちょっと可哀想かも? 何もしてないのにね? なんでだろうね? 女好きだからかな? 悪い人じゃないかもって言ったんだけどね?
とりあえず励ましてあげよう。
「お、お兄さん? 頑張って?」
「……おぅ」
そんな事もありながら僕たちはパツール村に何事もなく向かったのであった。
パツール村の予期せぬ事態は知る由もなかったけど。




