第20話 幕間 目覚める破滅の象徴黒月姫
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(……遅いな、まだかな?)
「……ん……ろう……?」
何か聞こえる? だけど何も見えないけど? あれ? さっきまで……?
「本当に……違……か?」
何だろう? 喧嘩してる……?
「もし違ったんなら俺がコイツをヤっちまうぞ?」
ヤっちまう? 何を? もしかして、私に? ……えっ? 近付いてくる!?
誰かが少しずつ近付いてくる気配がする。
私に何をするの? 嫌だ……やだ、やだ、やだ、やだッ! 来ないで、私に近づかないでッ!?だから、もう……
『私に関わらないでッ‼』 「ッグゥェッ!?」
はぁ、はぁ、はぁ……
あれ? 私何て言ったの? あれ?
どこかで何か大きな音がした気がする。それより今は周りがよく見える。冷たい空気を感じるけど、ここは、どこ? 暗いけど、大きな部屋にいるみたい。
私はこんな場所知らない。
私はなんでソファに座ってるの?
私はなんでこんな場所にいるの?
さっきまでデパートにいた筈なのに、どうして?
私は混乱しながらも周囲を確認していた。そこに……
「先ほどはご無礼を。王をお呼びしますのでどうぞそのまま」
暗い部屋の奥から突如男が現れた。
執事服っぽいのを着た胡散臭そうな男が礼をして去っていく。
その男を目で追っていくと部屋の奥の方で何かが倒れているけど、よく見えない。私の周りの地面が何故か隆起しているのと何か関係が?
何が何だかよく分からない。
私は逃げようと思ったんだけど、身体が動かない。私は誘拐されたの? なんだかここは嫌な感じがする。
「優、助けてよ……」
私の小さな声じゃ誰にも届かないのは知っている。だけど困ったとき助けてくれるのはいつも優。それはささやかながら切実な願い。
しかし叶うことのない願いだということは誰にも分からなかった。
ガチャっ
音がした方を見ると誰かが部屋に入ってきたようだ。暗くて見えない。
近付いてきて徐々に姿が分かる。そしてこの人は危険だと本能が伝える。
この人は私を見て訝しんでいる。
「あの頃よりは小さくなったのか? しかしあの禍々しさは感じぬな。どれ……」
この人が手を伸ばしてくるけど私は動けない。
この人の手に私の頭は鷲掴みにされる。
この人の手から何かが流れてくる。
黒い何かが私の身体を蝕む感覚を感じる。
「あッ、嫌ッ、止めてッ‼ アッ……ッ嫌アァァァァァッッッ‼」
……ッ‼
…………
………………クフッ。
この場に月城 希という少女はいなくなった。代わりに狂気に満ちた少女が笑っている。
「そうだ、その顔だ。その狂気。その禍々しい気……久しいなッディアナッ‼」
男はかつての戦乱を思い出し、災厄の名を叫んだ。
「思い出せ、狂い咲け、破滅の象徴黒月姫よッッ‼ ハッハッハッハッ‼」
1章まで見ていただきありがとうございます。
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