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第101話 女の子のお願い



 ギィィィィ


 扉を開いた先には明るい太陽が、新鮮な空気が、静かな水のせせらぎがあった。外に出たんだ、当たり前の事だと思う。でもさっきまでジメジメした所にいたんだよ? ホントに空気が違うよ。


「くぁ~っ! ジメジメしてないっ! 空気が臭くないっ! うるさくないっ! 平和だぁ~」


 僕は太陽の光を浴びながら大きく背伸びをして、気分の高揚を口にした。外に出ただけなのにこんなに嬉しく感じるのはなんでなんだろうね? いや~、光合成してるぅ~。気持ちいいぃ~。


「ユウちゃん見てるとコッチまで嬉しくなるわ。ふふふっ、ホント、平和に感じるわね?」

「聖女様が言うとホントに平和に思えてきます! ただの裏道なのにっ!」


 おぅふ、ただの裏道なのにってそれはちょっと傷付くんですけど? この子ホントは僕の事嫌いなんじゃない? でも笑顔で言ってるし考えすぎなだけ? ……う~ん、気にしないでおこう。


 ん~と? どうしよっか? ルナ先生、僕達はどうしたらいいかな?


〈……その子のお願い……叶えてあげたら?……〉


 いいの? 問題はまだ解決してないんだけど? 僕は出来る事があるならやるつもりなんだけど……じゃあこの子に着いて行こうかな? お願いされたしね?


「レイモンドさん? あの、僕、この子のお願い聞いてあげたいんだけど……いい?」


 僕の言葉にレイモンドさんは少し悩んだ素振りを見せたんだけど--


「分かったわ。ユウちゃんはいろんな人の為に頑張ってるものね? 逆に私達がユウちゃんの自由を奪ったら救われない人もいるかもしれないし? 少なくても十分解決には近付けたわ。気にしなくていいわよ? 病気の原因は断てたはずだし。ユウちゃんの事もっと見てみたいから私も一緒に行くわ」


 優しく微笑んで僕の頭を撫でてくれた。その温もりが嬉しくて、僕も笑顔になる。前の世界にこんなお姉ちゃんがいたら毎日甘えてしまいそうだよ。ノゾミと奪い合いになってそうだけど。


「ほ、本当に私のお願い聞いてくれるのッ!? 聖女様が!? 直々にッ!?」


 女の子は驚いて目をパチクリさせて聞いてきた。そんなに驚かなくてもいいのにね? 僕、聖女なんかじゃないし。


「僕は僕だから聖女だとか関係ないよ? それで? どこに行けばいいの? 何をしたらいいの?」


 僕は素直な気持ちを伝えてお願いとは何かを聞いた。だって無理な事言われても困るし。いざ行って出来ませんとは言いたくないし。


「あのね、私のお家孤児院なの! それで……シスター、私達のお母さんが病気になったんだ。あ、病気と言っても死んじゃうような病気じゃないんだよ? でも、お母さん辛そうにしてるから……出来たら聖女様に治して貰いたいの。苦しい顔をしない様に治して欲しいの……」


 女の子は今にも泣きそうな顔をして僕を見てきた。苦しい顔ってよっぽど辛い思いをしてると思う。それなのにシスターさんは子供達の為に頑張ってる。だからこの子は、僕なら苦しみから助けれると思ってお願いしてきたんだよね? ……うん。間違いじゃないよ。僕なら多分治せるし、治してあげたい。



「早く行こうよ? シスターさんを治そう!」



 僕の言葉に女の子は涙を流し、レイモンドさんは微笑んでいた。


「は、はいっ! 聖女ざまぁっ! ズズッ」


「やっぱ本物は行動力が違うわ。ふふっ」


 僕は本物なんかじゃないつもりだけど、やれる事はやるつもりだよ。見て見ぬフリなんかしたくないから。そうやって助け合って元の世界の様な平和な世界になって欲しいだけなんだ。


 僕は1人心の中で意気込んで女の子へ案内をお願いした。



 僕は出来る事をやるだけなんだ。

 結果がどうなろうと、さ。





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