第2話 見えざる勝利 その2
コンコンとノックの音がする。
「ミアちょっとお邪魔していいかしら」
「いいわよ。どうしたの?」
不安な顔で王妃ハンナが部屋に入ってくる。
「ミア。伝えなければならないことがあるの。マルド要塞が突破されたわ。」
ミアはその言葉を聞いた瞬間、は?という顔をしながらハンナを見つめる。
「それって…どこの国が攻めてきたの?」
「国じゃない…暗黒教よ。奴らが数年ぶりに攻撃してきたわ」
「でも…それっておかしくない?なんでいきなり今攻撃してくるの?よく分からないなぁ」
「とにかく王都アルバルスを守るため全力で防衛しなければならない…ミア。もしかしたら近いうちに王都アルバルスは陥落してしまうかもしれない。その時が来たら…」
母上は何か未来を分かっているように話していた。
「隣国のチェリーランド公国に逃げなさい。あそこは私の親戚がいるわ。あなただけでも逃げて」
「わかった。でもここが陥落するわけないよ。私たちルイス王国は強いのよ❗️」
ルイス王国が負けるわけない。ルイス王国はこれまでも多くの戦争に勝ってきた王国だからだ。 兵力も多いし、兵器も強い。暗黒教になんか負けるわけがない。その時はそう思っていた。
「そうね。我が王国は強いことは分かってるわ。だけど…」
「どうしたの?」
「いいや。なんでもない。おやすみね」
「うん。おやすみなさい」
ハンナは落ち着かない様子でこの部屋を出て行った。
「なんであんなにビクビクしてるんだろ。マルタ要塞が突破されたのは意外だったけど…私たちルイス王国が負けるわけないのに!!」
私は負けるわけがないと自信があった。この日は安心して眠った。
チュン…チュン…
「ふあぁぁぁーよく眠れた。あっそうだ今日はメルスとの約束があるんだったわ」
私は早速準備を整えていつもの通り城を抜け出した。特に今日は兵士が防衛を固めに出陣しているのでいつものより見張りが少ないためあっさりだった。そして王族とバレないようフードを被る。
「さてと。あ、メルス‼︎ 約束通り来てくれたね」
暇そうに座っているメルスに声をかける。
「はぁ…なんか王都が少し騒ぎになってるけどなんかあったのか?噂ではバルカラ帝国と戦争し始めたとか」
どうやらこの街の人たちは暗黒教によるマルド要塞突破の事を知らされていないようだった。
「あーいやー。私もわからない。どこと戦ってるんだろ」
ミアは何も知らないそぶりを見せる。マルタ要塞の事を知っているのは上層部の間だけらしい。
「ったく。大事にならなきゃいいんだけどな。あ。で、今日は何するんだ?」
「いや。特に何もないけど。ほら友達になろうよ」
そうメルスを呼んだの特に何もない。でもずっと城で生活してきて城の外の友達は誰一人いなかった。だからたまたま偶然出会ったメルスなら友達になってくれるだろうと思った。
「なんだよ。そういうことかよ」
メルスは少し微笑みながら言った。
「いや…その…」
「まぁ友達になるのは別にいいぜ。ってか昨日助けてもらったし。お礼を返さないとな」
「お礼なんて別にいいよー。じゃあ改めてよろしくね。メルス」
ミアは右手を出し握手を求める。メルスはおうよろしくなって感じで握手をした。
「さて…何処へ行こうか…そうだ!!この街で一番風景がいいとこ案内してやるよ」
メルスはいい場所を思いついたようだ。しばらく歩き街から少し離れた場所で景色が凄く見える所だった。
「ここだよ。すごく綺麗だろ?ほら城もここから見えるぜ❗️」
「すごく綺麗…こんなところがあったなんて…」
街全体が見える丘の上だった。ミアはとても綺麗で感動する。城もよく見える。
「ところでミアさ。フードいい加減に取れよ。顔見えねぇだろ」
「あ…え…それはちょっと」
昨日から一度もメルスには顔を見せていない。顔をバレては王族の人間だという事がバレる。
ここは上手くやり過ごそうとするが…次の瞬間メルスがフードを取ろうとした。