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ハロウィンパッケージ(ほのぼの)

10月31日、晴れのちくもりのちかぼちゃ


 今日はハロウィンだ。

 もともとはイエス・キリストのふっかつ祭とか、そういうものだったとぼくはきおくしているのだけれど。

 お祭り好きな日本人のことである、多少まちがっていようともどうでもいいのだろう。

 だって、こうみんかんに集まってハロウィンパーティーをしているぼくがどうこう言える立場ではない。


 さらにぼくのカッコは、ねこみみカチューシャというなんともまぬけなカッコ。

 ハロウィンだから、おばけにかそうしようというていあんゆえなのだけど、それって外国のおばけだよね。

 まほう使いとか、フランケンシュタインとか、バンパイアとか。

 でもばけねこは、日本にもいると思うのだけど……でもねこはせかい中にいるから、いいのかな。




「とりーとおあとりっくー!」

「うわ、とっしんしてこないでよ、ていうかまちがってるよ、とりっくおあとりーとだから」

「えー? べつにどっちが先でもいいじゃんかー! それよりおかしよこせよ! いたずらするぞー!」




 お祭りだからか、いつもよりテンションが高いこいつははっきり言ってうざい。

 なんかべたべたさわってくるし。

 やけにきあいの入ったバンパイアのカッコをしたこいつに、ぼくはあきれてためいきをついた。



「ちょっとまって」

「ん」




 ましょうめんからだきついてくるこいつのかたをおして少しきょりをとると、こいつもちょっとおとなしくなる。

 まるでかいぬしにまったと言われた犬のようだ。

 ぼくはうでに下げていたバスケットからこいつが好きな味のキャンディを見つけると、手にとってこいつにさしだした。




「はい、あげる」

「へへっ!さんきゅー!」



 こいつはうけとると同時にキャンディのほうそうをくるくるとほどいて口にほうりこんだ。

 あとで食べるとか、そういうことは考えないのだろうか。

 いな、そういうことを考えないやつだとぼくは知っている、だてに友だちをやっているわけではないからだ。


 そしてこいつは、ときどきうんがわるいらしい。





「みんなー、ケーキ食べるから集まってくださーい」



 先生が号令をかけた。

 するといろんなカッコをしたみんながかんせいをあげてテーブルの方へかけていく。

 ぼくたちも行くべきなのでむろんテーブルへむかった。

 しかし、キャンディを口に入れたばかりのこいつは、すぐにケーキを食べられるはずがない。

 ぷくく、ざまあみろ。




 テーブルについていすにすわると、じゅんばんにケーキがおかれていく。

 大きなテーブルがいくつかあって、ぼくとこいつのえらんだテーブルには、もう一人だれかがすわった。

 大きなカボチャ、ジャック・オ・ランタンをあたまにかぶっている、ちょっとおかしな子だ。


 ああ、ぼくたちのじゅんばんが来た。

 先生がケーキをひとつ、二つおいたところで、なんだかこまったひょうじょうになる。




「あ、あれ? 一個足りないねー……どうしよう」



 どうやらこのカボチャをかぶった子の分のケーキが足りないらしい。

 それならぼくはいらない、と言おうとしたときだった。





「せんせー、おれ今あめなめてるから、おれケーキいらない! こいつにやる!」

「え……? い、いいのよ? 先生の分をあげるから……」

「だめ! せんせーあまいもの大すきだろ! おれいらないからいーの!」

「でも……」

「やる!」




 こいつはとつぜんそんなことを言い出して、自分の前にあったケーキをカボチャの子のまえへぐいとおしやる。

 先生は、さっきよりこまったようすでどうするべきかまよっているようだ。

 こいつ、ケーキすきなくせに。


 しかし、だてにこいつの友だちをやっていないぼくなのである。

 こいつはこういうやつだって、知ってる。





「先生、だいじょうぶです、こいつにはぼくの半分あげるから」

「……わかったわ、二人は優しいのね」



 ぼくまでこんなことを言うとは思っていなかったのか、ついに先生はおれた。

 にっこりほほえんで、ぼくとこいつの頭をなでてからじぶんのせきにもどっていく。




「……ありがと」




 小さいこえが、まむかいからきこえた。




「いいんだよ、こいつ、おひとよしだから」

「おひとよし? ってなんだよ」

「……ほめてるんだよ」

「そーか! ならいいや!」



 うそだけど。



 ぼくは目のまえにいるカボチャの子を見る。

 ところで、こんな子いたっけ、たにんにきょうみのうすいぼくだけど、同きゅう生くらいははあくしてるつもりだ。


 カボチャの子はフォークをもったまま、すこしだけかおを上げた。





「ちょっとだけでも、あそびにきてよかった」

「え?」

「はっぴーはろうぃん」




 それだけ言うと、カボチャの子はたちまち、消えてしまった。



 べつにぼくのあたまがおかしくなったわけじゃない。

 すう、とだんだんうすくなって、ケーキといっしょに消えてしまったんだ。





「……うわー! きえた! え!? なんでだー!?」




 ぼくはしょうじき言って、おどろいた。

 そんな、そんなひかがくてきなことがあるわけない。

 そう思ってたのに。



「あいつおばけだったのか! すげー!」




 ぼ、ぼくは、しんじないんだから。

 おばけなんて、しんじないんだからな!



はっぴーはろうぃん!とささやかれたきがした。

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