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前世を知りたい、なんとなく(コメディ)

ある戦場-記憶


「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」

「……は?」



 俺の隣で、恍惚として軍曹がつぶやいた。

 俺たちがいる場所は、校舎裏にある溝の中。

 この学校が城だったころの名残らしく、堀のようだ、俺たちはもっぱら塹壕に使っているけれど。

 俺は軍曹の言葉を一瞬理解できずに間抜けな声をあげてしまったが、不本意なことに次の瞬間にはこのあほ……間違えた、軍曹の意図を理解してしまった。



 無事に逃げ切ることができたなら、軍曹は告白を決意するのだろう。

 告白と言えば、罪の告白やら色々とあるが、この場合は愛の告白である。

 結婚を前提にお付き合いを申し込むつもりだろう。

 誰にと言えば、俺たちの学校に隣接している、女子高のマドンナにだ。

 無謀だと思うが、俺はあえて口にしない。



「だから……後のことは頼んだぜ、伍長」

「え? どういうことだよ軍曹、お前、生きて告白するつもりなんじゃ……」




 思いがけない軍曹のセリフに、俺は今度こそ軍曹の意図が読めなくて問いかける。

 すると軍曹は困ったような笑顔を浮かべて答えた。




「ほら、ああいうセリフってたいてい一番最初に死ぬ奴が言うだろ? あ、俺言っちゃったって思ってさ」



 なんということだろう、このあほ……じゃない、軍曹はたった今この瞬間に自分が死ぬ運命を受け入れたのだ。

 たった一言の、あんなセリフに運命を決定付けられて、死のうとしている。

 軍曹、お前は殺すには惜しい人物だよ。

 その点、俺は。



「軍曹、逃げろ」

「え? な、何言ってんだよ伍長、逃げるのはお前・・」



 俺は立ち上がり、軍曹に背中を向けた。

 あれ、なんかデジャヴ、俺、軍曹に背中を向けたままじゃいけない気がする。

 そんな気がして、軍曹の方へ向き直ると、俺はこの風景を知っている。

 それから俺は、こんなことを言うのだ。



「軍曹を殺させんのは、悔しい」



 あれっ、ちょっと違ったかな。

 しかし考え直す間もなく、俺の頭に衝撃が走る。

 何か、とても硬いものが俺の頭を直撃したらしい、あれ、頭がぐらぐらして、考えられないや。


 頭が白くなる寸前、軍曹が逃げ出したのが分かった。

 そうだ、逃げ切ってくれ軍曹、そして結婚を前提にしたお付き合いを申し込むんだ。

 あれ? また俺の頭に何かがよぎるぞ、これは、記憶?



『おい! 生き残りがまだいたぞ!』『ええいちょこまかと・・! 手榴弾! 手榴弾だ!』

「逃がすかこの覗き魔!」「今日こそフルボッコにしてやんよ!」



 ああ、ダメだよ軍曹、俺の頭に爆発音がよぎるんだ。

 俺は、実は知っていたんだ、あの時軍曹は、家に帰ることが出来なかったんだって。



『うわああっ! やめろっ! やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』

「いやっ! ご、伍長が救ってくれたこのいのtgyギョアアアアアアアアア!!」



 ダメだよ軍曹、俺たち二人とも、死ぬ運命だったんだ。

 軍曹、俺はもう眠いんだ。

 校長室で……また会おう。


そうして俺は、マブタヲトジタ

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