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犬の心(ほのぼの)

 例の犬語を翻訳する機械をもってしてもできるかどうか


 はぁい、あたしユリコ、トイプードルのメス、一歳よ。

 今はこの男の家に住んでるわ、アイツって昼間は仕事してるから、あたしの役目は家で待つことだけ。

 あたしは何もしないでいいのよ、ただアイツに媚びてたらアイツってばすっごく機嫌をよくするの。

 ほら、今だって、ちょっと甘えた声ですりよってやったら目尻を下げちゃって。

 ふふふ、情けない面、笑っちゃう。


 まあいわゆる? 逆ヒモってやつかしら、あたしって悪いメスだわ。


 前の男は金が尽きたからってあたしを捨てたの。

 金の切れ目が縁の切れ目って言うけど本当ね、でもあたし別にショックなんて受けてないわ。

 だってあたし、あんな奴のこと好きじゃなかったもの、逆ヒモよ。

 段ボールの中で新しい男を値踏みしてたら、コイツと目が合ったの。


 コイツ、金がないくせにあたしを養ってるのよ、本当バカよね。

 あたしのために、自分の食費を切り詰めたりしちゃって、本当にバカだわ。

 あたしは別に、アンタのことなんて逆ヒモとしか思ってないのに。

 ……そうよ、こいつだっていつか金が尽きたと言ってあたしを捨てるに決まってるんだわ。



「なあユリコ、いつかすっげー美味いドッグフード食わしてやっからな」



 何を言ってるのかしらコイツ、そんなことより自分が美味しいもの食べなさいよ。

 知ってるのよ、アンタパン屋でパンの耳貰ってるでしょ、みっともないったらないわ。



「だからさ、それまでずーっと俺ら、一緒にいような? ユリコ、いてくれるよな?」



 ……本当に、何を言ってるのかしら。

 そんなこと言って、どうせあたしのことなんていつか捨てるくせに。


 で、でも、ちょっとくらい、その、甘えた声で返事してあげても、いいんだからねっ。



「クゥン」

「あははは! そっか! ありがとうなユリコ! 大好きだぜー!」



 ……こんな奴、逆ヒモのはずだったのに。



 あたしは、いつの間にか、コイツなしでは生きられなくなっていた。



 ……あたしも、(「ク)アンタが大好きよ(ゥン」)




ヒモから始まる恋もある



「……あのさ、動じないアイツもアイツだけど、変なアフレコやめてくんね!?」

「えー? おもしろかったろ!」

「面白くねえし! しかも何でそんな擦れた感じ!? 1歳だぞ!?」

「だって捨て犬だっていうから」

「しかも大の大人が! 会社員が! 正直言って気持ち悪い!」

「いやーでもさ、犬って頭いいから人間と一緒にいれば寝る食うに困らねえと知ってて一緒にいるらしいぜ?」

「え、マジ? 何その夢を壊す知識」

「でもさ、そんなヒモ的な関係で始まっても、いずれは恋人なり家族なりの絆をつむぐんだよ」

「……ふうん」

「ユリコ擬人化しねえかな……」

「お前の頭は死ね!」



 ――会社員トリオ、ユリコの飼い主の家にて

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