泣いてるのかも(ほのぼの)
もしかしてないてる?
人間様はわたくしたちのことを一週間の果敢無い命だと仰るが、とんでもない。
わたくしたちは人間様の感覚で言うならば五年、十年の月日を土の中で生くるのだ。
そもそも一週間を短いとするのは人間様の感覚。
それをわたくしたちも同じだとして果敢無むのはちと傲慢というものではなかろうか。
それともなにか、人間様はわたくしたちのような自分よりも小さな生き物を果敢無むことで、自らの優位をかみしめていらっしゃるのか。
おお、おお、なんと虚しいことか。
そうでもしないと生きてゆけないとは、なんと悲しいことか。
わたくしたちは人間様を憐れもう、ただ生くるだけでは満足できぬほど進化してしまった人間様を、心より憐れまする。
わたくしたちはただ土の中で生まれ、育ち、最後に生殖を為す、それだけの運命に疑問を感じたことはない。
しかし人間様、あなたはただ生くるだけのそれに疑問を感じてしまった。
それゆえわたくしたちと比較し、ご自分の生をかみしめていらっしゃる。
いえ、いえ、それでよいのだ。
退化などたやすいこと、今は存分に進化なされよ。
いえ、わたくしなどに言われても、人間様には屈辱かもしれませぬ。
同じ一週間の命ならば、蛍に言われたほうが気分もよろしかっただろう。
ここに、謝罪の意を示しまする。
――蝉ごときが出過ぎた真似をしまして。
「……お前さあ、もしかしてなんか悩んでる?」
「うおあっ!? い、いきなり背後からなんだよ! びっくりするじゃん!」
「いや、また一人でバカなアフレコやってると思ったらなんか内容重いから」
「あ、いや別に! ぐーぜん重い内容になっちゃっただけで、フィクションだから!」
「本当に?」
「……ほ、本当だって」
「本当に?」
「……ほ、ほんと……」
「本当に?」
「……ほんと、じゃ……、ない……」
「おーい! パン屋さんの限定プリンみっつゲットしたよー!」
「今夜アイツも交ぜて三人で話そうぜ」
「……うん、俺、お前好き」
「はいはい、俺も」
――会社員トリオ、ある日のお昼休みにて




