出来た子供は多分スイカ(ほのぼの)
「花屋の娘」と書いて「めしべ」と読む
おしべは花屋の娘に恋をしました。
恋をしたおしべの頬はほんのりと朱に染まります。恋をしたおしべは道の真ん中で立ち止まって花屋の娘を見つめているので、通行人の邪魔になりました。けれども仕方がありません。おしべは恋をしたのですから。
恋の力は偉大です。
ついにおしべは怖いおじさんに邪魔だと怒鳴られてしまいました。おしべは慌てて謝り、その場を立ち去りました。けれども不思議なのです。おしべの心にはもう怖いおじさんのことなど微塵もありません。心を占めているのは花屋の娘の可愛らしい笑顔です。花屋の娘の推定身長です。花屋の娘の推定スリーサイズです。ここまでくるともはやおしべは変態です。しかしおしべの名誉のために一応言っときますが、おしべは変態ではありません。多分。
恋をしたおしべは毎日花屋に通います。雨の日も、風の日も、晴れた日も、曇りの日も、花屋の定休日にさえおしべは店の前まで足しげく通います。ちょっと気持ち悪いです。しかし花屋の娘は寛大な心を持っていたので、毎日現れるおしべに優しく接してくれました。毎日花を買うほどの金銭的余裕はおしべにはありません、二週間に一回、おしべは花を買いました。
花屋の娘と出会って三ヵ月後、おしべはついに決意します。給料三ヶ月分の花束を購入し、おしべは花屋の娘に告げました。
「俺の! め、めめめめめめ……め、め、め、め、め、めし、……めしべになってください!」
意味がよくわかりませんが、寛大な心を持っていた花屋の娘は「はい」と答えました。ええ、その結果が今目の前の状況なのですから、ね。
本当よく出来ためしべですよ。
「こんなおしべにはもったいないですよね、そう思う人は拍手!」
「ちょ、こんなとか言うな! ていうかお前は祝福してんの!? 妬んでんの!? どっち!?」
「両方!」
「タチ悪い! ああ! お前に結婚式の祝辞とか頼むんじゃなかった!」
「何言ってんだよ俺以外に頼める奴いないくせに」
「俺が友達いないみたいに言うな! お前帰れよ!」
「あーそんなこと言っちゃうんだ! 言っちゃうんだ! そんなこと言っちゃうんだったらお前が昔レイヤーでピーでピーしてピーーー@wせdrftgyふじこlpだったこと言っちゃうぞ!」
「もう言ってる! わかった! わかったから死んでくれ!」
「じゃあお口直しにユリコが一曲うたいまー」
「お前も黙って!」
――会社員トリオ、元コスプレイヤーのコスプレ仲間の結婚式にて




