Episode:0 プロローグ
誤字、脱字、感想などお待ちしています。
20xx年『大富豪』は日本の国民的な競技と化している。進学にも就職にも大富豪での腕が問われるレベルと言っても、過言ではない社会。大富豪が特別視されるのには、勿論ながら理由がある。
1945年太平洋戦争終結。民間人も含め300万人以上に昇る犠牲者を経て、大日本帝国は敗戦国と呼ばれ、連合国の占領下に陥る。戦後の日本は戦地からの引き揚げ者、失業者、戦争孤児などで溢れかえっていた。そんな中、配給制度の形骸化に伴い、物資や食料の不足を補う形で全国に形成されたのが闇市である。ただし、非合法である闇市での商品は法外な値段で取引される。とてもではないが、戦後の国民が賄いきれる額ではない。
……そんな環境の中で広まったのが、賭け事である。金、食料、物資と生活必需品が商品となるのだから国民たちも文字通りに生活が懸かっている為、真剣である。そして、色々な賭け事が生まれた。大富豪もその一つだ。
最初は数多の種類のギャンブルが存在したが、最後には一つに絞られた。
それが、『大富豪』である。
このどん底から上り詰める向上心が豊富なのか、国民性からかは不明だが、日本での賭け事の定番が『大富豪』と定着したのだった。
政府は闇市や賭け事を必要悪と認め、暗黙の了解としていた。そんな暗黒時代を生き残った者たちが社会を形成していく国民のほとんど『大富豪』によって生き永らえた者達であり、大富豪に対する想いも大きい。そんな下地があるお陰で『大富豪』は日本の一部と言っても過言ではない。
そして、時は流れて20xx年には競馬、競輪、競艇、パチンコ、スロットの中で一番輝かしいのが、大富豪である。そして、日本でギャンブラーという言葉が指し示す意味は『大富豪』のプロという事である。
『大富豪』での賭け事のみは義務教育を修了さえすれば、18歳未満でも許される。