面倒くさい嘘をついた日
「嘘をつくとは難儀よの……」
夜、ノエル達が帰ったフラワードに、疲れた様子の老人が、ふぅ。とため息をついて、家から少し離れた花畑にやって来た
「いやはや、楽しそうにしていたじゃないですか」
明るく話しかけてくるその声に、不満そうな老人
「なぜわざわざ嘘をついてまで、あの子達にも隠すのかね」
「さぁ?何か企んでいるのではないですかね?」
月夜の中、花畑を見ながら二人で会話が弾む
「あの子達も大きくなって……早く会えると良いな」
クリルとメイナを思い出して、懐かしむ老人と隣で微笑む人。弾んでいた会話が止まり、二人の周りに咲く花の揺れる音が聞こえてくる
「ときに村長……」
再び話しかけたとき、老人が笑いながら手を横に振る
「そう呼ぶな。未だフラワードの村長はお主だ。年寄りにはもう辛い……」
「うーん。また村長になるのはカナメが嫌がると思うので……」
老人の話に困ったように答えていると、ふふっと今度は老人が微笑む
「そうか、そうか。カナメがそういうなら仕方ないな」
「ところで、村の人々はどうですか?」
もうすぐで午前になる時間。フラワードの人達は寝ているのか、所々に灯りはあれど、人々の姿はあまり見当たらない
「変わりないよ。この土地の地形や地質、魔力諸々も問題ないようだ。また素敵な村になるとは思うがな」
花畑を見ながら嬉しそうな老人と
「……それはそれは、また大変な事になりそうですね」
その話にふぅ。とため息つき不安そうな顔で聞いていると
「えー?楽しくなるの間違いでしょう」
二人に話しかけてきた声に、二人が振り向くと笑顔で後ろに座っていた。その二人の座っている間に無理矢理割って入ろうとする
「アゼルか。久しいな」
少し横に寄りながら久々の再会に懐かしむ老人
「お久しぶりですね。カナタ村長さん、ノエルは元気でしたか?」
ニコニコで話しながら、やっと座れて嬉しそうな様子で二人で会話を楽しむ
「それでアゼルよ。進み具合はどうなのかね?」
村長と呼ばれたその人に、聞かれて不敵に微笑む。そして、ふわりと花畑の方へ、風に飛ばされた花びらと共に空に舞う
「いい感じですよ。もうすぐみんなに会えそうですよ」




