不安な仕事と再訪問
そして翌日の朝、本部の玄関にみんな集まり、フラワードへ行く準備をしていた
「では、行こうか」
バルバを先頭にノエルとクリル、ダングがフラワードへ向かう
「いってらっしゃーい」
本部に残るリエルがノエルに手を振っている
「お兄ちゃん……」
メイナはリーリルを抱きしめ、クリルを心配そうに見送る
「大丈夫。ちゃんと帰ってくるから」
リーリルの頭を撫でて微笑むクリル。小さく頷き、リーリルで顔を隠しながら、カリアの後ろに隠れてしまう
「夕方までには帰ってくる予定だ。それまでは、事件も何も起こさないようにな」
ちらりとカノンを意識しながら注意する。バルバの目線に気づいて、カノンがちょっとムッとしている
「はいはい。分かっていますよ」
ふぅ。ため息ついて不安そうに本部を後にするバルバとダングをよそに、上機嫌に見送るカノン。その様子を同じく不安そうに見ているノエル達
「さてと……」
ノエル達の姿が見えなくなったのを確認すると、そそくさと出掛ける準備を始めだした
「じゃあ、僕は出掛けるから。カリア、後はよろしくね」
満面の笑みでカリアに頼みこむ。その様子をカリアとリエルが、不安そうに見ている
「……どこに行くの?」
こちらも不安そうにしているメイナ
「お仕事だよ。バルバ達が帰ってくるまでには戻ってくるよ」
全員の不安な気分も気にせず、あっという間に出掛けていった。本部に残る三人は、ご機嫌なカノンの後ろ姿を見送りながら、リエルとメイナがポツリ呟く
「すごい嫌な予感するね……」
「ねー……」
カノンが出掛けて数時間後、フラワードに着いた。ノエル達。前に来た時と同じように、綺麗に花があちらこちらに咲いている
「クリル、大丈夫?」
気持ちが落ち着かなくなってきたのか、段々とうつむき出してきたクリル。倒れないように、ノエルが側を離れずに、支えながら村へと向かっていく
「今日は話しが聞ければ良いがなぁ……」
バルバが、そう呟いた時
「お待ちしていました……」
フラワードへの道の途中、前に会った老人が一人、ノエル達が来るのを待っていたかのように、道の真ん中で立っていた
「クリルか、前は失礼したな。申し訳ない」
少し頭を下げ謝るその老人の姿を、ノエルの後ろにいたクリルは何となく顔を背け、見ないふり
「素敵だろう?この花畑。この姿がみな忘れられなくてね。フラワードに帰ってきたんだ。君は覚えていないだろうし、忘れたいだろうがな」
そんなクリルを見て、思い出に浸る老人。四人もしばらく、時間を忘れ道端に咲く花や木々に見とれていた
「ときに、その子は?」
ずっとクリルの前に立って守るように動いていた少年を、不思議そうに老人が指を指す
「僕は、ノエル・ライムといいます。父はアゼル・ライムといいます」
「……なんと」
ノエルが自己紹介をすると、驚く老人。そうかと思えば不敵に微笑む
「そうか、そうか。それは素敵だ」
くるりと体の向きを変え、一人先に村の方へと歩いていく
「アゼルの子よ、歓迎しよう。付いて来るがよい」




