嬉しくても、哀しいから
「どうする?」
「どうするもなにも行かなきゃねぇ……あっ、名前聞くの忘れちゃった」
残されたカノン達、さっきまでいた女性が走り出した方向を眺め、どうするか悩んでいる。その隣では不安でカリアに隠れて動かないメイナと、同じく動けないクリル
「二人とも大丈夫?」
「……ああ」
ノエルが声をかけて、少しずつ気持ちが落ち着いてたクリル。まだ体は動けないまま
「ここで待っているかい?」
さすがに心配したカノンが、クリルに待つように諭しても、何も言わずノエルに支えられながら、ゆっくりと一歩踏み出す。メイナも続けと歩き出す
「……やっぱり強い子達だね」
「いた!ほら!」
フラワードに着いてすぐ、先程の女性が大声で村人を呼ぶ。我先にとこちらへ向かう人々に、さすがのカノンも怖じ気づく
「クリル!メイナ!」
「元気だった?」
「会えてよかった!」
二人の回りに集まる人々。知らない人達が自分の名前を呼んでいるこの状態に、二人がパニックになっていく
「……来ないで!」
パニックになったメイナが叫ぶ。その声で騒がしかった村人達も静かになる
「カリア、メイナちゃんとリエルちゃんと一緒に、村の入り口の所で待ってて。すぐ行く」
「分かりました……」
カノンの指示にパニックのままのメイナをリエルと共に、来た道をゆっくりと戻っていく
「クリル君、大丈夫かい?一緒に戻る?」
クリルも焦りからか、大量の汗をかいてノエルに支えられていた。ゆっくり首を横にふり、どうにかカノンの質問にも答える
「すみませんが、今日は境界線本部の調査として来ているので、二人には……」
クリルと村人達の間に入り、落ち着くように諭すが、本部と聞いた数人が急に怪訝な表情を浮かべている
「境界線本部……」
「なにが本部だっ!あの時……」
あちらこちらから、怒号に近い声が響く
「おい!やめろ!」
誰かが話を止める。また静かになったフラワード。そんな重い空気の中、クリルが倒れてしまいそうになっていた
「ダング、二人と共にカリアの所へ……」
バルバがダングに指示をだす
「わかった」
と、ノエルと共にクリルを支え、カリアの所へと向かう。
黙ったまま帰る姿を見届けているフラワードの人々に、カノンが少し怒ったような声をだし、人々に話しかけていく
「申し訳ありませんが、二人への話は私、境界線本部の隊員、カノンとバルバが聞きます。宜しいですか?」




