うたが、きこえる
「おい!これが、マリヤの夢か!本当に願っていたのか!」
「……ただの失敗さ。僕の実力不足なだけ」
怒鳴るカノンと、嘆くアゼル。リックは、本部の外を見渡してフラワードや学園を確認している
「失敗って……リエルちゃんもメイナちゃんだって、苦しんでいるんだぞ!何とかしろ!」
ダングやバルバも、アゼルに責めよっていく。だかその間にも、グングンと巨大化するリーリル。もうすぐメイナの身長を越えようかとしたとき、リエルがリーリルの足を掴んだ。ユラユラと上下に動きだすと、巨大化が止まった
「リエルちゃんは、魔力の調整が得意だから、リーリルの魔力を押さえられてる……。けど、これ以上魔力が増えたら……」
リエルを抱きしめていたカリア。苦しむリエルの隣で、メイナも苦しみ始め、慌てて二人を抱きしめる。リエルの魔力も虚しく、リーリルの巨大化がゆっくりとまた始まっていく
「リエル……」
まだ、魔力の反動の影響がないクリルとノエル。ただ、見守る事しかできない事にクリルが段々と苛立ってきている
「お母さん……助けて……」
リエルのか細い声に答えるように、懐かしい声が聞こえてくる。懐かしい声は歌声になって微かに聞こえてくる
「うたが、きこえる」
「え?うた?」
「なにも聞こえないけど……」
ノエルやカリアには聞こえない歌声。でも、リエルには聞こえる歌声に、少し顔を上げカリアを見つめる
「聞こえる。カリアさん、私、このうた知ってる」
「私も聞こえる。このうたは……」
少しずつ大きくなる歌声。メイナも聞こえてきたのか、顔を上げ、キョロキョロと辺りを見渡している
「うた?それに、この声は……」
カリアやノエル達にも聞こえてくる歌声。カノンも気づき、はっきり聞こえてくるうたに、バルバとダングが、辺りを見渡す
「これは、マリヤのうた!」
カノンが驚き叫ぶと、アゼルが空に向かって微笑む。聞こえてきたのは、マリヤがいつも歌っていたうた。それは、ノエルとリエルの子守唄でもある懐かしく愛しい歌声が、どこからか響き渡る
「マリヤ……待っていてくれたのか。また君の歌声を聞けるなんて……」
「……まて、アゼル」
屋上の端の方へと歩き出すアゼルを止めるリック。マリヤの歌声が更に大きくなっていくにつれ、ノエルとクリルが苦しみだした。カリアがノエル達も支えていると、再びバタバタと足音をたてて、本部から隊員が屋上へとやって来た
「カノン隊長!うたが世界中から鳴り響いています!この、うたが聞こえてから、魔力の増加が加速しているそうです!このままでは世界が……」




