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おやすみ、勇人。ゆっくり休みなさいな

「あたしが修行している間に、そんな楽しいことをしていたのかよ」

 鶏ささみの唐揚げをむしゃむしゃと勢い良く平らげながら、りんねは言った。

「混ぜてよ」

「確かに、りんねがいたら心強かったかもな」

 僕もりんねに負けじと唐揚げをおかずにご飯を頬張った。

「合気道が使えるりんねが一緒にいたら、犯人に怯えることはないわけだし」

「でっしょ。あたしと一緒にいると便利だよ」

「そうだな。頼りにしている」

 家に帰った僕たちを待っていたのは、りんねの姿だった。夏休みになってからのここ数日姿が見えないと思っていたら合気道の合宿で不在だったのだそうだ。顔を合わせた僕たちがひどく疲れているのを見たからか、りんねが提案してきたのは唐揚げパーティだった。

「ほら、エヴァもどんどん食べて?」

「食べているわ」

 エヴァは微笑みんで、唐揚げにかぶりつく。

「りんねって、料理が巧いのね。今度、じっくり教えて貰えるかしら? 料理のバリエーションを増やしたいの」

「もちろん。あたしにできることなら」

「唐揚げの味付けとか、絶妙だわ」

「でしょ。あたし、料理は結構自信あるんだけど、この唐揚げは自信あるんだ」

「ささみの唐揚げが好きなの? りんね」

「これは、うちの家では定番の唐揚げなんだよね」

「ほら、りんねの家はスポーツ一家だからね。ささみ肉を使うことが多いんじゃないの」

「ナルホド」

 感心した様子で、エヴァは呟いた。

「唐揚げって胸肉かもも肉で作るイメージだったけど、こういうのもあるのね」

「色々教えてあげる」

 会話をしながらばくばくと唐揚げを食べ進める。

 ふう、と一息ついた時には、既に皿いっぱいに作った唐揚げが空になっていた。

「りんね。君が作る唐揚げは本当に美味いね」

「ありがと。お世辞でも嬉しいよ」

 まんざらでもなさそうに、りんねは答える。

「疲れが癒されるような気持よ、りんね」

「エヴァもありがとう。こちらこそ、二人とも手伝ってくれてありがとうね」

 いうなり、りんねはソファにごろりと転がった。

「食べてすぐ寝ると太るぞ」

「別に良いよ。スタイルは自信あるから」

 りんねは手を伸ばして自分のシャツをめくりあげ、腹部を露出してみせた。くびれた腹部に、うっすらと腹筋が浮き上がっているのが見える。

「良いよ、見せなくて」

「勇人も一緒に身体鍛えようぜ」

「うーん……」

「お?」

 僕が口ごもると、興味を示した様子でりんねは身体を起こした。

「珍しいじゃん。いつもすぐ断るのに、勇人」

「うん、まあ、ちょっとな」

 今まで即座に断っていたりんねからの誘いをすぐに断らなかったのは、少しでも身体を鍛えておいたほうが有事に役立つかも、と考えたからだ。今多少鍛えたからと言って劇的な変化が望めるわけではないが、後悔をしないためにはその少しの積み重ねをしておくべきなのかも。

「お風呂、貰うわね」

 会話が途切れたからか、エヴァが立ち上がって着替えを手に風呂へと向かっていった。

それを見届けてから、僕は

「なあ、りんね」

 と話しかけた。

「なに? 勇人」

「気を使わせてしまったな」

「ん。いーよ。勇人、疲れてたでしょ」

「まあね……」

 僕はソファにもたれかかった。りんねの姿を見て、一緒に食事をして、一気に疲れが出た。気が抜けたのかもしれない。

 唐揚げは僕の大好物だった。

 りんねは、僕の疲れを見抜いた上で、唐揚げパーティを提案してきたのだ。

「あたしがいない間に、二人がそんな大冒険をしていたなんてな」

「声かけたかったんだけど、まあ、色々グレーゾーンに触れる話だったからさ」

 ルナと共に行った冒険は、彼女が一緒だったからそんなに気後れすることなく行えていたが、冷静に考えてあれは違法行為だっただろう。いくらルナが警察官で名探偵だからといって、一般人に現場を見せるのは流石に権限を越えている。

「あたしも見たかったな~大豆生田先生の仕事場」

「見てもしょうがないと思うけど」

「それでも見たいの!」

「そっか。次の時は誘うよ」

「次、あるの?」

「ない」

 僕は即答した。

「結局、危険が大きいってことは捜査はやめた」

「そう」

「残念か?」

「うーん、いや、どうだろ。そうでもない」

 ソファの上で、りんねはクッションに顔をうずめる。

「危ないことをしないでくれるならそっちのほうがいいかな」

「そうか」

「ね、勇人」

「なんだ? りんね」

「夏休みさ、暇な時間があったら一緒に遊びに行こうぜ?」

「良いよ……」

 答えながら、僕は自分の瞼が下がってくるのを感じてきた。

「ごめん、眠い……」

「ん。良いよ、おやすみ、勇人。ゆっくり休みなさいな」

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