真相はまだわからないわ、ユート
「次だ」
星屑高校の校舎を出るなり、ルナが言った。
「今、何時だ?」
「もうすぐ十七時ですね」
エヴァが腕時計を見もせずに言った。
「十七時か……」
太陽の角度を見ながら、ルナは呟いた。
「今から東京に出ると、何時くらいに戻れるかな」
ルナは携帯電話を取り出して、素早くタップした。
「どこにかけたんですか?」
しかし、僕の問いかけに答えるよりも先に、電話が繋がったようだった。
「水仙社さんの電話番号でよろしいでしょうか。茨城県警の冷泉と申します。はい。『永劫エストック』の担当者の方いらっしゃいますか? ええ、はい。大豆生田さん殺害事件の件で、伺いたいことがありまして。ええ、はい。待ちます」
呼び出している間に、ルナは笑顔をこちらに見せた。
「水仙社? ですか?」
水仙社というと、大豆生田が連載してた『永劫エストック』を掲載していた雑誌、マンドリンを出版している会社だ。
大豆生田御門の人生は『永劫エストック』なしには語れない。故に話を聞く価値があるのはわかるが、今から東京まで向かうのか?
「出版社に話を伺おうと思って」
「なるほど。順調ね、ルナ」
「わかる? エヴァ」
お互いに通じるところがあったのか、エヴァとルナは笑顔で視線を交わらせた。
「え、何、その感じ」
僕独りだけが、状況を把握できていない。
「今までのやりとりの中で、真相がわかったんですか?」
「真相はまだわからないわ、ユート」
「犯人はまだわからないよ、ユート」
「でも、殺害動機の目星はわかったかも」
「だから、今からその裏をとりに出版社に行くのさ」
「殺害動機さえ確定すれば、犯人も限られるわ」
エヴァとルナが交互に言った。
「いや、そんな一気に言われても……ええと、ちょっと待って、整理させてくれ」
僕は両手を上げて降参を示して、考え込んだ。
「出版社に行くってことは、殺人事件は仕事に関係してるってことか?」
「僕はそう考えているね」
「私はそう思っているわ」
そう言われても、全くヴィジョンが浮かばない。
「そんなに考え込まなくてもいいわ、ユート。今はまだ未確定だから。私たちの推理だって、まだ推測でしかない。的外れだったという可能性があるんだし。今から裏を取りにいくのよ」
そんなやりとりをしていると、電話が再び繋がったようだ。
「はい。茨城県警の冷泉ルナと申します。担当者の方ですか。はい。はい。わかりました。では、今から伺います。八時くらいになるんじゃないかと思います。大丈夫ですか。よろしくお願いします」
電話を切って、ルナは
「その出版社の人に話を聞きに行きます。いーい?」
「了解しました」
「本社は東京なので、高速道路でここから一時間半くらいかな……ま、二人は車の中で眠っていてくれていいよ」
そう言って、ルナは電話をポケットにしまって、車のほうへと歩き出した。




