第二の被害者の報が入ったのは、このやりとりの十時間後のことだった。
「ごめんなさい、ユート」
冷泉ルナとの会話を終えて、帰り道についてからエヴァはしょげたように言った。
「迷惑をかけてしまったわね」
「謝ることじゃないよ」
僕はどう答えたものか困って、鼻の頭をかいた。
「びっくりはしたけどね」
「でも、先に説明したら、きっと、ユートは止めていたでしょう?」
「まあね」
彼女の言う通り、あらかじめこのプランを聞いていたら、僕は確実に止めていた。
いや、むしろ。
こんなプランを事前に説明されても僕は信じることができなかったように思う。
目には目を、歯には歯を。
名探偵には名探偵とは。
「うまくやったもんだな」
「完全に想定できていたわけじゃないけどね。不確定要素は多かった。私をしても、全てのパターンを読み切っていたわけじゃない」
疲れた、という風にエヴァはかぶりを振った。
「エヴァも疲れるのか?」
「疲れるわ」
半目になってエヴァは言った。
私をなんだと思っているの? と言わんばかりだ。
「もっと説明するのならば、今回の推理でもルナとのやりとりでも通信量と消費電力が莫大だったから、それを疲れたと表現してる。そういうことになるかな」
早く帰りたいな、とエヴァは呟いた。
「充電したいってことか?」
「それもあるけど」
と、歩きながらエヴァは言った。
「休みたい」
「休むって言っても、エヴァは眠る必要がないだろ?」
「ないけれど」
困ったような表情をするエヴァは珍しい。
「でも、家に帰ったほうが落ち着くのよね。考えるパターンが減るから」
「減る?」
「知らない土地では色んなパターンを想定しないといけないのに対して、家の中だと想定するべきパターンが減るでしょ?」
なるほど?
わかるようなわからないような話だが、考えてみると人間も家にいると落ち着くのは、同じような理屈から来るのかもしれない。自宅にいれば知らない相手から話しかけられたり、他人と同席するような事態にはまずならない。
「ともかく」
一瞬、考え込んでいた僕の手をエヴァが引く。
「帰りましょう、ユート。ゆっくり休まないといけないわ」
「ん?」
「明日からは、名探偵、という新しい仕事を始めないといけないのだから」
第二の被害者の報が入ったのは、このやりとりの十時間後のことだった。
被害者の名前は、伊東七夕といった。




