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第一異世界人発見と思った瞬間には色々と終わってしまっていた件について

こんかいは少しだけ長めですん

「えーっとぉ…」


僕、相模晃大は困惑していた。


目の前には四人の男が頭を地面にめり込ませて奇怪なオブジェと化していた。


しかもその内一人はどういう訳か一直線に屹立しており、頭で倒立しているような絵になっている。


首とか痛くないのかな?


…てかごめんなさい。これやったの僕です。いや、僕じゃないんですけど僕のせいっていうかなんていうかぁ…。


というよりこの四人は突然現れたと思ったら手に持った武器を僕に叩きつけようとしたのだ。


その瞬間に、四人は例によって例のごとく吹き飛ばされて地面と融合してしまった訳であるのだが。


というか、先ほど彼らは『魔族は死ね』とか『化け物が』とか言ってたから何かと間違えられていたらしい…のか?


当然僕は人間で、何かと間違えられるようなことはして…して…ないとは言い切れないけどこの動物(?)たちの山は不可抗力であって僕のせいじゃないっていうかね。もうね。


…はい、僕がやりました。認めましょう。


けどだからっていきなり殺しに掛かってくるのはおかしくない?


皆もそう思うよね?今は死体(仮)しかいないけど。


ほうほう、なるほど、みんなもその通りだって!やったね!僕無罪!!


…なわけないだろ…。こんなにめちゃくちゃやっといて無罪になるわけがないって…。


しかし、こんな状況だとどうにも独り言が多くなってしまうしなぁ。


これって僕凄く痛い奴って思われたりしないよね?ね?


…不安だ。


その時、四人の内の一人…なぜか垂直に突き刺さってる男の手がピクリと動いた。


どうやら活きて…いや、生きていたらしい。


男は足をじたばたさせたあと、地面に手をついて頭を力ずくで引っこ抜いた。


「あー、くそっ!!こんなの予想外だぞコンチクショウッ…!!まさかこれほどとはな…!」


泥を払いながら、思い切り僕を睨み付けてくるその人の顔は、フードに隠されてよくわからない。見た感じ、暗殺者のような印象を受ける。


怒りの視線を向ける彼に僕は、


「あ、あの、べつに僕はあなたたちに危害を加えたかったわけではなくですねっ」


普通の声量で説得を試みるものの、頭に血の上った彼には届かない。


「クソ魔族が!!」


そう叫びながら懐から忍者が使うクナイのようなものを抜いて勢いよく飛ばしてきた。


「うわわっ!?」


が、それが僕に突き立ち、触れた瞬間。明後日の方向に弾かれ消えた。


…グシャグシャの鉄屑になりながら。


それをみた暗殺者のような男は、頭をグシャグシャと掻き毟る。


「どぉおおなっていやがる!!貫通の魔術式をいくつも上乗せしてんのにテメェの強化魔術がその上を行っているんだよ!!マジで狂ってやがる!!おぉい!テメェらも起きやがれ!!いつまで寝てんだ!!」


手早く埋もれていた一人一人を引っこ抜き、一発ずつぶっ叩いて起こしていく


「「「ハッ!!俺たちは一体なにを!?」」」


「お笑いしてんじゃねぇよこのクソボケ共!?敵の前だってこと忘れてんじゃねえよ!!」


…僕は一体何を見せられているのだろうか。


表情がどんどん死んでいくのが分かる。


「アギラ!!転移結晶!!全員纏まれ!!」


暗殺者のような格好をした男が叫ぶと、青髪の青年が懐から手のひら大の結晶を取り出した。


その結晶から眩い光が漏れだし始め、段々と強まっていく。


そして暗殺者のような男が、


「よく聞けクソ野郎!!てめえが俺たちをなぜ殺さなかったのかは知らねえが今に見ていろ!!絶対に後悔させてやる!!俺の名前はスケアクロウ!!『血塗れの案山子』、スケアクロウだ!!よく覚えておけ!!俺が、俺たちが!いつかお前を殺してやる!!その時まで待っているがいい!!!!」


そう叫んだ瞬間、一段と強い光を結晶が発したと思ったら一瞬で全員が消えた。


そしてその場に静寂が満ちた。


…えーーーっとぉー…。


頭の中を整理してみる。


甦って、動けなくなって、動物に襲われて、なぜか全部戦闘不能になって、そしたら四人に襲われて、んで同じように戦闘不能になって…殺害予告して消えた、と。


「わぁい…とんでもない理不尽だぁ…」


叫びたい心境ではあったが叫ぶとまた環境破壊の嵐なので抑えて静かに呟いた。


いや、一応言っておくけど僕本当にまだなにもしてないからね!?


てか魔族ってなんぞ!?


謎は深まるばかりであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

都市国家、ヴィルヘルト。最高組織である議会の長、国家元首である男の部屋にスケアクロウはいた。


「あいつはとんでもねぇ。ありゃただの化け物だ」


荒い息をつきながら現れたスケアクロウ。そんな彼の報告は中々に興味深く、恐ろしいものであった。


彼は手練れの冒険者である。それこそ、EからSランクまである冒険者の中でもAランクの上位という立場だ。


暗殺者という側面を持ちながら、真正面からの戦いでも相手を圧倒できる腕を持つ。


そんな彼のパーティーメンバーも全員Aランクの実力者だ。


そんな彼の報告に、どうして嘘があると思わなくてはならないのか?


国家元首の男はため息をつきながら、掛けていた眼鏡を外し、目頭を押さえる。


「…ということは、だ、スケアクロウ。ヴィルヘルトの中でも屈指の実力を持つ君でももて余す相手だと、そういうことかね?」


「認めたくはないが、そういうことだ。だが、『アレ』を使えば…奴を抑えられるだろう。奴の強化魔術は確かに驚異だ。それ以外にも何か使っているような節もある。だが、『アレ』はその魔術全てを…」


右手を握りしめ、目を怒りに燃やすスケアクロウ。


そんな彼を見た男は、目を瞑る。


「そうか…。なら、いいだろう。『アレ』を牢から出すことを許可する。だが、くれぐれも扱いは慎重にしろ。この国、いや、世界に1つしかないだろう貴重な財産だ。…わかったな?」


「わかっている…礼を言うぜ…!!」


用は済んだとばかりに


背中を向けるスケアクロウ。


男はそれを止めずに、その背中を見送った。


男は椅子の背もたれに背中を預け、天井を見上げる。


「…イザリア…私の娘…半魔の忌み子よ…」


森に出現したという魔族…それがどんな存在であろうとも…。


「…彼女の救いに、ならんことを…!!」


そう呟き、哀れな男は瞳を閉じた。

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