死屍累々という言葉は知っていたけどそれを作り出すとなると話が変わってくる
んぁあー!!息抜きになるんじゃぁあーーー!!
あれからどれくらい時間が経ったのだろう。
迂闊に動けず、ずっと棒立ち。誰か来るような気配もない。
その上さっきの狼とは違う生物がどんどん出てくると来た。
ほら、噂をすれば。
「「「ギャルゥウアアアア!!!!」」」
集団で出てきたのは、ゲームでもお馴染みのゴブリンのようなもの。
狼が吹っ飛んだ後、巨大蜘蛛、豚人間(オーク?)、赤鬼、青鬼(決してブルーベリー色した全裸の巨人ではない)、巨大猪が立て続けに出現しては敵意むき出しで突貫してきた。
その度に慌ててはいたが、なぜか相手が僕にぶつかった瞬間どこか明後日の方向にすっ飛んで頭から地面に突き刺さるようにして屍?を晒している。
死んでるかどうかは確かめないと分からないが動いたら環境破壊の嵐だ。動くに動けない。
とか言ってたらほら、また。
棍棒で殴りかかってきたゴブリンが僕に棍棒を叩きつけた瞬間何かに顎を弾かれるようにすっ飛んでいった。
もう、なにがなんだかわからない…。
僕の回りに何かバリアでも張ってあるのだろうか?
「…あ、そうだ。ステータスとか見れるのかね?この世界。」
とか思ってみても何も出てこない。
ということは、そこまでファンタジー要素は無い世界と言うわけか?
多分、そういうことなのだろう。
「ブモォオオオオオオオオオオオオオ!!!」
巨大な牛が真っ赤な角をこちらに向けて突進してくる。
「キシャァアアアアアアアアアアアア!!!」
巨大な蛇が大口開いて迫ってくる。
先ほどのゴブリン達は仲良く頭を地面に埋めている。
ゴガガンッ!!!!!!!!
「ブモォオウ…!!」
「シュルゥウウゥ…!!」
仲良くぶっ飛ぶ二匹。これまた仲良く頭を地面にめり込ませて動かなくなった。
…いやぁ…これは…ないだろう…。
なにもしてないのにどんどん敵が消えていく。てか自滅していく。
「…僕の憧れていたテンプレ異世界生活とは一体…??」
真面目に僕の想像と違った展開に思考を放棄せざるを得ない僕であった。
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「…あれはヤバい。本当に人間かも怪しいんじゃねぇか…?」
相模晃大から随分離れた茂みの中で、職業、暗殺者であるスケアクロウが呟いた。
彼、スケアクロウ、というのは案山子と言う意味で、偽名らしい。
本人は響きが気に入ったとかでその名前を使っているとかなんとか。
そんな彼の呟きに、隣にいた軽薄そうな男は嘆息する。
「スケアクロウ…あの魔物たちの山にビビってしまうのはまだ分かる。けど、あんな魔物僕たちでも狩れるよなぁ?大したことないだろ!」
あんなヒョロッちいやつ…!!彼はそう吐き捨てた。
その発言に、青い髪の少年が反応する。
「クラークス…敵の過小評価はダメだっていつも言われてることだろう。倒せる、とは言っても俺たち全員でかかって倒せるってだけだろ?」
苦々しい表情を浮かべる彼に賛同するように、長身の男もため息をついた。
「《レッドオーガ》に《ブルーオーガ》、《ジャイアントブル》に《ギガントスネーク》…しかも《キングスパイダー》に《エルダーオーク》…?あれを一人で倒したとか、何の冗談だってんだよ」
ありゃ絶対化生の類だろ。そう吐き捨てた。
なんにせよ、と、スケアクロウが口を開いた。
「あれをあのままにはしておけねぇ。しかも黒髪に黒瞳と来たら…わかるだろ」
―――ありゃ魔族だ。
「魔族は…殺すしかねぇ」
スケアクロウはそう、吐き捨てた。