動けません。助けてください。
新作う!ブクマ、評価、感想お待ちしてます!!
―――あ、これは死んだな
僕、相模晃大は目の前に迫る大型トラックに対してそんなことを呑気に思っていた。
普通の朝、普通の通学路だった筈なのに…信号待ちをしてたらこれだ。
ラノベ脳の僕からしたら、俗にいう転生トラックになる訳なんだが、死ぬのは嫌だよ、うん。
誰だって死ぬのは嫌だろう?当たり前だ。要するにはそういうこと。
硬い硬いトラックの感触と痛みを体の前面に感じながら諦めの境地に至る。
脳ミソがスパークする。危険信号がガンガン鳴ってはいるがもう間に合わない。
これはそういうものだって、理不尽だって分かりたくもないのに分かってしまう。
塀とトラックの間で潰されながら嘆息する。
―――こんなことなら…もっと遊んでいれば―――
死にたくねぇなぁ…なんて思いながら。
―――あぁ、父さんと母さん…悲しむだろうなぁ―――
酷く後悔しながら。
僕、相模晃大は死んだ。
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「という訳でボーナスターイム!!!!!」
「ちょっと待てコラ」
叫ぶ女性に制止を掛ける。
トラックと塀に潰されて死んだと思いきや、いきなり景色が変わった。
今僕は、四角い白い部屋のなかに居た。
そんな僕の目の前には派手派手しい服を身に纏い、社長室にあるような椅子に立ち、行儀悪く片足を机に上げてる美女がいる。
神々しい白い髪にオーラ。これはまた俗に言う女神様というやつだろう。
「せーーーいかい!!!!さっすがサブカル溢れる現代日本の健全少年なだけはあるね!!」
思考読むな女神様。プライバシーの侵害も甚だしいぞ。
「まぁまあまぁそんな事言わないでさ!!ボーナスタイムだよボーナスタ・イ・ム!!!!」
テンションがウザイ…。さっきも言ってたけど、僕もう死んでるんだよな?そんなんなのにボーナスタイムて。あ、もしかしてこれって…?
ラノベのテンプレートの1つが頭のなかに浮かんでくる。
これは俗にいう…。
「異世界転生…しかも能力付与の流れ…!?」
そう呟く僕に彼女…女神はニヤリと笑う。
「ピンッポーーーン!大 正 解!!!!貴方は選ばれたのです!!しかもこのワタシ!なんとその異世界の最上位神になるんですねぇ!!ビックリ?ビックリした!?」
「ビックリはしたけど威厳無さすぎないかあんた!?」
そうツッコミをいれるものの、余裕の笑みを絶やさない最上神様。
ムフー、と大きく鼻息を吐きながら彼女は続ける。
「まぁそんなことは置いといてだね。ここに来ることの出来た人間は実に久しぶりでね。我が世界の創世記以来じゃかいかな?ってなわけでだね。君にはサービスをしようと思うのだ!」
なんと豪気な。しかも創世記以来とは無駄にスケールが大きそうだ。まぁ貰えるものは貰っておくのが僕の主義だから、有り難く受けとることにする。
「うむうむ!!話が早くて助かるよ!!早速…っと!!とりあえずこれで力は授けた!!」
なんて事を彼女は言うが、その場から一歩も動いてないし、そんなエフェクトも何もない。
僕のなかで微妙な空気が膨れ上がっていく。
「…え、終わり?」
「うむ!!終わりだぞ!!」
呆然と呟いてはみたが、確かに終わったらしい。
えーと…なんか、こう、ロマン溢れる演出なんかは…?
「もう終わってしまったからな!!ないと言ったらない!!」
そういうことらしい。
「んじゃ、とりあえず行って貰うけど~…ここでもサービスサービスゥ!!!!!」
「ちょっと待てそのネタは危ない」
主に著作権的な意味で。
何気に必死な僕の制止はなんのその。構わず続ける。
「君を降ろす場所は一番大きな町の近くの森にしておこう!!とりあえず危険と言う危険はあまりないから安心するといい!!」
それは普通に有り難い。
いきなり訳のわからない場所に行かされる訳だし、変なとこに飛ばされても困るからな。
…あ、そういえば忘れてたんだけど…
「ん?あ、君の家族のことかい!」
「話が早くて助かるよ女神様。」
残してきた家族は、今僕のことで悲しんでいるに違いない。なら…。
「うむ。君の望みは叶えておいた!君のことを覚えている人間は…もういない!!」
うーん、手際がよすぎで困るが…まぁ死んでしまった僕としては後顧の憂いは無くしておきたい訳だ。
そのとき。
「…そうじゃないとワタシが困るわけだしね…」
女神様が何事か呟いたようだが、聞き逃してしまった。
同時に僕の足元が輝き出す。
「っと、そろそろ時間のようね!!エンジョイネクストラァアイッフ!!!!」
最後までハイテンションな女神様に送り出され。
僕は異世界で甦った。
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気づけば僕は森の中に立っていた。
「…ここが、異世界…」
死んだことは悲しいが、結局僕は生きている。
ややこしくはあるがこの際はどうだっていい。
上を見上げると、透き通るような青空と、白い雲が浮かんでいる。
それを眺めていたら、何だかテンションが上がってきた。
「~~~~!!!!!」
日々小説を読み漁り、こんな展開があったらいいのにと思い続けた。それが、実現したのだ。
嬉しくて、嬉しくて堪らない!!
「んんんやったぞぉおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
天にむけて叫ぶ。全力で叫んだ。
轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
……………なんかでた。
よく分からない、見えない衝撃波のようなものが。
真上に丁度あった雲に風穴が空いている。
…これは…うん。まぁ、うん。気のせいだろウ。
なんかその辺の空間とかギシギシ言ってるけど問題ないでしょ。聞いてない聞こえない僕関係ないナイナイナイ。
足元がピキピキ言ってるし回りから何か木が折れるような音がするけどそれも気のせい気のせい気のせいったら気のせいだ!!
ギギギ…と、油の切れた機械のように正面を向く。
「oh…」
視界一杯に映る光景にそんな声しかでなくなる。
見える範囲の木々が盛大になぎ倒されていた。
認めたくない現実を直視した僕は呆けることしかできない。
…どうしたらいいの、これ。
考えても答えは出てこない。
なので、とりあえず僕は前に向けて一歩を踏み出した。
バガンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!
巨大なクレーターが出来た。
「oh…」
どうやら僕の異世界生活は波乱万丈なモノになりそうだ。
今それが確定した。