表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

キミしか見えない

いつも視線が合う気がする。



登校途中の道。


下駄箱。


廊下。


学食。


放課後の帰り道。



高校入学と同時に感じるようになった、その視線。



それはウチの男子高では有名な、人気者のワンコからの視線だった。


ワンコといってもホントの犬ではなく。



勿論、人間。


オス。


俺よりひとつ上の先輩。



はちみつ色の明るい髪の毛と瞳、長身でカワ綺麗系ともて囃されるそのワンコ。


いや、高知 智弘先輩は、その人懐っこさからワンコと親しみを込めて呼ばれる、とても人気のある先輩だった。



(そんな先輩が、なんで俺を見るんだろう?)



ごくごく普通の学生である、俺、田中 冬馬。


人気者である先輩との接点はなかった……はず。



――ん?


いや、一回だけあったっけ。


たしかアレは入学して間もない頃。


選択授業で、別教室に移動していた時だ。



階段の踊り場で蹲る茶色い塊がいた。



え? 何??

と立ち止まった俺。



よ~く見てみると。

毛羽立ちデロデロになった、茶色い毛布を被って震えるワンコ――高知先輩だった。


なんでこんな所に毛布を被って蹲っているのか。


俺は意味が分からなくて、この時フリーズしていたと思う。


でも、毛布の隙間から覗く先輩の顔色が悪く、もしかしたら具合が悪いのかもしれないと思って。


俺は慌てて先輩に駆け寄った。



「大丈夫ですか?」


「……ぅ、っ」



返事をするのも億劫そうな先輩だったが。


そーっと俺が近寄ると、先輩はぼんやりと虚空を見上げて、むにゃむにゃと呟きだした。



「ゃ、一人、誰か……」


「……は?」


「きゅっ、して……」


「……え??」



何事か呟き、いやいやと首を振る先輩。

もしかして病気かも?と心配になった俺は、先輩の額に手を当てた。


しっとりと汗ばんだ額は、驚くほど熱かった。



(なんでこんなに熱があるのに、登校して来てんだよ、この人?!)



もしかして熱があって寒気がするから、毛布なんて被って登校して来たんじゃないだろうな。



――ん?


家から、毛布を被って、登校??



(どんな羞恥プレイぃい!?)



俺なら恥ずかしくって出来ない事を、病気のせいなのか、やってのけてしまったらしい先輩。



「ぃやっ、一人ぃ……」



俺の制服の裾を握り締め、他へは行かせまいとする、ちっちゃな子供のような口調の先輩。


高熱で頭をやられたのか、幼児退行してしまったようだ。



(……う~ん)



取り敢えず、こんなに高熱で、授業は受けれないだろうと思った俺。


やけにくっ付いてくる先輩を背負って、保健室へと向かった俺は、丁度留守をしていた校医の代わりに、ちょろっと看病してあげたのだ。


結果。

俺は1時間目の授業をサボる事となってしまい。

密かに皆勤賞を狙っていたのだが、それがご破算になってしまった。



――今となっては、苦~い記憶が残る過去の話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ