STAGE11
♪ ♪ ~♪
ジンはファンファーレを聞いていた。
本物の神様が人間をそう造っているのか知らないが、彼はレベルアップする毎に脳内で音楽を流されるような感覚に襲われる。
何度も聞いているはずなのだが、メロディーラインを口ずさむことはできない。
手の平で溶ける淡雪のように、ジンファンデルの頭の中でその音楽は輝き、消える。
腕力や体力といったステータスが微上昇する。
と同時に、魔力の上限も僅かながら増えた。
絶対量が増えたことによって現在の魔力量も――――
「悪いな」
長剣に手を添え、ジンはそれをすっと抜く動作を取る。
規格外の長さを誇る水の刃が収縮し、その軌道に血液の花弁を散らした。
心臓の高さで肉体を輪切りにされた少年が身を傾がせる。
その目は見開かれたままで、口は魚のようにぱくぱくと動いていた。
「ナチャッ!!」
切断面でスライドしかける肉体をセキレイが支える。
が、既に少年の肉体からは栓を抜いた発泡酒のように血飛沫が噴き出しており、見る見るうちに下半身が赤く染まっていく。
セキレイは両手を血液と脂に塗れさせながら、為す術もなくその場に崩れ落ちた。
輪切りにされたガルナチャが地面に倒れると、辺りには大きな血の池が広がっていく。
切断された位置が良かったからか、臓物が零れ出ることはなかった。
ジンは胴体に片腕がくっつくばかりの銀氷天に目を向け、軽く肩をすくめる。
「一丁上がりだ」
鳴りやまない警報音と明滅する赤の中、北光は顔を歪ませる。
(何が一丁上がりだ……!)
子供を斬殺しておいて「一丁上がり」は無いだろう。
北光は思わず拳をきつく握りしめる。
その瞬間、夜坂北光は自分の抱く不可解な不快感の正体に気付く。
初めて逢った時から、彼はどうしてもジンが好きになれなかった。
その理由が今、分かった。
――――勇者ジンファンデルは、軽い。
夜坂北光は平和主義者ではない。
奪うべき命は容赦なく奪う。殺すべき時は一切の躊躇なく女子供も殺す。
だが敬意を持って殺す。
慎重に、作法に則って、丁重に、殺す。
ジンは違う。
彼は枝から葉っぱをむしるようにして人を殺す。
そこに『命』への敬意は無い。
(……! 生き返るからか)
ジンの世界には数こそ減ったとは言え、蘇生魔法が存在する。
彼が行動を共にしていた魔女ナイアガラもこれを使えると言う。
だから軽いのだ。
ジンは本質的に命を軽んじている。
(……)
少しずつ、北光の胸に暗い感情が淀み始めた。
ミュスカデの管理する生体センサーが異常を察知するが、それは戦闘の興奮に紛れ、正確に読み取られることはない。
『死んでも蘇る』。
ジンの世界では当たり前のことかも知れないが、北光の生きる世界ではそうは行かない。
現実の人間は死んだらそれで終わり。蘇ることはない。
だからこそ人は万事に必死になれるのではないか、と彼は考える。
蘇生という道を知るせいか、ジンファンデルに生への執着や緊張感は無い。
他者の命を尊重するような素振りも見せない。
それが北光を絶えず苛立たせている。
そう言えばあの男は。
仲間の死を目の当たりにしても涙一つ、悲憤の言葉一つこぼさなかった。
「……」
北光は光の粒子となって消える少年の姿を見つめる。
血だらけの金髪女が立ち上がるところだった。
「何て顔してるんだ、姉ちゃん」
ジンの声音はセキレイの癇に障る。
彼女は義憤を嘯くようなことはなかったが、ガルナチャ個人には恩義を感じていた。
濃厚な紫色のオーラを纏い、セキレイは怒りに表情を歪める。
「……」
「敵の技。『ハーベスト』」
トンファーを構えたセキレイの目の前でジンが少年の技を模倣した。
両手にパキパキと宝玉が集い、秘精の殺人結晶が七色の光を放つ。
「北光、動けるか」
「自信は無いな」
警報音が鳴りやまない。
赤い光が明滅し、ブザーに合わせて北光の心拍も速度を増す。
『し、姿勢制御っ! 北光! 立て直せません!』
「ああ、分かってる」
宙に浮く銀氷天は天井付近を漂う風船のようにおぼつかない浮遊を繰り返していた。
硬化光体のフレームは光片子を固着させる『座標』の役割を担っている。
フレームという『骨』の位置を定めて初めて『肉』がつくのだ。
その為、両脚と片腕のフレームを失った今の銀氷天は着地もままならない。
推進力のすべては姿勢を保つことに費やされており、攻撃行動など望むべくもない。
だが――――
「じゃあ休んでろ。後は俺が片付けとくから」
言うが早いか、ジンは消滅を司る七色の球体を乱発した。
飛散する秘精の一部は吸着したが、一部はどういうわけか弾け、反発し、ビリヤード台を走り回るボールのごとく空間を埋め尽くす。
北光が参戦しないことでジンは空間全体を攻撃することに決めたようだった。
「野、郎ォォォォッッッッ!!!」
紫電の絡むトンファーを手にしたセキレイは濁った怒号と共に宝玉を回避する。
五個連なる宝玉をかわしたかと思えば、七個の塊を越え、蜘蛛の子を散らしたように飛散する秘精を完全回避した。
身を低く伏せ、狼のごとく迫るセキレイはあっという間に距離を詰めた。
五メートル。いや既に二メートルだ。
そんな彼女の姿にジンが不敵な笑みを浮かべる。
「やっぱ快力持ちには当たらないか。跳弾、混ぜたんだけどなァ」
「く・た・ば・れぇぇぇぇっっっっ!!!」
トンファーを振り回すセキレイは一撃で地面に大穴を穿つ。
地面から数十センチの高さで跳ぶジンの胸に、銃を向けるようにしてトンファーを向ける。
「嗜虐の快力!!」
「断罪の快力」
肉を焦がし、血液をも沸騰させる紫電がジンファンデルを直撃するが、全身を鋼鉄に変化させた勇者はダメージを大きく減衰させた。
パチパチと身に絡む紫電の痛みに表情を歪ませ、ジンは元の姿へ戻る。
「痺れるな。だがこんなショボい雷魔法なんて――」
ジンの両手に黒蛇が生まれた。
「……!」
「元の世界じゃ当たり前に食らってるんだよ、なァァっっっ!!!」
ブラックマンバが両手を離れ、螺旋を描いて天へと昇る。
もつれ合う蛇は地上十数メートルの地点で敵対者を捕捉し、急降下した。
「っ!」
流星群のごとく降り注がんとする黒蛇。
セキレイは快力による防御と回避のいずれかを迫られたが、後者を選んだ。
足を止めれば秘精による消滅が待――――
ブラックマンバが中空で消滅する。
「えっ」
回避行動を止めることはできない。
地を蹴ったセキレイは既に横っ飛びを始めている。
彼女は黒蛇の消え失せた青空、そして勇者の顔へと視線を動かす。
「着地は貰った」
ジンは長剣を構えている。
「支配の快力!!」
「っ!」
稲妻の速度で伸びる水の刃が着地したセキレイの足首に直撃する。
快力の質の差か、ジンの刃は足首の骨に三分の一ほどめり込んだに過ぎなかった。
だがセキレイの行動力を削ぐには十分過ぎる一撃だ。
「くぎぅっっ!!」
筋肉をバターのように切り裂かれる感触でセキレイの闘志にひびが入る。
憤怒に冷や水が浴びせられ、恐怖が背を這い上がる。
無理だ、と彼女は確信した。
二種類の快力と空飛ぶ少女の誘導弾。更にはガルナチャの秘精まで。
異世界の技術をかくも柔軟に使い分ける男に、嗜虐の快力しか使えないセキレイでは勝ち目がない。
「手間かけさせんなって」
既にジンは水の刃を振り上げている。
あとは振り下ろされればセキレイの命脈は絶たれ、勝者が確定する。
(……)
善悪とか、損得の問題ではなかった。
ジンファンデルの一言一句、一挙手一投足が夜坂北光の神経をチリつかせていた。
だができることなど何も無い。
『北光! 十分です。ここは撤退を!』
「……」
『ジンファンデルがあの女に勝つ見込みは既に70%を上回っています!』
だがミュスカデの言葉に従うことはジンの生存を意味する。
それのどこが悪い、と理性が告げる。
自分が勝ち残る以上に重要なことなど何も無いだろう、と。
だが北光は躊躇していた。
自分の生存の為とは言え、あの男を。
命に対する欠片ほどの敬意も持たないジンファンデルを生かすことが果たして真に正しいと言えるのか。
人工知能はそれを正しいとのたまった。
人間である北光の心は違う結論を叩き出す。
奴は――――
『サモンソウルズ……!』
突如として響いたガルナチャの声に息を呑んだのは北光だけではなかった。
ジン、そしてセキレイもまた唖然としている。
「お前っ……!」
ジンファンデルの前に立っていたのは。
たった今殺めたばかりの少年ガルナチャだった。
『まだだ……まだだっ!!』
傷は癒え、衣服の血は清められ、その姿は神々しい光に包まれていた。
両手に宝玉を携えた少年の姿は蜃気楼のごとく揺らいでいる。
ジンは思わず叫んでいた。
「おい神様! あいつはどっちだ?! 死んでるのか、生きてるのか!」
『死んでいますよ』
どこからともなく彼女の声。
『あれは秘精の作り出した幻です。生きているのはあなた達三人だけ』
「……!」
ジンは思い出す。
この少年は水の刃で切断された後、なぜか光の粒子となって消えた。
あれはまさか。
(自分の魔法で自分を使役するため……?)
秘精の仕組みを知った今のジンには分かる。
一度秘精の粒子へと還元された生物や物体はいくらでも再現可能だ。
ガルナチャは今わの際に己を秘精に転換し、自らの術で自分自身を召喚したらしい。
傷ついたセキレイが渾身の力で立ち上がる。
腹部からとめどなく流れ出す血でズボンは真っ黒に汚れ、足首は今にもちぎれてしまいそうだった。
痛みを快力の奔流で押さえつけ、セキレイは呻く。
「ナチャ!」
『大丈夫です』
光の粒子で構成される少年はセキレイの痛々しい姿に表情を歪めた。
このまま放っておけば彼女は死んでしまうだろう。
すぐに――――すぐに助けなければならない。
例え自分はこの大気の中へ還るのだとしても。
この人だけは助けなければならない。
あの毛皮の男を斃し、彼女を勝者に。
『待っててください。すぐ助けます』
「……!」
セキレイは膝から崩れそうになる。
痛みのせいではない。
この期に及んで彼を衝き動かすものが依存に近しい感情であることに、いたたまれないほどの悲哀を覚えたからだ。
「はー……。ははっ。……よくやるよ、お前ら」
天を仰いだジンは肩を揺らし、ため息交じりの苦笑を漏らした。
セキレイとガルナチャがぴくりと頬を引き攣らせる。
「何でそう堅苦しく考えるかな。たかが生き死にだろ?」
ジンは物事が自分の思うように動かないことにいささかの苛立ちすら感じていた。
「死ぬ時ぐらいサクっと死ねよ。屍鬼でももう少し行儀がいいってのに」
くくっと含み笑うその様にガルナチャが静かな怒りを向ける。
『何がおかしいんですか』
「あ?」
『何がおかしいんですか!』
光の霧とでも呼ぶべき物質で構成されたガルナチャが強い燐光を放った。
ジンは目を細める。
『どうしてそんなにヘラヘラできるんですか。殺し合いなんですよ!?』
「……人の死は日常だよ」
ジンファンデルは半笑いのまま低い声を漏らす。
彼は仲間の存在を有り難く思っている。
勇者という仕事に対しても一定の責任感を抱いている。
だが死生に関する考え方は場末の芸人だった頃から変わっていない。
彼は命を軽んじている。
そしてその態度が勇者という仕事と矛盾するとも思っていない。
むしろ命に執着することは彼の中で『勇者』の定義と矛盾した。
自分の行動の結果に対して必死になるのは構わないが、「死にたくなさ」に執着はしない。
それは勇気ある者の行動ではない。
「殺し合いするんだからシャキッとしなさい、ってか? ちょっと意味が分からないな。神妙なツラでお前を殺せば、お前は俺を怨まないのか? 俺が許されるのか?」
『……!』
「ヘラヘラするなってのは世間様向けのポーズの話だろ?」
ガルナチャは彼との間に『断絶』を感じ取った。
ジンファンデルもまたそれを感じ取ったが、時間稼ぎをやっている彼にとって重要な問題ではなかった。
「で、そんな深刻なツラをした君に悲報だ」
「?」
ジンは片手で片目を覆う。
笑みの形に歪んだ口唇が緩やかに動く。
お ぼ え た ぞ
「……!?」
「『サモンソウルズ』」
勇者は秘精の海へ手を入れる。
大気には驚くほど濃厚な秘精が満ち満ちており、ジンはスープの中から具を探り当てるようにして『ソレ』を掬い取る。
ジンファンデルの掌中から現れたのは革鎧を纏う不死身の骸骨戦士だった。
『なっ!』
「……!」
数時間前に自分たちの味方だった骸骨戦士を目の当たりにし、セキレイと少年が凍り付く。
「……」
かつての仲間とかつての主に挟まれたカルガネガはただ沈黙する。
今の彼には意思というものが無い。
「よし。いっちょ頼むぜ、カルガネガ」
革鎧を叩かれた骸骨戦士は拳を握り、セキレイを見やる。
すかさずガルナチャが宝玉を放つが、ジンの放った宝玉がそれを食い止めた。
爆ぜた光の向こうで少年が歯噛みする。
『くっ』
「ネタが割れたら大したことないな。……敵の技。『ウォリアーズクルセイド』!」
青と白の宝玉で構成された盾が生まれる。
ただしジンはそれを水平に構え、その場で一回転すると円盤投げの要領で放り投げた。
『ろ、ローリンローリン!』
少年が慌てて放った二色の宝玉が盾を食い止め、消滅させる。
その時には既に不死身の骸骨戦士がセキレイへ向かって走り出していた。
「っ。嗜虐の快力!!」
「……」
放射紫電の直撃を浴びたカルガネガは走りながら黒焦げになり、革鎧も吹き飛んだ。
が、数秒後には元通りにパーツが集い、何事も無かったかのように走行を続けている。
セキレイは知っている。
快力使いにこの化け物を殺す術は無いと。
しかしガルナチャはジンファンデルの猛攻を凌ぐので手一杯だ。
「もう一発食らっとけ! 敵の技! 『ハーベスト』!」
『ハイヌウェレ!』
地表から生み出された秘精の宝玉が飛来する宝玉群を下から突き上げる。
大部分は消滅したが、一部が少年の足元に直撃した。
『! くっ』
「はは。よそ見してていいのか?」
はっと少年は我に返る。
「小汚いお姫様が死んじまうぞ」
カルガネガは既にセキレイから槍一本の距離にまで迫っていた。
ばっと飛びかかる骸骨がセキレイを羽交い絞めにする。
次の瞬間、ジンは長剣を構えた。
「『支配の快力』」
しゅおあ、と伸びる水の刃がカルガネガへ向かう。
女を抱く骸骨が二度、三度、四度と身を前後させた。
仲間諸共セキレイを串刺しにしたジンは剣を伸縮させ、手ごたえのなさに首を傾げる。
『ファナティックレイン……!』
普段使う宝玉よりも更に小粒の赤い宝玉がセキレイの肉体の前面を覆っている。
水の刃はそこで止められてしまったらしい。
「多芸だな。商売敵じゃなくて良かった」
『ハーベスト!』
ガルナチャの連続攻撃で骸骨戦士が光の粒と化す。
「おいジン! お前仲間を――――」
「不死身なんだから気にするな。そんなことより、っと」
ジンファンデルは快力を纏い、あっという間に銀氷天の脚部に迫った。
大きく跳躍した勇者は腿を蹴り、腰を蹴り、剣を持たない方の肩に着地する。
「は? おい、ジン。何やってる。あいつらまだ……」
「何で戦わなきゃいけないんだよ」
ジンは口元に嫌な笑みを浮かべた。
「あの姉ちゃん、もうすぐ死ぬだろ」
「……!」
「ゆっくり待たせてもらうとするさ」
主義主張などというものはファッションに過ぎない。
ジンファンデルは平和主義者になることにした。
今だけ。
『おい待て! お前っっ!!』
地を駆けたガルナチャは決死の形相をしていた。
『降りろ! 降りて戦え!』
「やだね。どうせお前、不死身なんだろ?」
ジンは肩を揺らし、コクピットの辺りに向かって声を放る。
「北光。どこでもいいから飛ばしてくれ。一時間もすりゃ俺たちの勝ちだ」
「……」
警報音と撤退を繰り返すミュスカデの声の中、北光は思案していた。
ジンの行動はおそらく正しい。
少年を死なせ、あのセキレイとかいう女に致命傷を与えた時点で北光とジンの勝利は確定している。
これ以上彼らと戦うことはリスク以外の何物でもない。
実際、ミュスカデは撤退による勝率を97%と表示し続けている。
――――だが。
だがこれは本当に正しい振る舞いなのか。
本当にこれは勝利なのか。
北光はそこに悩む。
人工知能と終わりなき戦いを繰り広げていた彼に主義主張というものはない。
強いて言えば反平和主義とでも呼ぶべきものが手足を貫いているが、それは北光が戦う中で自然と身に着けた「習性」に過ぎない。
習性とは別の何かが北光の胸をちくちくと刺している。
(……)
北光が暴走する人工知能と戦うのは、奴らが人間の世界を平然と悪びれもせず蹂躙するからだ。
度を超えた正義感は貧困層の子供たちを『犯罪者予備軍』と目の敵にし、言動に物差しを当て、少しでもズレた者には矯正または粛清を行う。
統計的に犯罪者の輩出率の高い地域は焼き払う。
数値化不能の価値は認めない。
夜坂北光の戦いは人工知能の叩き出す冷たい『正しさ』に抗うための戦いだ。
「おおい、北光~ぅ。もしもォし?」
「……」
そしてその正しさが告げている。
こいつに――ジンファンデルに相乗りすることはこれまで彼が積み上げて来たすべてを否定することであると。
「!」
銀氷天が巨体を揺らす。
ミュスカデは一瞬、主の正気を疑った。
「ジン」
「何だ」
「お前は勇者なんかじゃない」
銀氷天は強く身を揺すり、ジンファンデルを地上に振り落した。
宙で二回転した勇者は易々と着地する。
ざざあ、と砂埃が立った。
「お前は怪物だ」
手足をもがれたボロボロの銀氷天が日本刀の切っ先をジンに向ける。
足首にトンファーを括りつけたセキレイが紫色のオーラを充溢させながら立ち上がる。
ガルナチャは光の残像を残しながら宝玉を抱えている。
辺りを見回し、死が迫っているという状況を十二分に理解したジンファンデルは。
――――やはり、嗤った。