表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/19

第十二話 綺麗ごととは

 二見はようやく眠ってくれて、オレと巡だけが起きていた。

 巡はオレに対して警戒というより、親しくなるのに怖がって近づきたくない様子だった。

 二見はずっとオレに笑顔を見せ続け、その度に巡へ「治ったかな」って問いかけてきた。

 本気にしているらしい、笑顔でどうにかできると。

 いや、それよりもまず――笑顔がどうのこうのじゃなく、オレを気遣っているんだ。

 眠らせるのも一苦労した。

 二見は逆にオレといる間はずっと起きていたい、とむちゃくちゃなことを言い出したから、流石に寝ろと窘めた。

 オレが寝ても二見は、巡曰くずっと起きていてオレを見守っていたらしい。

「何だか、ここまでふみが懐くの初めて」

 巡の口調は何処か穏やかで、オレに対して警戒心を少しだけ解いてもいいよ、と示すかの口調だった。

 オレは首をこきりこきりと鳴らして、眠る二見を見つめる。

 ――てんでガキのくせに、気遣いだけは超一流ときてる。

 こいつの言い分は、何もかもが今はオレ中心で、本気でオレを天女にしようとしているのだと思い知る。

 それほどに、愛されているのだと。

「子犬ちゃんはふみのこと好き?」

「……――何でそんなこと聞くんだ」

 オレには選択肢がないって知っているのに。

「心からふみを好きな人にいつか会えたら、嬉しいから。僕とふみは二人で一つだしぃ」

「……なら余計に聞くな」

 その質問は二見にとっては残酷だと、暗に示す。

 オレには、綾様がいると。

 巡はかちんとした様子で、オレを睨み付ける。

「嫌な奴ぅ。……でもそういうところなんだろうな、ふみが子犬ちゃんを好きになったところって。そうやって何もかも隠さないところ、綺麗事で誤魔化さないところ」

「……――綺麗事言うときだってあるぜ?」

「ううん、子犬ちゃんはきっとそうやって言わないよ。言うときはよっぽど切羽詰まってるか、本気で願ってるときだ」

「本気で願っていたら、どーすんだよ」

「めぐはふみの願いを叶える為にいるから……ふみのしたいようにさせるよ、子犬ちゃんを邪魔してもね」

「あっそ」

 オレが巫山戯て適当に応えると、巡はきょとんとしてから、微苦笑を浮かべた。

 その後に二見が寝ぼけてオレの言葉に反応して、「あ、そう……」とか真似みたいな寝言を呟いたもんだから、二人でげらげらと笑った。


 ――何だ、この暖かな気持ち?

 何故、こんなにも満たされていく?


「――テメェらは昔に何があったんだ? ただの人間嫌いってわけじゃなさそうだ」

「ゴミツ見てれば判ると思うけれど、僕らも最初は神様だったんだよね。でも、人間が邪魔だーって鬱陶しがって、今じゃ化け物扱いだ。毛嫌いされて、畏怖されてる」

「……それだけじゃないんだろ? 二見の懐き方は、昔仲良かった友人に対するもののようだ」

 オレが問いかけると、巡は俯いて膝を抱える。

 膝を抱えて、眠る二見の頬をむにっと引っ張って、微苦笑する。

「僕には判らない。僕は、二見の代理品みたいなものだから」

「馬鹿、テメェはテメェで、二見は二見だろ」

「じゃあ子犬ちゃんは二見じゃなく、僕を愛してよって言ったら僕を愛せる? ――無理だよ」

 まるでオレがもう二見に恋してるような言い分だな。

 からかってやろうかと思ったら、真面目な顔で睨み付けられたので、肩を竦める。

「それならせめて、二人を守りたい」

 何だか何処かで見たような思い――嗚呼、オレから綾様に対する思いのようだ。

 兄貴と綾様を見つめて思う気持ち。まるで呪いのように、巡に伝わってしまったのか。

 此処で巡を撫でることのほうがかえって残酷だと思ったので、オレは何も言わなかった。

 否定することでさえしてやりゃあいいのにな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ