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EPISODE 8 

まだまだ話は続きますよ・・・

衣玖は3人の前で倒れていた。

そんな様子を見かねた頭取の蓮子は怒っていた。


「社員を傷つけるなんて・・・そんな事、私が赦さない!」


蓮子は3人に激怒し、近くに飾ってあった杖を構えた。

その杖にはオレンジ色の結晶が埋め込まれていた。

全体的に青いその杖を右手で構え、彼女は3人と対峙した。


「いや、私たちは衣玖にだけ恨みがあって蓮子さんには・・・」

「もう止めて!いい加減気づいてよ蓮子!」


しかし蓮子は聞く耳を持たなかった。


「・・・いずれ戦わなくてはいけない日は来る。その日の為に私はこの杖を飾っておいた。

・・・特殊加工製サミニウムは様々な力を司れる!未知なるエネルギーを前に跪け!」


蓮子は杖を上に掲げると、周りから不穏なオーラが醸し出される。


「・・・どうやら連戦のようですね・・・!」

「誤解が生んだ悲劇ですよ・・・この戦いは・・・!」

「でも仕方ない・・・やるしかない!


怒り心頭の蓮子は杖を翳し、力を司っていた。

彼女の周りに様々な力が小さな光となって飛び交う。


「この私直々が相手だ!さあ来い!」


                δ


蓮子は杖を掲げると、3人の元に巨大な落雷を発生させたのだ。

轟音と共に地を穿つ勢いで落ちる雷に3人は焦った。


「や、ヤバい!」


身体は反射的に―――もはや勝手に身体は雷から離れた位置へ避難しようと逃げていた。

が、蓮子は掲げ続け、落雷をあちこちに発生させる。

衣玖には当たらないようにしている点が蓮子の気持ちそのものであった。

衣玖も大事な社員である。行員である。

それを蔑んだ3人を赦せなかったのだ。


「お前らは・・・お前らだけはこの手で処罰する!」

「もう止めようよ蓮子!」


マエリベリーが蓮子の手を止めようと遮ろうとする。

が、彼女の気持ちも硬いものであり、杖の取り合いに発展する。

その所為で雷が落ちる方向はランダムになってしまい、彼女たちは真朋に動けない。


「これがサミニウムの力・・・」

「チッ、困った・・・!」

「悪いけど、今までの恩も含めて目を覚めさせてあげます!」


雷の豪雨の中を突っ切り、セノヴァを構えて疾走するサリエル。

轟雷はそんなサリエルに襲い掛かるが、彼女の靴に当たっても気にしなかった。

マエリベリーと喧嘩している蓮子に向かって彼女は眼を覚まさせるべく飛び上がった。


その時、蓮子は力を振り絞ってマエリベリーから取り上げ、杖を掲げた。


「目を覚ませ!」

「それはお前らだ!」


セノヴァで斬りかかったサリエルに襲い掛かったのは炎。

空中で燃やされた業火はサリエルを燃やさんとする。


「熱い・・・熱いけど!」


服に火がついて燃えるサリエル。

それを生かし、彼女はトリガーを引いた。

空中で剣は分裂し、彼女の炎を浴びる。

燃えた熱さの剣は杖を構えていた蓮子の元へ飛んでいく。


「あ、危ないッ!」


ここでマエリベリーは動いてしまった。

彼女は咄嗟に蓮子を前に押し倒し、代わりにサリエルの攻撃を受けたのだ。


「ま、マエリベリー専務っ!」

「ま、ま、マエリベリーが!」


ぬえと夢美はすぐに彼女の元へ駆け寄った。

サリエルに斬られた彼女は腹部を負傷していた。

蓮子は目を丸くしてマエリベリーを見ていた。


「・・・ど、どうして庇ったんだマエリベリー・・・」


サリエルは燃えた服を脱ぎ、炎を払ってもう1度着る。

マエリベリーの血はスーツの上からも滲み出ていた。


「・・・だって、蓮子は私の友達でしょう?

・・・友達を守れないなんて、そんなの偽りの友人よ」


マエリベリーは必死に―――間違いなく辛いのは明白だが、その中で必死に笑顔を作っていた。

サリエルは犯してしまった重大さにただただ呆然としていた。


「・・・私は・・・なんて事を・・・」

「いいのよ、サリエル。寧ろ貴方に感謝を述べたい位だわ」


フラフラ乍らも立ちあがり、無理に笑顔を作る彼女は何処か悲しかった。


「・・・蓮子も、サリエルも、これで戦いはお終い・・・。

・・・みんな、仲良くした方がいいんだよ・・・。・・・贔屓なんかしちゃ駄目。

・・・衣玖は以前まであった「楽しい職場」を変えた元凶だから、私は許せなかった。

・・・でも、もうこれで懲りたはず。・・・蓮子、まだ戦う?」


マエリベリーの言葉を聞いて戦意喪失した彼女、いや、考えを改めた彼女はサリエルたちに頭を下げた。

頭取らしからぬ行動にサリエルたちは困惑してしまう。


「悪かった・・・私がどうにかしてました・・・」

「いやいや、そんな・・・頭を上げて下さいよ・・・」


蓮子は反省の涙を流しながら、頭を上げた。

サリエルたちは蓮子に何も怒ってはいなかった。

元凶、衣玖を大切に思っていたばかりに裏切られたショックは大きいのだろう。


・・・何処か、彼女は見ていた世界観が変わったような気がした。


                     δ


衣玖は正式的に懲戒免職となり、銀行を去ることとなった。

行内に広まった「月麗カンパニーからの賄賂」が彼女のいた環境を更に悪化させた。

もうこの銀行には戻れないだろう。

天子は未だに働いていたが、衣玖の懲戒免職には腰を抜かした様子であった。


ぬえは協力してくれた小傘の元へ足を運んだ。


「小傘のお陰で衣玖がとうとうここから出て行くことになったよ。

・・・あの録音があったからこそだよ」

「あー、私だって恨みを持ってたもん。お互い様だよ。それよりよくやったね」


小傘は何処か棒読みで彼女を褒めた。


「あ、有難う。これで暫く東方重工は安泰ですね・・・」

「やっと融資が回ってきます・・・これで他の企業と争える地位まで来ました」


融資が無ければ会社の経営など出来ないのは当たり前である中小企業。

如何に融資が彼女たちの運命を司っているか、なのだ。


「まあ私もハッピーエンドが見れて良かったですよ」


小傘は嬉しそうにそう発言した。

衣玖が消えたことがこの銀行に対してどれだけの利益があるのだろうか。

・・・それは誰にも分からないかもしれないが、精神的に安定できる人たちは増えるだろう。

彼女の裏の姿・・・月麗カンパニーの刺客であった彼女の存在が如何に大きいものだったか、消えた後で感じた。


最後に東方重工の社屋へ訪れたい、との事でぬえも同行することになった帰宅道。

セダンに乗り込み、戦いを終えた昼間に車を疾走させる。

車通りが少なくなっていたのは昼間の特権。

この時間帯は大体車の量は朝と比べて半分以下であろう。


「何か・・・もう終わっちゃった、って感じがしますね」

「何が?」

「いや、この冒険が―――って感じです」


ぬえは何処か名残惜しそうであった。


「もしかして、私たちから離れるのが嫌なのか?」

「いや、そういう訳じゃなくて・・・」

「それはそれで悲しい答えだけどね」


するとサリエルはバックミラーを見ては眉間を寄せた。

先程から車両数が少ないこの時間帯に、このセダンの後ろを尾行しているであろう車があるのだ。


「・・・夢美、ぬえ」

「ん?」

「・・・まだ冒険は終わってなさそうだね」

「え?どういうこと?」

「後ろを見てみな」


2人は後ろを覗くと、そこに先程から同じ車が尾行しているのが分かった。


「あの車・・・さっきから私たちをつけてる・・・?」

「そう。・・・そして運転手が銃を構えてた」

「カーチェイスとか!?」

「・・・始まるかもね。何らかの武器を構えてくれれば嬉しいよ」


2人はハイドロガンとショットガンを身構え、向こうの行動を待った。

赤信号に引っかかり、後ろの車が隣の左側の車線に移動して車を停止させた。

これで車は隣同士だ。


「・・・来い」


襲い掛かってきてもいいように彼女たちは運転手に向けて構えていた。

サリエルは止まっている間にセノヴァを盾に置いた。


―――そして青信号に変わった時。

隣の車の運転手が銃を構えてこちらに射撃したのだ。


「反撃します!」

「サリエルは運転に集中してなよ!」

「分かってるって!」


銃声が道路上で飛び交う中、硝子が割れる音が連続して響く。

向こうの運転手は左手で運転し乍ら右手で銃を構えて射撃している。


「悪いね!」


セダンの硝子は大幅に割れたものの、夢美のハイドロガンが向こうの銃に直撃する。

片手で構えていた拳銃はハイドロガンによって落とされ、向こうはスピードを上げて逃げようとした。


「硝子だけ割っといて逃げるなんて・・・させる訳ないじゃないですか!」


ぬえはショットガンを構え、逃げようと猛スピードを上げる車に向かって連射する。

すると運転手の右手に着弾したらしく、そのまま運転をし損なってガードレールへ突っ込み、爆発へと至った。


                       δ


3人も近くに車を止め、運転手を中から引きずり下ろした。

怒り心頭のサリエルは運転手の胸倉を掴む。


「お前は何で私たちに銃撃した!?答えろ!」

「そ、それは・・・」


答え渋っていた運転手に、ぬえは頭にショットガンをつけた。

恐ろしい位の満面の笑みを見せて、口調だけは尖っていた。


「いいから答えてね・・・ここで一生を終えたくなければ」

「ヒィー!分かりました分かりました!」


運転手は観念し、事情を全て話した。


「・・・私は博麗製鋼の財務会計である鈴仙さんに雇われた・・・殺し屋です。

・・・3人を殺すよう頼まれ、あそこで殺そうとしました」


録音機で全て録音したぬえは更なる敵がいることを察した。


「・・・博麗製鋼?何故あの会社が私たちに恨みを?」

「鈴仙さん曰く、『盗まれた書類を取り返す為』だとおっしゃっていました・・・」

「盗まれた?私たちは一度も向こうと接触したことは無いですよ」

「え?話が食い違ってて・・・」


どうやら暗殺者も戸惑って困惑しているようであった。


「・・・でも、新たな闇が増えましたね。・・・敵会社も」

「・・・どうやらセノヴァを振るう日はまだまだ長そうですね」


3人は聞きたいことを聞けた為、暗殺者を赦すことにした。


「・・・まあいいわ、お前は赦す。だがお前を雇った鈴仙を赦したりはしない」

「向こうもこちらに何らかの恨みが・・・?」

「・・・あ!」


ぬえは思いついたかのように理解した。


「ぬえ、何か分かったのか?」

「私たちが衣玖を倒したことにより、月麗カンパニーと博麗製鋼への過大融資は消えました。

・・・つまり、2つの会社の過大融資を実質的に止めた私たちに恨みを・・・!」

「そういうことも考えられるわね。・・・兎に角、今は帰ろう。話は後だ」


すぐに窓ガラスが割れたセダンに乗り込み、東方重工の社屋へ戻った3人。

新たな旅は、まだ始まったばかりだ。


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