後日談
彼女はその日町中にあるカフェで、コーヒーを傍に、とある週刊誌を読んでいた。
見覚えのある人物が初めて中心となって纏めた記事らしく、態々電話で「読んでよ!」と烙印を押されたものであった。
駅の内部に設置されたカフェは多くの客が行き来し、喧噪的な賑わいを見せている。
地味な佇まいの彼女は、その週刊誌の大きな見出しを目に通した。
―――『激録!4000年後の社会経済!』
彼女は溜息を吐くや、その本文を視界に映えさせた。
やはり予測であって、何かに則ったとしても事実かどうかは分からない内容であった。
幾ら本文内で証拠を提示されても、4000年後になってみないと分からない話だ。
「……おーい!淋しそうにしてんなサリエル!」
親友の夢美も、今日はカフェを偶然利用していたのだ。
独り淋しく、こじんまりとしていた社長の姿を見つけてはニヤニヤした笑みを浮かべてやって来た。
ふざけた客のお出ましに、やはり仲間はいた方がいいという感覚に襲われ、疎外感を打ち消す。
「あー、私は暇だったから。其れに、此処のコーヒーは安いしな」
「まあね。朝はロウプライスだし、私も毎日通ってる」
夢美はサリエルの隣に座ると、彼女が読む週刊誌を覗き込んだ。
内容は彼女にとっても覚えやすいような鮮烈なものだったのか、視界に捉えた瞬間にハッと目が覚めたかのように反応したのだ。
「これ、文が確か纏めた記事だったはず。見たぞ」
「……現実家のアイツの事だから、もう少し実用性のある記事だと予測したけどな」
週刊誌を乱雑に閉じるや、コーヒーを一啜りする社長。
何処かそっけないその行動は、まるで身分も関係ない世界に陥って気をさせる。
何処となく無常で、そして味気ない。朝の光はそんな毎日を縁取るかのように明るく照れていた。
「……思えば、あの日からもう1年、か。時を経るのは早いものだ」
サリエルはそう、しみじみと過去を脳裏に思い浮かべていた。
神の降誕は、当時の彼女には永遠に残りそうな思い出を与えてくれたが、段々と忘れつつあった。
言われればふと思い出す程度の、自分からは深く考え込んだり功績を自画自賛なんてことはしなかった。
其れはまた、夢美も同じであった。
「―――時が経つのは早いね。まぁ、そんな事も考えてる暇は無さそうだ」
腕時計を見るや、もうすぐ出勤の時間であった。
社長の彼女自身が遅れる訳にもいかず、さっさと会計を済ませた。
乱雑に置かれた週刊誌を鞄の中に押し込めて。夢美もそんな彼女を追うべく、すぐに立ちあがった。
「お、おい!待ってくれって!」
「―――出勤時刻に待ってくれ、は無いだろ?……ふふっ」
その笑みは―――何時しか男口調になっていた彼女の、柔らかな一面であった。
今日も出勤日、忙しい毎日はまだまだ終わりを告げなそうだ。




