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EPISODE 10

鈴仙の銃撃を受けて倒れた2人は戻ってきたリリーの治療を受け、一命を取り戻した。

リリーと美鈴は暗殺者3人組を拳でやっつけたらしい。

襲い掛かってきた鈴仙は返り討ちにされ、サリエルたちの尋問が始まる。

情報社会のこの世界で、有益な情報ほど美しいものなど無いのかも・・・しれない。


「さて、聞きたいことは山ほどあるんだけどさ・・・」


傷だらけの彼女のネクタイを掴むサリエル。首が締まるギリギリまで掴んでいた。


「まずは私たちの殺害を狙う中心的な存在は誰かしら?」


ネクタイを離し、胸倉を掴んで問うサリエル。

尋問時のサリエル程、恐ろしいものは他に無いのかもしれない。


「そ、それは・・・」

「いいから言えって言ってるんだよ、こっちは」

「・・・霊夢さんに魔理沙さん、そして月麗カンパニーの純狐さんにヘカーティアさんです」


4人の名前を呟いた鈴仙の前にサリエルたちは「やっぱりな」と頷いていた。


「それで、何でここに来た?」

「最初からお前らがここで会談することをリークしてたんだよ・・・。

・・・それで、書類を取り返しに・・・」

「・・・こちらが思った通りの事を呟いたな」


案の定、予想していた事が事実であることを知り、困惑するサリエル。

だが、これで倒すべき敵は分かった。


「これで私たちを狙う敵が把握出来ましたね・・・」


ぬえがそう呟くと、カナはサリエルと鈴仙の元へ向かった。

そしてサリエルに一声かける。


「・・・コイツは私に圧力をかけた張本人ですから、後は私に任せてください」

「わ、分かった」


胸倉を離し、カナに任せたサリエル。

今までの恨みを晴らすべく、彼女の胸倉をサリエルよりも強く掴む。


「ねえ?今どんな気持ち?ねえねえ?今どんな気持ち?ねえ?隠蔽うさぎ?

見捨てた部下に胸倉を掴まれて見下されてる時って一体どんな気持ち?ねえ?どんな気持ち?」


今までの欝憤を晴らすべく散々煽るカナ。

鈴仙はそんなカナを真っ赤な目で睨んでいたが、カナはそんな彼女を嘲笑った。


「自社が経営困難に陥ってるのにも関わらず犯人捜し、だなんて頭がお花畑だよね。

・・・普通なら経営を立ち直らせる為に色々画策したり新事業に手を出す計画を立てるけどさ。

・・・お前らは陥れた犯人を暢気に探してるんだよね。

・・・ねえ?捜して殺して、一体何になるの?」

「・・・貴様・・・!」


鈴仙は煽ったカナに向かって思いっきり―――殴った。

カナは勢いに任せて畳の上で音を立てて倒れる。

そこには戦いの後に残った力を精一杯振り絞って殴り、力果てた鈴仙の姿があった。


「何をするんだ鈴仙!カナに手を出すな!」


すぐに美鈴と夢美が鈴仙を押さえる。

鈴仙は悔しそうな顔をしていたが、殴られたカナは倒れながらも笑っていた。


「無様だね!隠蔽を隠した財務会計にぴったりの展開だよ!」

「カナ・・・そろそろ言うのをやめろ」


煽るカナを制したのはサリエルだった。


「鈴仙にも心はある。プライドはある。確かに憎悪の対象かもしれない。

だが同じ人なんだ、やってはいけないこともある」

「・・・」


サリエルの正論に黙りこくったカナ。

カナは騒霊であるが、仲間に入れてくれたサリエルの恩に敵うものは無かった。


「・・・だが鈴仙、お前がやったことも理に適っていない。

・・・カナの言う事も事実なんだよ。『頭がお花畑』って表現も正論だ」

「・・・」


鈴仙は下を俯いた。

その時に彼女は何を思ったのだろうか。


「まあいい。これ以上痛ぶりつけるのはこっちも疲れる。

・・・だが、お前の発言は録音させてもらった」


そこでぬえが録音機を取り出し、鈴仙の発言を再生した。

鈴仙は逃げ場を無くしたこと、そして何よりも計画を失敗したことが身に染みて感じた。


「何です?この騒ぎは?」


サリエルたちの元に新しくやってきたのは記者であった。

首からカメラをぶら下げ、記入するためのメモ帳とボールペンを構えてやってきた。


「あ!『週刊新世情』担当の文さん!お久しぶりです!」


リリーはすぐに気づいて挨拶を交わす。


「週刊新世情担当!?・・・あの有名な週刊誌、文さんが担当なんですか!?」


購読者の夢美も担当者が知りあいであることに驚きであった。


「ええ、私は新世情を担当してるけど・・・待ってください、その話はあとで。

今は・・・この状況を説明してくれませんか?」


戦いによって荒らされた部屋。

畳にはぬえと夢美が撃たれた時に出血した血が染み、襖は鈴仙が飛ばされた際に崩れた。

机は滅茶苦茶な場所に移動していた。

従業員は悲嘆したような眼をしている。


「・・・鈴仙と戦ったんだよ。こいつが急襲してきた」

「・・・」


鈴仙は何も喋らなかった。

そこにあったのは自分の愚かな失敗の葛藤だろう。


「で、文さんに見てもらいたいものがあるんですよ」

「これは・・・?」


美鈴から差し出された、2枚の書類。

ペラペラながらも、内容は恐ろしく充実していて濃い。


「・・・え?決算額が・・・書き換えられてる!?」


                  δ


週刊新世情は鈴仙に情けもかけずにその書類を独占し、記事に表して吹聽した。


「決算報告の真実!内部告発者が語る『博麗製鋼の裏』とは!?」


そんな見出しが書かれた新世情の広告が電車の中吊りや漫画本の裏など、色んな場所に掲載された。

定期的な購読者も見計らえる新世情に掲載された2枚の書類は大変な騒ぎを起こした。

第一、その証拠が既に掲載されているが為に、購読者はその情報が紛れも無い真実だと悟った。

何の疑いもかけずに、博麗製鋼の隠蔽疑惑は世間に広まっていったのである。


東方重工社屋にて、パソコンと睨めっこを行っていたサリエルは検索サイトのトップニュースを見て頷いた。

他の3人もそのニュース題名を見て納得した。

一番上に書かれるニュース。

最もホットな話題が「大企業『博麗製鋼』、大幅な隠蔽疑惑」。

題名をクリックすると、新世情に掲載された美鈴の資料と共に考察が載せてあった。


「これが紛れも無い証拠・・・何処も隠せやしない」

「でも博麗製鋼のトップ陣は必死に火消しを行ってるみたいだね」


カナはそう言うと、テレビをリモコンで点けた。

点いた瞬間に映し出されたのは報道番組で、博麗製鋼の緊急記者会見の姿であった。

必死に頭を下げる霊夢と魔理沙と鈴仙。

一気にカメラのフラッシュが飛び交う。


「あーあ、これで信用ガタ落ちだね」

「サリエル、博麗製鋼の株価の推移は?」

「見てみるよ、ちょっと待って」


サリエルはすぐに「博麗製鋼 株価」で検索すると、昨日の日付を持って勢いよく落ちた棒線グラフが載っていた。


「これは酷い、今日で株主が何人自殺するのか」

「そんな不幸な事言うなよ。・・・でも、大概の博麗製鋼の株主は怒号を放っただろうな」

「仕方ないよ。あんな会社を信じ続けた奴らがいけない」


カナははっきりと言い捨てた。

相当な禍根が、その発言には残されていた。


「まあカナの復讐は果たせたよね。・・・問題は『私たち』だ」


                δ


小傘は1人、親しき仲である月麗カンパニーの社員、早苗の元へ赴いた。

早苗はサミニウムからエネルギーを取り出す担当係長を務めていた。

今までは饒衍する程の融資のお陰で難なく取り出せていたが、融資が減った所為で少し暗雲が立ち込めてきた。

そして今日のニュース―――博麗製鋼の隠蔽疑惑に巻き添えとなった月麗カンパニー。

提携していた月麗カンパニーは博麗製鋼の隠蔽を見抜けなかったことに責任を追われ、追い詰められていた。

事実、早苗自身も上層部の暴挙に嫌気をさしており、いつか退職しようと思っていた。


今まで月麗カンパニーは経営優良な企業だったのに対し、急に経営不良になったのか。

経営者が変わった訳でもない。かと言って経営者の側近が変わった訳でもない。

新事業が失敗したわけでもない。

サミニウムの王、とまで持て囃された月麗カンパニーが一夜にして落魄れた理由が分からないのだ。


「・・・で、今日は何の為にここへ?」

「私ね、サリエルたちに頼まれて今、博麗製鋼と月麗カンパニーの監視をしてるの」

「随分凄い仕事を頼まれてるね・・・」


早苗は小傘の行動に感心と同時に呆れていた。


「・・・で、話を戻すよ。・・・月麗カンパニーにいる早苗にヘカーティアの監視をして欲しいの」

「・・・何故に?」

「私は2つの会社を監視してるんだけど、流石に2つは辛いから早苗さんに任せたいんです」


すると小傘は録音機を早苗に渡した。


「これでヘカーティアの決定的な発言を録音して下さい!」

「まあどんな事を録音すればいいのかは大体察しましたよ」


早苗は小傘から録音気を受け取ると、腕時計の針が示す時間を見た。


「もう時間が来たみたい。・・・私はそろそろなので、これで」

「協力ありがとう」


早苗は時間が来たために持ち場へ戻っていった。

当の小傘は気持ちが楽になっていた。


「・・・盛り上がってまいりました」


                δ


小傘はすぐに博麗製鋼へと赴き、宇佐見銀行の行員を演じ乍ら奥へ進んでいった。

非日常的な行動が彼女を楽しませていた。

社内は週刊新世情に掲載された隠蔽疑惑によって信用が落ち、株主や取引相手からの電話が殺到していた。

コールセンターでは引っ切り無しに電話が鳴っていた。

そんな光景を横目に彼女は奥へ進んでいった。


そして静かなフロアへ来た小傘の目に映ったもの―――。

―――「会議室A」。

この会議室はとても親密な関係を持った取引相手と会議を行う場合にしか用いない、特別な部屋だ。

そこの中から会話が飛んでくる。


「このままでは・・・衣玖、過大融資は・・・」

「もうリストラされた身ですよ、こちらは。・・・何も出来ないです」

「いや、『宇佐見銀行の元行員』という肩書があればいい、・・・『あの方法』しかない」

「『あの方法』?」

「・・・横領するしかない。衣玖も宇佐見銀行に恨みがあるだろう」

「・・・銀行の金の着服、ですか・・・。・・・まあ私もあそこには未練はありませんので」

「よしきた。・・・衣玖、天子に要請して着服を頼むぜ」

「・・・ああ、任せてください。成功した暁には・・・ここにいさせて貰うとしますかね」

「あはは、まあその時はその時だぜ」


「・・・録音完了」


小傘の冷酷な一言が、彼女たちの運命を変えることになるとは思いもよらないだろう。


                 δ


東方重工の社内においてインターネットを観たりしていたぬえの携帯に着信が入る。

相手は小傘であった。


「はい、もしもし。小傘、どうしたの?」

「今から添付する録音をよ――く聞くんだよ、じゃあね」


ツーツーツー・・・と耳の中で響き渡る。

サリエルはそんな電話内容に興味を持っていた。


「小傘がまた何か入手したの?」

「分からないです。でも録音が送られて来てます。今日の日付ですね」


ぬえは小傘から送られた録音内容を再生した。

そこから聞こえた会話―――それはぬえにとっては恐ろしい会話内容であった。


「すぐにリリーさんに知らせます!」


ぬえは内容を受けてリリーにメールで内容を送信した。


「衣玖と副社長の魔理沙、ですね・・・。・・・諦めが悪い模様です」

「でも録音では世間に広めても信用が薄いです。・・・このままでは無縁の宇佐見銀行も破綻・・・」

「え!?」


そんな会話を聞きつけてやってきたのはカナであった。

元々博麗製鋼で働いていた身として、衣玖と魔理沙の会話は憤怒ものであった。


「まだ足掻き続けるのですね・・・。・・・今度は横領、ですか」

「・・・でも放っておけば暴れ回るだけです。・・・どうすれば・・・」


「介入するしかないよね」


結論付けたのは夢美であった。


「私たちがそれを止めないと、博麗製鋼の隠蔽疑惑事件から沢山の会社が消える羽目になる。

・・・2つはいいが、1つは私たちを支えてくれている大事な会社だ。

・・・それにぬえもこれを止めないとフリーターになるだろうし、私たちも融資が受けられなくなって潰れるだろう。

・・・勿論、他にも宇佐見銀行の融資を受けて経営してる中小企業など数えなくても分かる程沢山ある。

・・・それらの人たちを助け出さなくていいのか?」

「・・・此の事を知ってるのは私たちだけ・・・。・・・なら、やるしかない」


サリエルはセノヴァを背中の鞘に差し入れ、玄関に向かう。


「・・・何かしようと思ったら行動に移す。相手も待ってはくれないんだから」


そのままサリエルは玄関の扉を開け、外に止めてあるセダンに乗り込んだ。


「時間は大事にしなきゃ、ですね」

「博麗製鋼の掃討戦、だな。・・・大帝国を築き上げた霊夢も、これで終焉だな」

「・・・私たちが止めましょう。・・・あんな会社!」


               δ


宇佐見銀行とでも大きさでは優劣が付け難い大企業、博麗製鋼。

聳え立つ大企業の前にセダンを止め、4人は降り立った。

事前にぬえが博麗製鋼の情報を調べ上げていた。


「ここに入るためには専用の服を着ないと入れないみたいです。

・・・後、ここには裏口が存在するらしく、従業員も滅多に使わないらしいです」

「そこから内部へ侵入するのね」

「そうなりますが・・・問題は「服」です」


夢美とカナは出入りする従業員を見つめていた。

同じ服を来た作業員たちが沢山出入りする。


その中の男4人組が裏路地へ入っていくのを2人は確認した。


「4人組が裏路地へ入った!あそこなら人目につかないはずだ!」

「なら行こう!」


そんな4人を追いかけに、彼女たちは走った。

裏路地に入って、そこにあった椅子に座って煙草を吸っていた4人。

何の罪もない人々も、成し遂げなくてはならない目的のためには犠牲になりゆるのだ。


「悪いけど服は貰うわね!」


4人に向かってサリエルはセノヴァで思いっきり斬りつけた。

無抵抗な4人は壁に吹き飛ばされ、意識を失っていた。


「成し遂げなくてはならない正義の為に、生贄となってくれ・・・」


サリエルたちは気絶した4人から作業服を奪い、着替えた。

汗臭さが少し鼻に障るが、そんなことを気にしている暇はない。


「このまま裏口へ侵入しよう!裏口の場所は?」

「あ、案内します!」


ぬえを先頭に、彼女たちはそれぞれ武器を構えて裏口へ向かった。

煤だらけの道を進み、煙くなってきた場所に裏口は存在した。

誰も使わないような場所に存在した裏口の扉の取手は淋しく錆びていた。

このことから利用者が全くいないことが悟れる。


「・・・こんな裏口が存在したとはね」


作業員に扮したサリエルは扉を開けた。

鈍い音が響き、無機質な通路が目の前に姿を晒す。


「行こう・・・」


4人はサリエルを先頭に通路へ入っていった。

誰もいない、静かな中を靴の音が貫くように聞こえる。

大企業と謳われる博麗製鋼にもこんな場所は存在したのだ。


冷たい横風が全員の頬を切る。


「ホントに誰もいないんですね・・・」


ぬえがそう呟いた時、サリエルに冷たい感覚が襲い掛かった。

薄暗い電灯の下、サリエルは前を見据えると・・・そこにはサミニウム源の警備用ロボットがいたのだ。

しかも今までのような龍の形はしておらず、サリエルたち同様二足歩行の剣士であった。

彼女と同身長の剣士は冷酷な眼差しを向けて、そこに存在したのだ。


「コード、『ガウェイン』。邪魔者検知における排除を行います」


「博麗製鋼」と文字が刻まれたガウェインの身体。

誰も通らなそうな通路に配備されているのも、空しい警備用ロボットである。


「こんな場所に警備用ロボットが!?」

「まあいい、戦うしかありませんよ!」


4人は武器を構えた。

目の前に存在する敵に立ち向かう為、そして横領を早く止める為に。


「・・・確かに私たちは色々なロボットを作ってましたが・・・こういう場で戦う時が来るとは・・・」


以前ここで働いていたカナは作っていたロボットと敵対することに違和感を感じていた。

だがここには未練はない。もう何も後悔していないのだ。


「まあ博麗製鋼に歯向かうとはこういう事だからね。・・・しょうがないよ」

「別にここに戻りたくても戻れませんしね!」


道路標識を肩に担ぎ、ガウェインは剣を構えた。

閑静なこの場所に於いて今、4人の戦いが始まった。


                 δ


ガウェインは対峙する4人に向かっていきなり連続斬撃を仕掛けてきたのだ。

4人に向かって走る際に剣を構えては踏み込んだのだ。


「止まれ!」


カナは標識に示された意味通りにガウェインの剣攻撃を柄で防いだ。

重たい一撃がカナに圧し掛かる。


「こいつも装甲が硬い奴ですね・・・サリエルさん!」

「行くよ!」


カナが攻撃を防いで気を引いている間に後ろへ回り、セノヴァを構えた。

ガウェインの近くで飛び、その際にセノヴァのトリガーを引いた。

その瞬間、7本の剣に分裂し、一気に襲い掛かったのだ。


「装甲を貫け!博麗製鋼の刺客の愚かな身体をぶち壊せ!」


夢美の応援と共にサリエルの分裂剣がガウェインの装甲に突き刺さった。

沢山の罅が一気に出来上がり、そして中のオレンジ色が露見した。

すぐさま反応したガウェインはカナを振り切り、後ろにいたサリエルに思いっきり斬りかかった。

不意の一撃を受け、彼女は腹部に傷を負って壁に衝突する。


「さ、サリエルさんッ!」

「こ、こっちにも来る!」


ガウェインは近くにいた夢美とぬえをすれ違い様に斬りつけようとしたのだ。

ぬえは咄嗟にショットガンを構え、ガウェインの冷酷な右目を撃ち抜いた。

するとガウェインは斬りつけるのを止め、狼狽えたのだ。


「今だ!」


体制を立て直す為、彼女たちは一か所から離れ、分裂した。

ガウェインは3人の織りなす三角形の中心にいる。


「さあ、お前は誰から狙う?」


夢美はガウェインにそう問いかけた―――。

―――が、ガウェインには既に答えは出ていたのだ。


「起動、『断罪』」


自分を囲む3人に対し、彼は上に飛んだのだ。

そして飛んだ際に剣で衝撃波の雨を降らせ、一気に襲い掛からせたのだ。


「何!?」

「兎に角離れましょう!」


3人は降り注ぐ雨から逃れるため、通路の端の方に避難する。

美しく降り注ぐ衝撃波の流星群は降り終えることを知らず、3人に方をゆっくり追いかけながら降り続ける。


「このままでは・・・」

「やってみるしかありません!」


ぬえはショットガンを構え、雨の中心にいるガウェインに向かって射撃したが雨によって消されてしまう。

夢美も負けじとハイドロガンを撃つが、気圧弾はガウェインに届く前に大量の衝撃波が消してしまう。

どちらにしろ衝撃波の雨という「大きな装甲」が彼女たちを寄せ付けずにいたのだ。


「どうやって・・・!」


すると衝撃波を作りだしていたガウェインに真後ろに誰かが飛びかかっていた。

腹部に赤色を滲ませながらも巨大な大剣を構えて振り下ろさんとする。


「3人に手を出すなァ―――ッ!」


トリガーを既に引き直して大剣となっていたセノヴァのトリガーをもう1度引く。

ぬえ達は分裂した7本の剣が北斗七星のように輝いて見えた。

―――そして、分裂した剣は衝撃波を作りだすガウェインを―――一閃した。


空中で大爆発が起こると同時に彼女は地面に降り立ち、その後に6本の分裂した剣が地面に刺さる。

斬り刻まれたガウェインの部品やパーツは砕け、地面に落ちていく。


「・・・うう・・・」


ガウェインに腹部を斬られた影響により狼狽えるサリエル。


「だ、大丈夫ですか!?すぐに怪我の処置をしますから!」


カナは事前から持っていた簡易救急箱を取り出し、サリエルの怪我の処置を行った。

消毒は少し染みたが、彼女は処置による安心感の方が大きかった。

それは絆創膏にも言える原理で、絆創膏は傷を抑える為のものなのに貼ると治った感覚がする。

人の気持ち次第によって体調も変わってくるものだ。


「ああ、ありがとう。もう大丈夫」


軽い処置を受け、すぐにセノヴァのトリガーを引いて大剣に戻したサリエル。

彼女のスーツには血が滲んでいたが、そんな事はどうでもよさそうであった。


「もう行くんですね、ここで休憩してもいいと思いますが・・・」


ぬえは提案したが、傷を負った本人はそんな気持ちは無かった。


「時間は待ってくれない。私の傷も、ね」


サリエルは誰もいない通路の奥へと足を進めた。

3人も、そんなサリエルの背中を追いかけに奥へと足を運んだ。


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