第三話 母、来訪。その1
未来のこぼした一言によって、彼女はやってきた。
「これくらい…いいよね…お母さん…」
カランカラン…
「…お!いらっしゃ…い」
食器の片付けをしていた恒輝が手を止め、彼女を見つめたまま固まってしまった。
「ちぃーっす。どうだ、元気か?恒輝」
軽い感じの挨拶をしたのは…、
「み、み、み、美咲さん!?どこ行ってたんですか!!」
そう…彼女は、
「あ、お母さん。おかえり~」
未来の母である。
「お…元気してたか?未来」
「うん!見てのとおり元気だよっ!!」
未来は美咲に抱きついて、美咲は未来の頭を撫でてあげる。感動の親子の再会…の後ろに、空気と化してしまった人が居る。
「…………なんすか?」
口を開いたのは、美咲の後ろに居た空気…じゃなくて中性的な人だった。男なら美少年、女なら美少女、って感じの…それも、未来と同じ年くらいに見える。
「あの…美咲さん。誰?その子」
「ん?こいつかい?こいつはね…」
美咲は、次の言葉を口に出さない…いや、出すべきかどうか悩んでいる。
「………はぁ。監視員、もう行っていい?」
「…そうも、せっかちだといつまで経っても終わんないよ」
美咲を監視員と呼んだ彼?(彼女?)に答えたのは、未来であった。
「あちゃ~、もう見ちゃったかぁ~…」
「…へ?全然ついて行けないんですけど…」
思わずそう恒輝がこぼす程度には、話がサクサク進んでいた。
「お?恒輝、分かってないって顔してるね」
「当たり前ですよ…ワケわかんないです」
「まず、自己紹介からだな。コイツは、クリミネル。罪人だ」
美咲は連れてきた子どもに対し、罪人と呼んだ。
「…うす、あたしは、クリミネル、っす。クリちゃん、って呼んで…だぁ!恥ずい!!何言わせんだ!?」
顔を真っ赤にして叫んだ。
「…ぷっ、……くくっ…」
肩を震わせ、必死に笑いをこらえているが…全然隠せてない。涙目になりながらも必死に訴えているクリミネルを見ると、親子っぽく…いや、同級生どうしでからかっているような、そんな微笑ましさも見られる。
恒輝はふと、実の娘である未来が気になってそっちを見ると、座敷にあがって寝ていた…。
「……本当に、寝るのが好きだよな…」
興味のないものには、関わろうとしたがらない…珍しい。大半の事には興味を示す未来が、避けるなんて……。
お久しぶりです。
いや~…受験終わって、嬉しいんですけど…遊ぶ相手がいないという悲劇。そんな今日この頃です。
次回予告(あくまで予定)
未来の母、美咲が連れてきたクリミネルという罪人。なぜ美咲はクリちゃんを連れてきたのか…美咲が『後刻屋』を訪れた理由とは?
クリちゃんの背負っているものとは…
みたいな感じになる予定です。
ではでは、ばいにゃら~