久しぶりの依頼『家族に確かな幸福を』その2
数日後…正確には、あの依頼から2週間後。お礼の手紙が届いた。
後刻屋さん、ありがとうございます。残ったわずかな余命を楽しく過ごす事ができました。私の家族に確かな幸福をよろしくお願いします。
佐津川秋作
と、書いてあった。これは、指定日に配達してあるので、おそらく、生前に予約しておいたのだろう。
この手紙を読んで、感慨に浸っている恒輝をよそに、未来は
「…っぷ、あっはははは!!おかしすぎ、おかしすぎだって、ふっ、くくっ、くっ、あっはははは!!」
「なんで笑ってんだよバカ!!」
「おかしいんだもん、これ」
「へ?なんで?」
「まぁ、じきにわかるって」
恒輝がまた、質問をする前に
カランカラン…
お客がやってきたようだ。
「いらっしゃ…い、ませ?」
「どうも…」
「すみません」
「いやいや、お礼を言われるような事はしてませんし、頭をあげてください」
喫茶店に来た?のは客ではなく…後刻屋の客だ。例の依頼者、佐津川秋作とその奥さんに挨拶をしている。
「どうぞ、どうぞ、あがってください」
座敷へと案内する。
「あれ?なんで生きてるの…っと、不謹慎だったな」
聞こえないように、恒輝はつぶやいた。そのまま、座敷の近くの柱にもたれかかり、聞き耳をたてる。
「あの…本当にありがとうございました」
「私からも…主人を助けていただいてありがとうございました」
「いえいえ、仕事ですから…頼まれたらその依頼の通りにするだけの事です」
「それで、お礼してもしたりないのですが、受け取ってもらえませんか?」
佐津川さん(奥さん)が、封筒を差し出す。
「う、受け取れませんよ!すでに、依頼費は貰いましたから…」
「じゃ、じゃあ…私からの依頼費、ということで。どうでしょう?」
「…わかりました。では、ありがたく頂戴いたします」
「あ、子供を家に置いてきたので…それでは」
そう言って、佐津川夫婦は帰っていった。
「…ありがとうございました!!」
ドアまで、見送ってきた未来に問う。
「どういうことだ?」
「だから言ったでしょ?運命をねじ曲げたって」
「ふむ、もっと詳しく」
「えーっとね、最初から説明しなきゃだね…」
未来は未来が見えるらしい…うん、ややこしい。
未来(人名)は未来、つまりこの先が見えるらしい。
しかも、すべての可能性の先を見ることもできるらしい。
だから、未来(人名)には運命をねじ曲げることができる。
と、それは末恐ろしい異能だなぁ…。
「それ、いろいろとだいじょうぶなのか?」
「うん、だいじょうぶ!ちゃんと扱えるように訓練受けたからね」
「…誰からだよ」
「お母さん」
「へぇ~…そう、なんだ」
言葉がつまりぎみになってしまった。未来の母についてはいろいろと思うところがある。これも未来から教えてもらったのだが、今から30年くらい前まで、争いがあったらしいんだけど、史実にはもちろんない。そこらへんがよくわからん。…だけど、現に異能とやらは存在しているっぽいし。それは、また別のお話。
「それよりさ、秋作さん…なんで生きてんの?」
「それはね~、前の定休日に女性きたじゃん」
「ああ…来たな」
「その人が奥さんだったの」
「へぇ~…で?」
「話を聞いたらね…」
奥さんは、秋作が後刻屋に頼んでいたことを知ってたらしく、依頼の内容も知ってたらしい。それで、奥さんも依頼しに来たんだって…。
「で、その依頼がさ、秋作さんのいない幸せなんてない。彼とずっと一緒にいることが、家族の幸せだ。って言ってきたから、運命をねじ曲げてやったワケなのさ…ふふん、褒めてくれて結構よ」
「ほぉ~、そうだったのかぁ」
恒輝は今になって気づいた。未来に対して、家族の話はNGだったはず…。後悔まで、3秒もかかった。
「ほ~め~て~よ~!!ほら、褒めて」
「すごいすごーいいいことしたねぇー(棒)」
恒輝はふざけてみる。
「さ~て、お客さんこ~ないっかなぁ~」
などと、未来は明るく振る舞う。恒輝は、それを見て、心苦しく思う。…スルーされたことに。
「今日も、客はゼロかなぁ…」
カランカラン…
今日も客はやってくる。
「いらっしゃ…い」
「やっほ~、こうちゃん」
「あぁ!?なんで、来たんだよ!!」
ほぇ?と、首を傾げて未来が言う。
「だれ?」
「どうも、こうちゃんの彼女で~す」
もう、気配で分かる。警戒レベルマックスだ。
「違うだろぅがぁあ!?この、くされストーカーがぁ!!」
はい、これで一話ぶん終了です。あ、自己紹介遅れました。鵺織深尋というものです。いや~ほのぼのしてますねぇ…あと、次話の更新かなり遅れます。理由はですね…くされストーカーの名前が決まっていないからです。なので、こんな名前どう?っていうのがありましたら、コメント、もしくはメッセージにて、送ってください。
ではでは、ばいにゃら~